東北の復興支援、という意味合いもあるのだろう。NHKのドラマが東北づいている。福島県会津若松市が舞台の大河ドラマ「八重の桜」に続いて、4月からは朝の連続テレビ小説(通称:朝ドラ)「あまちゃん」がスタートする。舞台である「北三陸市」のモデルは岩手県久慈(くじ)市。放映に先駆けて、この町についてレポートしよう。
"北限の海女"の町に撮影隊がやって来た!
"北限の海女"の町として名高い岩手県久慈市は今、震災と津波による大きな被害から立ち直ろうと復興を急いでいる。そんな久慈市に、東京からNHKの朝ドラ「あまちゃん」の撮影隊がやって来た。
この物語は、海女になろうと頑張るひとりの少女の成長ストーリーだ。2012年8月には、主演の能年玲奈さんが海女漁の行われる小袖海岸に現れ、本物の海女さんたちと記念撮影。10月から、久慈市を中心とする大掛かりな岩手ロケが開始された。
久慈市もロケの受け入れに全力投球だ。ロケが行われる久慈市ほか5市町村で「あまちゃん支援推進協議会」が結成され、セミナーや勉強会を開催するなどして、おもてなしの向上や観光資源のブラッシュアップを図っている。
また、「市内の商店などで『あまちゃん』絡みの商品開発が進められていると聞いています」(久慈市商工観光課)とのこと。こちらも大いに楽しみである。
市民エキストラ600人。現役海女さんも出演
市民もエキストラ参加で、ロケを支えている。久慈市ほか5市町村で600人もの人たちがエキストラ登録して、第1次ロケや今年2月の第2次ロケで大活躍。「今後も岩手ロケが行われる予定です」(NHK番組広報)とのこと。いずれ現役の海女さんたちもドラマに彩りを添えてくれるのだろうか。
海女さんは、なんといっても久慈市の重要な観光資源。現在、現役の海女さんは20名ほど(約20年前には100名ほどいたという)で、市場に出荷するための職業的なウニ採りをするのは、夏の2日間程度(波の穏やかな日のみ)だそうだが、毎年7月から9月までは連日イベント的な素潜り漁を披露し、観光客を楽しませてくれている。
イベントとしての素潜り漁は、「小袖海岸海女センター」主催で行われており、5,000円で見学することができる。ちなみに海女さんたちは、オフシーズンは主婦として家事に専念、あるいは他の漁業関係の労働に従事しているそう。
人数の減った現役海女さんをサポートするのは、「高校生海女クラブ」の地元の女子高生たち。観光客のお世話などをするアルバイトだが、素潜り漁の実演に加わる子もいて大評判。毎年6、7名の採用枠に多くの応募があるが、2013年は「あまちゃん」放映もあるから、応募が殺到するかもしれない!
実は、久慈市の海女がドラマの主人公になるのは「あまちゃん」が初めてのことではない。昭和34年(1959)11月、NHKラジオ第1放送でラジオドラマ「北限の海女」が放送されて全国的な人気を博し、久慈の海女が全国に知られるようになったのだ。
現在の海女さんは、白の短パンをはき、かすりはんてんを着て赤い帯を締めるという着衣姿。けれど、かつては上半身裸だった。それがラジオドラマ人気で観光客が増えたために、現在のような着衣姿で観光客に対応するようになったとのこと。
海女さんだけではない、久慈市の誇る観光資源の数々
海女の話ばかりしてきたが、久慈市は他にも観光資源に事欠かない。近在には日本一のシラカバ林と言われる平庭高原や久慈渓流などの美しい自然景観があり、べっぴんの湯・新山根温泉もある。さらに久慈琥珀(こはく)博物館あり、小久慈焼(こくじやき)の窯元ありと、アート鑑賞も楽しめる。市内には「まちなか水族館」という水族館までもあるのだ。
そして海の幸、山の幸を使ったおいしい郷土料理の数々。ウニやアワビなど新鮮な魚介はもとより、まめぶ汁(山グルミと黒砂糖入り団子を、野菜、焼き豆腐、油揚げなどとともに昆布と煮干しのだしで煮込んだ料理)、豆腐の田楽といった伝統料理も堪能できる。あなたなりの東北復興支援としても、「あまちゃん」の町・久慈市観光はいかがだろうか。
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久慈市