日本から飛行機で約7時間の常夏の国、マレーシア。ここには多くの日本贔屓が暮らしていて、和食の浸透率も高い。「Sushi」の文字は街の至るところで見かけ、Sushi好きも多い。しかし、気候や環境の違いで、生魚を食べる習慣のないマレーシアのSushiは、私たちの想像をはるかに越えている。Sushiを愛するがゆえのバラエティー豊かさ。回転すしなどで通常のすしも食べられるが、今回は、生魚より変わりだねが主流を占めるテイクアウトのSushiに注目する。
マレーシアのSushiの定義とは
クアラルンプールの有名スーパーには、必ずSushiの総菜コーナーがある。握りずし、巻きずし、手巻きずしの3種。すべて1貫単位での販売で、1貫1~2マレーシアリンギット(約29円~58円)で売られている握りずしも丁寧にパック包装。刺身系のすしだねはほとんどなく、ポテトサラダすし、カニカマすし、トビッコすしなど火の通ったものが主流。チヂミすし(すし飯の上にチヂミがのっている)、茹で玉子すし(すし飯のかわりに茹で玉子)ぐらいになると、「これがすし!? 」と聞きたくなるのだが、食べてみると意外においしい。"何かの上に何かの具材がのっていればSushi"という強引さに感動すら覚える。
キーワードはジャパン、その象徴的存在がすし
上級者向けになると、すしサンドイッチなんてのもある。持ちやすくて食べやすいが、ご飯の多さは半端ない。「Sushiは値段の割にお腹いっぱいにならない」というマレーシア人の不満解消のために、すしだねとお米のバランスは度外視で、ごはんがギュウギュウ詰め。果たしてこれで不満は解消されたのだろうか。
さらには先日、こんなものも見つけた。すしをモチーフにしたドーナツ、名前は「donashi」。ドーナツとすしだなんて斬新すぎる! この先何年経っても、日本人には思いつきもしない組み合わせだろう。
気になるdonashi、イカや玉子、マグロ、トビコとかなり繊細に表現されている。といっても、表面にクリームが絞られ、すし飯代わりのドーナツの中にもたっぷりクリームが入っていて、前代未聞のハイカロリーすしとなっている。
しかし、こんなにもマレーシア人がSushiを愛しているのには理由がある。1981年、マハティール元首相が発表した「ルック・イースト」政策。戦後に急激な経済成長を遂げた日本などから学ばなければいけないと唱え、日本の文化や技術を国民に紹介した。そのため、マレーシア人にとって日本は憧れの国。今もなお、日本にいいイメージを持っている人が多い。私たち日本人にとって、どんな味であれ「Sushiが好き! 」と言ってくれるのは、やっぱりうれしいものである。