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2012年は、金環日食や金星の太陽面通過、金星食など、天文に関してもまさに「金」の年となりましたが、2013年はどうやら「彗星」の年となりそうです。

というのも、2つの大きな彗星が出現するためです。1つは3月頃に出現する「パンスターズ彗星」、もう1つは11月ごろに出現する「アイソン彗星」です。

今回は、その中でも彗星の年の幕開けを飾る「パンスターズ彗星」について、詳しくご紹介したいと思います。

■パンスターズ彗星とは?

「パンスターズ彗星」と言っても、その名を聞いたことがある人はほとんどいないでしょう。

この彗星は、2011年6月に、ハワイ大学の「パンスターズ1望遠鏡」での観測により発見されたものです。 現在、ハワイ大学が主体となって、地球に接近する小天体の観測を行う「パンスターズ計画」を進めており、その中で発見されたのが、このパンスターズ彗星(C/2011 L4)です。

2011年6月6日に発見された彗星ですが、その当時はまだ木星よりも遠い位置にあり、明るさも19.4等という大変暗いものでした。

しかし、2013年3月の太陽への最接近に向けて、加速度的にその明るさを増しています。

■彗星の尾は2種類

一般的な彗星は、中心に明るく輝く「核」と、それをぼんやりと取り囲む「コマ」、そして長い「尾」から構成されています。

その中でも、特に長い尾が有名ですが、その尾には実は2種類あることをご存じでしょうか?

1本は、彗星が太陽に近づいたときに放出される塵(ちり)や金属が元となって形成された「ダストの尾(ダストテイル)」で、白色をしており、大きく曲がっているのが特徴です。

そしてもう1本は、彗星から蒸発してイオン状態となったガスからできている「イオンの尾(イオンテイル)」で、こちらは青色をしており、太陽からまっすぐ反対の方向に伸びています。

■3月中旬ごろの見え方は?

2013年3月10日には、パンスターズ彗星が太陽におよそ0.3天文単位(太陽~地球間の距離の約1/3)の距離まで最接近します。

この日を過ぎれば、日本でも比較的観測しやすくなり、日没直後の西の空に、マイナス1等級ぐらいの明るさで見える可能性があります。 ただし、太陽と同じ方角にあり、日没後もしばらくは空がうっすらと明るいために、観測できる時間帯はごくわずかとなります。

実際、この時期の東京の日の入り時刻は18時前、パンスターズ彗星が沈むのが19時前となるため、彗星が見える時間は実質1時間ほどしかないことになります。

また、見える高度も10度ほどと低いため、高い山やビルなどがない開けた場所を、事前に見つけておくことをオススメします。

■3月下旬以降の見え方は?

3月下旬~4月上旬頃になると、少しずつ高度を上げながら、日没後の西の空と、日の出前の東の空の、1日2回観測できるようになります。

ただし、この場合も太陽と同じ方角にあるため、観測できる時間帯は限られます。

やがて、4月下旬になると、明るさも5~6等級まで落ちるため、もう肉眼で見ることは難しくなるでしょう。

■二度と見られないパンスターズ彗星

パンスターズ彗星の軌道は、「ハレー彗星」のような楕円軌道ではなく、放物線に近い双曲線軌道であると推測されています。

そのため、太陽に近づくのは今回が最初で最後となり、その後はどんどんと太陽から遠ざかっていきます。

つまり、このチャンスを逃すと、もう二度とお目にかかることはできません。

■まとめ

今年の彗星出現ショーの頭を飾る「パンスターズ彗星」。

彗星の明るさを予想するのは大変難しいため、実際に来てみたら期待していたほど明るくなかった…という可能性もゼロではないですが、このままの予想通りになれば、久しぶりの大彗星出現となるかもしれません。

(文/TERA)

●著者プロフィール
TERA。小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。