人口が100万人ほどで、全国で最も面積が小さい香川県。だが、映画やTV番組の制作会社が多い東京や大阪に負けないほど、映像作品の舞台になっていることをご存じだろうか。TV・CMなども含めると、記録に残すようになってからだけでも、その数は460タイトルにもなる。
地理や環境が撮影進行のポイントに
香川県公式観光サイト「うどん県旅ネット」直下に設置されている「香川フィルムコミッション」のホームページを見ると、1956年以降に香川県でロケが行われた映像作品に関する実績が掲載されている。ちなみに、最古のものは若尾あや子主演の「あさ潮ゆう潮」で、丸亀市でロケが行われた。
香川フィルムコミッションは、平成13年(2001)4月に事業化を開始。香川県の知名度向上を図り、地域活性化や集客力を強化するため、地元市町や関係団体の協力を得ながら、映画、TV、CMなどのロケーション撮影の誘致、支援に力を注いでいる。
香川フィルムコミッションによると、現在も某映画のロケが行われている真っ最中。その他にも、数本の映画や、TV、CMの撮影予定が入っていて、年内のかなり先までスケジュールが埋まっているという。
どうしてロケ地として香川県が選ばれているのか。香川県観光交流局観光振興課主任で、香川フィルムコミッション担当の八木秀憲さんに聞いてみた。
「香川県は、我が国最初の国立公園である瀬戸内海の多島美(たとうび)を楽しめることが何よりの強みです。また、通称『おむすび山』と呼ばれる飯野山は、日本昔話にでてきそうな見た目ということで画面でも映えますし、全国有数の数を誇るため池が撮影されることも。こうした、香川にしかない独特の景観が、映像の背景に適しているからでしょうね」。
また、本島から見て北側に島があるため、光がカメラの背後から被写体に向かう、いわゆる“順光”であり、「青色に輝く美しい海」を撮影できるのもポイントのようだ。
機材やエキストラも手配しやすい
さらに、以前から多くのロケが行われてきたことから、移動撮影用のレールや台車、クレーン、車両などの映像特機会社が地元にあるほか、ボランティアエキストラとして香川県民など1,000名以上の登録があり、受け入れ体制が充実していることも大きいと言う。「撮影スタッフだけお越しいただければ済みますから」(八木さん)。
また、香川県は年間を通して雨の日が少ないため、撮影に支障が出にくいそうだ。八木さんも、「ほぼスケジュール通りに撮影できるようですよ」と太鼓判。さらに、日本一小さい県であるため、ロケでの移動時間が少なくて済むというメリットもある。
文学者も多く排出している!
また、瀬戸大橋が架かる香川県は四国の交通の要衝であり、昔から大手企業の四国支店が多く集積している場所でもある。「転勤で高松に来られる方も多いので、映像を見て懐かしく感じるのか、CMなどは好感度が高いと聞いています」と八木さん。こうした意外なポイントも、ロケ地としてプラスになっている。
また、香川県は数多くの文人を排出してきたことから、小説や映像の舞台として登場することも多いのではないかと八木さんは言う。香川県出身の文人には、江戸時代に俳人としても活躍した平賀源内、菊池寛や壺井栄などの文学者がいる。最近では、「相棒」のシナリオなどを手がけたシナリオライターの太田愛さんが同県出身だ。
香川県が文学作品の舞台になることもしばしばだ。近年の作品だと、角田光代の『八日目の蝉』の舞台が小豆島。また、村上春樹の『海辺のカフカ』では、主人公の“僕”が15歳の誕生日に家出して高松市に移り住むという設定だ。
香川フィルムコミッション公式サイトではロケ地を一覧で紹介しているが、香川県公式観光サイト「うどん県旅ネット」では観光モデルコースが紹介されている。これらのコンテンツを参考にして、香川県内でロケ地巡りをするのもいいだろう。きっと、「あの作品もここで撮ったんだ!」という発見に心躍るはず。