1997年に公開され、193億円の興行収入を記録したスタジオジブリの代表作の一つ「もののけ姫」がイギリスの若手劇団「Whole Hog Theatre」(ホール・ホグ・シアター)により舞台化され、「Princess MONONOKE~もののけ姫~」と題して2013年4月29日~5月6日にかけて来日公演が行われることが発表された。宮崎駿監督が自らの作品の舞台化を許諾したのはこれが初めてのこととなる。

「Princess MONONOKE~もののけ姫~」に出席したスタジオジブリプロデューサーの鈴木敏夫氏(左)と「Whole Hog Theatre」の演出家・アレクサンドラ・ルター氏

主催はPrincess MONONOKE実行委員会(ドワンゴ/日本テレビ放送網/ネルケプランニング/読売新聞/TOKYO FM/ローソン/イープラス/電通/アイア/BS日テレ)。ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンが協賛する。3月5日には、六本木・ニコファーレで記者発表会が行われたので、その模様をお伝えしよう。

当日、会場に登壇したのは、舞台化を手がける「Whole Hog Theatre」の演出家・アレクサンドラ・ルター氏と、スタジオジブリプロデューサーの鈴木敏夫氏、ドワンゴ会長であり、スタジオジブリプロデューサー見習いでもある川上量生氏、日本テレビ放送網の映画事業部長であり『千と千尋の神隠し』に登場する千のお父さんのモデルにもなった奥田誠治氏の4名である。

左から奥田誠治氏、鈴木敏夫氏、アレクサンドラ・ルター氏、川上量生氏

まず「もののけ姫」舞台化のきっかけについて、ルター氏は「そのはかなさや疾走感、美しさに感銘を受け、大好きになりました。二度目に見たとき、タタリ神になるシーンをパペットでやったら面白いのではというアイデアを思いつき舞台化に踏み切りました」と語った。ルター氏が生まれ育ったのは、イギリス南部のドーセットという緑豊かな町である。地元に帰るたびに地元の森が失われていく危機感や喪失感を強く感じているというルター氏は、『もののけ姫』の放つメッセージに共感したのだという。

そんなルター氏がアートディレクターを務める「Whole Hog Theatre」は、これまでにも数々の作品の舞台化を若手のアーティストを積極的に起用して行ってきた新進気鋭の若手劇団だ。今回の舞台化は彼らがスタジオジブリにオファーをかけて実現したものだが、鈴木プロデューサーによると、これは非常に珍しいことなのだという。

というのも「ジブリの中でも宮崎作品はこれまでにいただいたハリウッドでの映画化や劇化の話をすべて断っていた」からである。では、なぜ今回に限っては許諾に至ったのか。その理由の一つは『ウォレスとグルミット』などの作品で知られる著名アニメーターで、鈴木プロデューサーや宮崎監督とも親しい間柄であるニック・パーク氏から寄せられた話だったことだ。

「そのはかなさや疾走感、美しさに感銘を受け、大好きになった」と『もののけ姫』に賛辞を送ったアレクサンドラ・ルター氏

しかし、何よりも大きな理由となったのは、そのニック・パーク氏から送られてきた劇団「Whole Hog Theatre」のテスト映像を見た宮崎駿監督が、ものの3秒で「これなら舞台化してもいい」と言ったからであった。ニック・パークからの紹介、そしてすばらしいクオリティのテスト映像。その2つの要素が、今回の「もののけ姫」舞台化を実現に導いたのである。

さて、そうして舞台化が決まった「もののけ姫」だったが、それを日本に持ってきたらどうかと言い出したのはドワンゴの川上会長だった。

「最初は今年の4月に開催するニコニコ超会議2」の目玉の一つになればいいなと思って言ったんですが、見ているうちに、これはちゃんとやらないといけないんじゃないかと思って計画を変更しました。niconicoで舞台を担当している片岡という者と一緒にイギリスに行って稽古を見たら、片岡が『これは非常にレベルが高い』というので、じゃあやっぱり日本に持ってこようと」

現在は舞台化に向けてリハーサルや音楽製作、パペット製作を行なっているという「Princess MONONOKE~もののけ姫~」だが、果たして「もののけ姫」のあの世界観やストーリーを舞台でどう表現するのか。ルター氏によると、パペットでの表現を得意とする「Whole Hog Theatre」は今回もそうした演出を軸に考えているとのことで、「3人の人間でパペット1体を操ることでスケール感が出ます。人間の役者は15人で、『もののけ姫』の73人にもなる登場人物を演じ分けていきます」という。

日本でこれだけ人気の作品を舞台化するということに責任を感じていると語るルター氏に、鈴木プロデューサーは「映画と舞台は違うから大胆に変更や解釈を加えた方が面白いですよ」とアドバイスする。もっとも、スタジオジブリとしてはあくまで協力という立場であり、ストーリーや演出を始め、舞台化に対して何か意見をしたり監修したりすることはないという。鈴木プロデューサー曰く、「許諾するということは相手を100%信頼することであり、すべて任せるということ」なのだ。

「Princess MONONOKE~もののけ姫~」のロゴデザイン

むしろ鈴木プロデューサーが期待するのは、「イギリスの人が僕らの作ったものをどう解釈して舞台化するのかを楽しみたい。小さくまとまるんじゃなくて、破綻したものでもいいから面白くて変な『もののけ姫』を見たい」ということである。

なぜなら「宮崎駿監督はアイルランドのキリスト教以前のヨーロッパの宗教に興味がある。『もののけ姫』はそういうものに影響を受けてできた映画」であり、「日本人が受け取ったものがイギリスでまた新しく解釈され、そうやって行ったり来たりするのが楽しい」からだ。今回の「もののけ姫」舞台化は、いわばルーツとなった文化同士による交流なのである。

17年前に日本中を熱狂させた「もののけ姫」が、イギリスに渡りどう解釈され生まれ変わるのか。宮崎駿監督作品初の舞台化に今から注目が集まっている。

なお、公演詳細は下記の通り。

「Princess MONONOKE~もののけ姫~」

公演名:「Princess MONONOKE~もののけ姫~」 日時:2013年4月29日(月)~2013年5月6日(月)
場所:AiiA Theatre Tokyo アイアシアタートーキョー
主催:Princess MONONOKE実行委員会
ドワンゴ/日本テレビ放送網/ネルケプランニング/読売新聞/
TOKYO FM/ローソン/イープラス/電通/アイア/BS日テレ
協賛:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
協力:スタジオジブリ
後援:ブリティッシュ・カウンシル
原作:『もののけ姫』宮崎駿
構成・演出:アレクサンドラ・ルター
オリジナル音楽:久石譲
舞台版編曲:ケリン・タットマン
チケット情報
全席指定7,500円(前売・当日共/税込)
先行予約:2013年3月6日(水)午前10:00~
一般発売:2013年4月6日(土)午前10:00~
ローソンチケット、イープラス
備考:英語版/日本語字幕付
未就学児童入場不可

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(C) Princess MONONOKE実行委員会