安倍晋三首相は5日、東京都内で開催された内外情勢調査会で講演し、政府の成長戦略第3弾を発表した。

第3弾では「民間活力の爆発」をキーワードとし、「国家戦略特区」の創設や一般用医薬品のインターネット販売解禁などの政策を通じて、1人当たりの国民総所得(GNI)を「10年後には現在の水準から150万円以上増やすことができる」との目標を表明した。ただし、法人減税や雇用流動化策など主軸となる政策は盛り込まれなかった。

講演する安倍首相((C)内閣広報室)

首相は、4月に成長戦略第1弾を、5月に第2弾を発表。政府は、これらを合わせた全体の成長戦略像を14日に閣議決定する予定だ。

「国家戦略特区」では、国が主体的に国際的なビジネス環境を整備し、世界中から技術、人材、資金を集めていく方針。具体的な案として、外国人医師が日本で医療行為を行える制度の創設や、外国の子どもが通えるインターナショナルスクールの充実などを挙げたほか、通勤環境の向上を図るため、建物の容積率緩和を促進するとした。

一般用医薬品のインターネット販売については、「消費者の安全性を確保しつつ、しっかりしたルールのもとで、全ての一般用医薬品の販売を解禁する」と表明。併せて、健康食品の機能性表示の解禁も発表した。また、最先端の医療技術が生まれた際は速やかに「先進医療」と認定し、保険外併用の範囲を拡大すると述べた。

インフラ整備に関しては、コストを抑え、安全性の向上を図る「インフラ長寿命化計画」を今年秋に取りまとめると発表。民間資金を活用した官民パートナーシップ(PPP)や社会資本整備(PFI)を積極的に導入し、今後10年間で過去10年の実績の3倍に当たる12兆円規模のPPP/PFI事業を推進していく。

これらの政策を確実に実現するため、達成すべき指標を明確化。「3年間で民間投資を70兆円に回復」「2020年にインフラ輸出を30兆円に拡大」「2020年に外国企業の対日直接投資残高を2倍の35兆円に拡大」「2020年に農林水産物・食品輸出額を1兆円に拡大」「10年間で世界大学ランキングトップ100に10校ランクインさせる」と宣言した。

首相は成長戦略により、この数年で失われた50兆円におよぶ国民総所得を当面3年間で取り戻せるはずだと主張。成長シナリオが実現できれば、「1人あたりの国民総所得は最終的に年3%を上回る伸びとなり、10年後には現在の水準から150万円増やすことができる」との考えを示した。