お客さまからクレームを言われてしまったら、きちんと納得していただけるまで話し、クレームを今後の経営に生かせるように努力するのが、企業や店舗の正しい姿勢だと言えるでしょう。しかし、残念なことに、中には理不尽で、筋の通らない言い分を押しつけようとするものもあります。
そんな悪質クレーマーに対じしたとき、一体どのように対応すれば良いのでしょうか? そこで今回は、クレーム対応のアドバイスを行っている、中央話し方教室の代表講師・栗原君枝先生にお話をうかがいました。
CASE1:相手が怒っていて、話の内容がつかめない
「電話でクレーム対応をする場合、相手の表情が見えないので、慌ててしまう人も多いようです。特に、相手が怒っているという場合、『とにかく何を怒っているのか、聞き出さなくては』と焦る人もいるでしょう。
しかし、まずは落ち着いて、ひたすら相手の言っていることを聞きましょう。無理に話の内容を把握しなくても大丈夫。人間というのは、怒りを長時間持続できるものではありません。
こちらが、『はい』『申し訳ございません』を繰り返して話を聞き続けていると、相手も疲れてきます。相手がトーンダウンするのを待って、話を聞けば良いのです」
CASE2:クレーム電話に対応中、謝罪をすると非を認めたことになる?
「クレーム対応の基本は、きちんと謝罪の言葉を述べること。『申し訳ございません』という言葉は、どんなクレームであっても、必ず口にするべきです。
中には、『そっちが悪いことを認めるんだな!』と返す人もいるでしょう。しかし、これはあくまでもお客さまを不快にさせてしまったことに対する謝罪です。
『謝罪いたしましたのは、お客さまに不快な思いをさせてしまったことについて、申し訳なく思っているからです』といったように、責任の有無とは別の話であることを明確に伝えると良いでしょう」
CASE3:「辛すぎて食べられない」と料金の支払いを拒否
「お客さまの注文通りに料理を提供したなら、店の落ち度はありません。『辛すぎて』ということは、お客さまは料理に口をつけているわけですし、料金を支払っていただくのが当然です。
しかし、それでも第一声は『申し訳ございません』が正解。メニューがお客さまの口に合わなかったことを、まずは謝罪します。そして、料金の支払いに関しては、店舗の方針に従います。
料金の支払いを拒否するというタイプのクレームは多いようです。店舗に落ち度があれば別ですが、落ち度がなければ、お客さまの無銭飲食ということになってしまいます。ときには、き然とした態度で、支払いを求めることも必要でしょう。
ただ、こういったやり取りをほかのお客さまに見られるのは避けなくてはなりません。そこで、『辛すぎる』というクレームが、『料金は支払わない!』という流れになりそうなら別室に移動するべきです」
CASE4:どうしても料金は支払えないと言い張る
「店舗には何の落ち度もないのに、お客さまに料金を支払ってもらえない場合、最終的には警察を呼ぶことも視野に入れなくてはなりません。しかし、ただ『警察を呼びますよ』と言うと、かえって相手を逆上させてしまう可能性も。
そこで、『当社の決まり』を持ち出すようにしましょう。例えば、『当社では、お客さまが料金支払いを拒否された場合、速やかに警察へ通報する決まりになっております』といった感じです。
お客さまを悪質クレーマー扱いするのではなく、『こういった場面では、通報するのが決まりだから』と伝えることで、相手の怒るポイントをなくしてしまうわけです」
「むやみに謝罪してはクレーマーの思うツボ」「とにかく、相手の怒っている理由を聞き出そう」と焦って、間違ったクレーム対応をしてしまう人は多いようです。
一番大切なポイントは、まずお客さまにきちんと謝罪すること。そして、冷静に対応することです。もし仕事中に悪質なクレーマーと対じしてしまったら、栗原先生のアドバイスを思い出して、落ち着いて実践してみてください。
(OFFICE-SANGA 森川ほしの)