キャストがダメ! ラストシーンが腑に落ちない! とダメ出し連発!?
近年、マンガが原作の実写化映画が増加しているが、「原作を忠実に再現してくれた」と喜ぶ人もいれば、「こんなの原作と違う!」と憤りを感じる人も。原作のファンであるほど、その映画化作品には何かしら言いたくなるものだ。そんななか、WOWOWでは、2011年~2012年に公開の映画『宇宙兄弟』『荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE』『GANTZ』を放送。そこで今回は、映画化版を見たという人たちにアンケート調査を実施し、ダメ映像化と感じた人にはどこかダメだと思ったのか、よい映像化の場合はどの部分がよかったと思ったのかを質問。回答者の意見とともに、マンガ原作の実写化映画について、その功罪を探ってみた。
配役に納得の声多数! 『宇宙兄弟』
・原作ファンのうち「原作派」…64.5%
・原作ファンのうち「両方アリ派」…35.5%
・原作ファンのうち「映画派」…0%
・原作ファンでなく「映画が面白い!」と回答した人…63.2%
同作品は、無職の兄・ムッタ(小栗旬)が、宇宙飛行士という夢を実現させた弟・ヒビト(岡田将生)に感化され、自らも同じ夢に再挑戦する……という内容。兄弟とその仲間たちの奮闘を描いたストーリーだ。
・いまいち消化不良!? 「原作の方が面白かった」という人のコメント
「(原作では主要キャラの一人として登場する)シャロンが映画には出てこなかったから残念」(女性・28歳)
「原作の細かい部分を映画では描ききれていないと感じた」(女性・28歳)
「映画は間延びしていた」(24歳・男性)
・キャスティングはバッチリ! 映画を「面白かった」と評価した人たちのコメント
「演出に迫力があった。映画だとみんなで感動を共有できる」(男性・28歳)
「配役がよかった」(男性・41歳)
「小栗さんがぴったりハマっていて、とても面白かったです! 原作のユーモアがしっかり映画でも見てとれました」(女性・27歳)
天然パーマがトレードマークの"ちょっぴり残念な兄"を小栗旬が演じるとは、格好よすぎな感が否めなかったが、キャラのイメージと異なる俳優が演じるということは、その意外性が楽しめるということ。映画の方では、"カッコイイのに生き方が不器用"というギャップが、かえってコミカルな雰囲気を高めてくれていたので、鑑賞した結果「配役に納得した」という声も多く聞かれた。また、原作ではまだ描かれていない結末が用意されていたのも面白いところ。個人的には、ヒビトが事故から生還する過程や、ムッタが活躍するシーンをもう少しじっくり見たかったが、時間的な制約があるなかで、全体的に無理なく、つじつまの合う構成に仕上がっていたのではないだろうか。
奇抜! 斬新! シュール! 賛否両論の『荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE』
・原作ファンのうち「原作派」…53.8%
・原作ファンのうち「両方アリ派」…30.7%
・原作ファンのうち「映画派」…15.5%
・原作ファンでなく「映画が面白い!」と回答した人…64.2%
同作品は、大企業の御曹司・市ノ宮行(林遣都)が、ピンチのところを河川敷に住む美少女ニノ(桐谷美玲)に救われるところからスタート。荒川河川敷で生活する一風変わった住人らとの人間関係に焦点を当てた、感動的なヒューマンドラマとなっている。
・映画はシュール過ぎ? 「原作の方が面白かった」という人のコメント
「漫画なら許される世界観が、動く画面だとシュールになり過ぎたところがあった」(女性・27歳)
「あのファンタジックな世界観を実写で表現しきれていなかった」(男性・33歳)
「原作の不思議な世界観を映画で表すのは難しいと感じた」(女性・28歳)
・個性豊かな面々に思わずニンマリ! 映画を「面白かった」と評価した人のコメント
「リアル感があった」(男性・42歳)
「奇抜過ぎて面白かった」(男性・27歳)
「映画でもキャラクターの個性がすごくよく出ていた。この俳優さんがこんなことするの!? というのも面白かった」(女性・25歳)
前半はドラマ版の焼き直しといった感じで退屈な思いをする人もいるかもしれない。それぞれのキャラの個性が際立ち過ぎて、映像化すると画面がうるさい、コント集みたいで全体のストーリーが入ってこない、という印象も受けるかも。それを「奇抜で面白い」と捉えるか、「シュール過ぎてちょっと……」と捉えるかは見た人によるようだが、まだ見たことがない人は、河童に変身した小栗旬や、星のかぶりものをつけた山田孝之を見ておいて損はなさそう。「せっかくのイケメンが……」とネットでも話題になるほど気合いの入ったメイクぶりで、原作のイメージとかけ離れたキャスティングに、逆に笑いがこぼれるのではないだろうか。
映画ならではの迫力の戦闘シーンが高評価『GANTZ』
・原作ファンのうち「原作派」…31.5%
・原作ファンのうち「両方アリ派」…39.5%
・原作ファンのうち「映画派」…29%
・原作ファンでなく「映画が面白い!」と回答した人…66.6%
謎の球体"GANTZ"に召喚され、異形の"星人"と呼ばれる敵との戦いを強いられた、若者の苦悩と究極の選択を体現する物語『GANTZ』。演技派俳優、二宮和也&松山ケンイチが初共演を果たしているところも見逃せないポイントで、ふたりが繰り広げる力強い戦闘シーンは圧巻だ。
・ライトなアクション映画になってしまった!? 「原作の方が面白かった」という人のコメント
「映画の最後が納得いかない」(女性・37歳)
「ストーリーが映画では描ききれていなくて、アクションばかりの映画になったのではないかと思った」(女性・29歳)
「説明不足で流れが把握しにくく、原作の方がわかりやすい」(男性・50歳以上)
・迫力満点! 映画を「面白かった」と評価した人のコメント
「設定が今までにない、斬新なもので衝撃を受けた」(女性・25歳)
「主演の二宮さんのファンだったので、すごく楽しめた」(女性・28歳)
「映像ならではの迫力があった」(女性・25歳)
原作ではまだ描かれていない映画オリジナルのラストや、新しい登場人物の存在は衝撃度大! 原作ではまだまだ広がりを見せる壮大なストーリーを、PART1の『GANTZ』と、PART2の『GANTZ PERFECT ANSWER』でまとめ、終わらせなくてはいけなかったせいか、無理やりインパクトのある結末に持っていったんだろうという強引さを感じる。しかし、"全く別のもうひとつのストーリー"と思えば、ちょっと得した気分にも。不条理なラストに納得がいかなかった人は、「マンガではこんなラストになりませんように」と別の希望を持つこともできるのだ。また、「ただのアクション映画になってしまった」と残念がる向きもいるようだが、CGを駆使した激闘シーンは本場ハリウッドにも引けを取らない出来栄えなので、難しいことを考えずにスカッと楽しみたい日にはピッタリの作品だと思う。
無職だったり、プライドの殻から抜け出せていなかったり、就職が決まらなかったり……そんな主人公たちが「どう成長していくのか」見守る楽しさも見出せる上述の3作品。
アンケート調査では、『宇宙兄弟』『荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE』に関しては、「原作も映画も見たが『原作マンガの方が面白い』と思った」"原作派"が半数を超える結果になるなど、「原作ファンは実写化映画を厳しい目で見ている」ことも浮き彫りになったが、『GANTZ』は"原作派"と"映画派"がほぼ拮抗している。これらマンガ原作映画は、原作との違いを見つけて批評することも楽しめるひとつのポイントだ。ダメ映像化ぶりに笑ってしまうこともあるが、そのバカバカしさに愛着が湧いたり、賛否両論あるからこそレジェンドになったりすることも。
今回紹介した3作品は、WOWOWで5月に放送予定。この機会にチェックして、マンガ原作映画の魅力を是非、再発見してみてほしい。
5月はマンガ原作映画が盛りだくさん! WOWOWの放送スケジュール
『宇宙兄弟』
5月11日(土) 21:00
5月12日(日) 19:45
5月19日(日) 13:30
5月25日(土) 15:45
『荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE』
5月11日(土) 23:15
5月20日(月) 19:50
5月21日(火) 15:15
『GANTZ』
5月5日(日・祝) 18:45
5月18日(土) 13:00
『GANTZ PERFECT ANSWER』
5月5日(日・祝) 21:00
5月18日(土) 15:15
※上記日時にて、WOWOWプライム及びWOWOWシネマいずれかにて放送。
調査期間:2013年4月4日(木)~4月5日(金)
アンケート対象:マイナビニュース会員
調査対象数:300人(インターネットログイン式アンケート)
文/平井ライラ(エフスタイル)