訃報はあるとき突然やってきます。プライベートだけではなく、仕事の関係で葬儀に出席することになるかもしれません。でも、同じ仏教でも宗派によってお焼香の回数が違ったりします。葬儀のマナーに自信がある人は少ないのでは?

結婚式なら多少のミスは笑ってすむこともあるけれど、お葬式での失敗は避けたいですよね。そこで、冠婚葬祭をプロデュースする小山セレモニーの相談役、小山高夫さんに、絶対にはずしてはならないポイントをうかがいました。

故人の特別な日にふさわしい格好をする

――お通夜や葬儀に参列するとき、いつもアタフタしてしまいます。洋服はやはり喪服がよいのでしょうか?

「葬儀・告別式当日は、男性は黒いスーツに黒いネクタイ、女性はそれに準じた格好が一般的だと思います。前日のお通夜は、ダークスーツでOK。大切なのは、相手への弔意の気持ちを衣装でも表現することです。

冠婚『葬』祭という言葉があるように、お葬式は日常ではなく特別な日。ご遺族・お身内が悲しまれている場に参列するのにふさわしい格好をするのが礼儀なのです」

――香典の金額はどのくらいがよいですか?

「地域差があるのでなんとも言えませんが、仕事のつきあいや友人であれば5千円が多いようです。故人との血縁の近さ、お付き合いの密度によって、1万円から上になりますが、できれば奇数がよいと思います。金額だけではなく、お札の枚数も奇数になるように配慮するとなおよいでしょう。

また、香典には新札ではなく、折り目をつけたお札を使うようにしてください。新札ですと、『弔事を待っていた』という意味になってしまうのです。

そして、お札は白い半紙で包むか、多目的封筒に入れた上で、不祝儀袋に入れるとよいでしょう。自分の名前は筆ペンか毛筆で記入してください。間違ってもボールペンや万年筆で記入しないでください。それは『失礼』『無礼』を通り越して『非礼』になります。関西では筆の薄墨で書くのが主流です」

わからなければ、率直に聞くのが一番

――お焼香の回数は、何回が本当なのですか?

「宗派によって異なります。浄土真宗(本願寺派)と臨済宗は1回、曹洞宗と浄土真宗(大谷派)は2回、天台宗と日蓮宗は1回か3回、浄土宗は回数にこだわりません。何回であれ、心を込めて行うことが一番大切だと思います。ちなみに浄土真宗のみ、指でつまんだお香を上に揚げず、そのまま横の火にくべます」

――お葬式で失礼にならないように意識した方がいいことはありますか?

「その土地のルールがあることを意識することです。みなさん、あまり葬儀の話題をすることがないので気づいていませんが、実は、弔い方にはかなり地域差があります。

例えば、お通夜の前に遺体を荼毘(だび)にふしてしまう地域、お通夜の前におなかをいっぱいにする地域などもあります。

勝手な判断をせずに、『ここではどのように弔意をあらわせばいいのですか? わからないので教えてください』と素直に葬儀者の方に聞くのが一番だと思います」

――ここだけは、絶対に失敗しない方がいいポイントはありますか?

「『失敗』という言葉を使うとき、皆さんが気になるのは、故人ではなく周りじゃないでしょうか。けれども、よく考えてみてください。大切なのは、亡くなった本人であって、周りではありません。

もちろん、遺族を傷つけるような行動は控えるべきですが、まずは、相手と自分の関係性を意識して、相手に心を尽くすことが一番大切だということを忘れないでほしいです」

小山さんのおっしゃるとおりですよね。当たり前なのに、いざ「葬儀」という言葉を聞くと、形式ばかりが気になってしまうので、注意したいと思います。

取材協力:小山セレモニー相談役・小山高夫さん
近著に『今さら訊けない、大人のマナーとエチケット』(ワニブックス【PLUS】新書、2013年)がある。

(OFFICE-SANGA 臼村さおり)