「マルマン コンダクター」とマスターズの関係は?

マスターズは、他のメジャー大会とは少し趣が異なっていて、出場する選手はもちろん、ゴルフファンにとっても特別な大会として知られている。なぜゴルファーがこれほどまでにマスターズに魅了されるのか? 4月12日(金)の早朝からテレビ放映が始まるが、その前にマスターズについての基礎知識と雑学めいた話を少しご紹介しよう。

マスターズは、"球聖"とも呼ばれる名プレーヤーであるボビー・ジョーンズと、実業家のクリフォード・ロバーツという人物が、ゴルフのマスター(名手)だけを招待して毎年開催される大会を開こうという主旨のもとに始められた大会だ。第一回目の大会は1934年開催、今年で77回目を迎える。

出場できる選手の規定は、世界ランキング50位以内など、現在はいろいろ設けられているが、もともとインビテーショナル(招待)試合なので、マスターズ委員会からの特別招待枠も用意されている。今年、日本人選手のなかではただ一人、昨年度の日本ツアーの賞金王である藤田寛之プロが世界ランク50位以内の枠で出場を決めていて、石川遼プロはマスターズ委員会から特別招待枠での出場となっている。また、マスターズはプロだけでなくアマチュアも出場できる。2011年度の大会では、当時アマチュアとして出場した東北福祉大2年生の松山英樹くんが、日本人初となるローアマチュア(アマチュアのなかで、いちばん成績の良かった選手に贈られる賞)を獲得。かの大震災の直後だっただけに、松山くんの健闘は世界中のゴルフファンの胸を熱くしたのだった。

マスターズが特別な理由

さて、なぜメジャー大会のなかでもマスターズだけが特別なのか? それは他のメジャー大会では毎年開催コースが変えられるのに対して、マスターズだけが開催以来ずっと「オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ」(以下、オーガスタ・ナショナル)という同一コースで開催されているからだ。

アメリカのジョージア州にあるオーガスタ・ナショナルは、前出のボビー・ジョーンズが土地に惚れ込んで、スコットランド人のコース設計家であるアリスター・マッケンジーを招き、プロトーナメントの理想的な開催コースとして作り上げたものだ。このコースは4月に行われるマスターズの準備のために、なんと年間の約半分はクローズの状態にされている。会員は400名ほどいると言われているが、当然メンバーであってもプレーできる機会はとても少ない(メンバーになれるだけで社会的な名誉なので、それで文句を言うような人はいないだろう)。

年に一度のマスターズ開催のために、時間を掛けて塵ひとつないぐらいに完璧な状態に仕上げられたコースのなかでは、開催時期に合わせてアゼリア(西洋ツツジ)の花々が咲き誇り、まるで広大な箱庭のようになる。近年はテレビがハイビジョン放送になったことで、テレビ観戦でもこのオーガスタ・ナショナルの美しさを存分に満喫できる。たとえゴルフファンでなくとも、画面に見とれてしまうはずだ。

攻略するのも、観戦するのも難しい……それでもマスターズは愛される

マスターズが開催される週には、オーガスタの街はお祭り騒ぎになる。世界各国からゴルフファンが押し寄せるのだが、この小さな街には宿泊施設が足りていない。そのために地元住民のなかには、大会の開催期間中は旅行に出かけて自らの家を空け、選手や観客たちにレンタルする人もいるほど。また、世界中のゴルフファンにとって憧れの大会だけに、観戦チケットの入手にも困難を極める。そもそもマスターズの観戦チケットは一般販売されておらず、地元住民や協賛企業しか手に入れられないようになっている。これもマスターズという大会の特殊なところだ。昨年度からウェブでチケットを申し込める方法が公式に取り入れられたが、競争率が高いうえに販売数は非公開。どうしても現地で観戦したいのなら、他の何らかの方法でチケットを入手するしかない(非公式の入手価格は5~10万円ぐらい)。

そういった背景もあって、マスターズの観客はギャラリーとは呼ばれず、昔から支援者という意味を込めて特別にパトロンと呼ばれている。ちなみに、パトロンたちは入場の際に厳重な持ち物チェックを受ける。カメラやケータイなどの電子機器、アルコール、応援フラッグなどは会場内に一切持ち込み禁止。入場ゲートには規定サイズの箱が用意されていて、手荷物はその箱の中に収まる大きさでないといけないシステムだ。

オーガスタ・ナショナルは、その美しいコースの見た目とは裏腹に、大きな傾斜と"ガラスのような"と評される高速グリーンを備えていて、一流の技を持つトッププロにとっても難易度が高く、例えて"魔女が棲む"とも言われている。特にアーメンコーナーと名付けられた11番から13番にかけての3ホールは、スコアを大きく左右する難関だ。サンデー・バックナイン(最終日の後半9ホール)のなかでも、毎年これらのホールは大きな見どころとなっている。

同一コースでの開催大会だけに、記憶に残り、語り継がれる

マスターズの過去大会では、これまでに幾多の印象深いショットや名プレーが生み出されてきた。オーガスタ・ナショナルという同じコースで毎年開催されているからこそ、勝利を分けたプレーヤーの一打や歓喜の姿は、観る者の記憶に深く残り、毎年マスターズを観るたびに、それらが鮮明に思い起こされるのだ。

これまでの日本人プレーヤーの活躍は、2009年度に片山晋呉プロが記録した4位が最高位。だが、実は日本のゴルフクラブメーカーのクラブは、過去にマスターズを2度も制覇している。それが1984年にマルマンがアスリートのために生み出したクラブ、コンダクターだ。1991年度の大会ではウェールズ出身の小さな巨人、イアン・ウーズナムがコンダクターでビッグドライブを放って勝利し、1994年度にはホセ・マリア・オラサバルが同じくコンダクターを使い、マスターズを制覇した。

今年、そのマルマンから往年のロゴを復活させたコンダクターの新製品が発売された。「コンダクター PRO-X」と名付けられたこのシリーズには、ドライバー、フェアウェイウッド、マッスルバックとキャビティの2タイプのアイアンが用意され、アスリートゴルファーが思い描く"理想の一打"を放てるような性能に仕上げられている。日本のクラブメーカーとして伝統あるマルマンが、この筆記体ロゴに込めた思いは大きい。当時を知るゴルファーにとっては懐かしく、初めて手にする若手ゴルファーの目にも、このコンダクターのロゴを纏った、こだわりのゴルフクラブはカッコよく映るはずだ。

マスターズを観戦すると、ゴルファーなら誰しもプレー熱が上がってくる。ちょうどこのマスターズ開催時期、日本にも春のゴルフシーズンが到来する。テレビ観戦を終えたら、ゴルフの歴史が感じられるクラブを手に、コースに出掛けてみてはどうだろう。