これぞ伊那名物「ローメン」。名前の由来は「炒め麺」と「肉」

全国には多種多様な「ご当地麺」が存在しており、長野県伊那(いな)市には「ローメン」という独特の麺料理があるという。今から50年以上前に市民の声から生まれたというご当地グルメは、今ではすっかり地元の定番。伊那の人たちの舌をとりこにするローメンとは一体どんなものなのだろうか。

地元のアイデアと食材から生まれた伊那の味

簡単に説明すると、「ローメン」は蒸した麺にマトンなどのお肉とキャベツを加えた伊那地方特有の麺料理。

今から50年以上前の、冷蔵庫がまだ普及していなかった時代、生麺を長く保存することは難しかった。そこで地元の中華料理店と製麺業者が共同開発したのが、通常の麺より硬く茶色い「蒸し麺」。この蒸し麺に、伊那周辺で飼育されていた羊のマトンと、同じくこの地域で盛んに栽培されていたキャベツを組み合わせてできあがったのが「ローメン」だ。

創作の過程では、中華料理店の客から「硬い麺にしてほしい」「スープを少なめにしてほしい」「こんな味付けにしてほしい」などの様々な要望もあった他、地元の人たちの声も取り入れたという。つまり、ローメンは地元の職人のアイデアと地元の食材で地元の声をもとに、地元の人たちの口に合うように作られた、伊那ならではの一品なのだ。

ちなみに「ローメン」とはなんとも不思議な名前だが、「炒め麺(チャーメン)」に「肉(ロー)」が入ったメニューということで、最初は「チャーローメン」と呼ばれていたという。そのうち、言いやすいように短くなって「ローメン」として定着したそうだ。

「ローメン」通は、オリジナルの味付けをもつ

現在、ローメンを出すお店は、伊那市の中華料理店を中心にレストランやカフェ、日本料理店など約90軒ある。どのお店も材料は基本的に同じだが、ローメンには大きく分けて「スープ風」と「焼きそば風」の2種類がある。また、それぞれの店舗が麺の硬さや太さ、スープの味や量などを工夫して、独自の味を提供している。

例えば、中華料理店「華蔵」のローメンは、マトンの代わりに豚肉を使ったあっさりとしたスープ風。様々な信州グルメが味わえる「シャトレ」では、マトンの他に牛肉、イノシシ肉のローメンも楽しめる。女性に人気の「とまり木」は、食べ歩きをして追及したというしょうゆベースの特製だれが自慢。味の違いを食べ比べして確かめるのも楽しいだろう。

この他、「海鮮ローメン」「バターローメン」などの変わり種、夏限定の「冷やしローメン」、手軽に食べられる「ローメンまん」なども登場しており、バリエーションも豊富だ。

さらに、自分好みの味を追求できるのも、ローメンの特徴のひとつ。お店には、ソース、酢、七味、ごま油、にんにく、ラー油などのテーブル調味料が用意されているので、供されたロ-メンにふりかけて好きに味をアレンジすることができる。通になるとお気に入りの調味料が決まってくるそうで、ローメンの味のバリエーションは限りなく広がっている。

お取り寄せでも本格的なローメンが楽しめる

ローメンは、家庭でも手軽に食べられるようインスタントや冷凍商品としても販売されている。中にはお取り寄せできるものもある。というわけで早速、信州グルメのレストラン「シャトレ」のソースローメンを取り寄せてみた。

「シャトレ」のソースローメン

硬くて茶色い麺が独特

パッケージングされているのは、乾麺とソース。まず、硬くて茶色いストレートの乾麺を沸騰したお湯で5分ゆでる。あとは肉とキャベツ、もやしなどの好きな具とソースを混ぜて、焼きそばの要領で炒めるだけでできあがり。

早速食べてみると、肉と野菜、ストレートの麺、ソースの相性が抜群! シンプルだが、いくらでも食べられそうな親しみやすい味だ。ポイントとなるソースは、信州りんご入りで甘辛く、ソース好きにはたまらない。

ストレート麺が、焼きそばとは一味違ったおいしさを醸しだす

そのままでも十分おいしいが、ローメン通にならって調味料をプラスしてみた。ごま油を入れると香ばしく、お酢を入れるとサッパリと変化し、違った風味を楽しむことができた。何を合わせてもおいしく食べられるのも魅力のようだ。

50年以上の歴史を誇る伝統の料理だが、いま食べても古さを感じることはない。ボリュームたっぷりなのに一皿500~600円という安さもあり、高校生や大学生から大人まで幅広く人気を集める理由もよく分かる。長野を訪れたら、ぜひ現地でローメンの味を確かめてみてほしい。

●information
伊那ローメンズクラブ