悪天候からぶどうの収穫量は半分に

こちらが今年のボージョレ・ヌーヴォー。過去3年間のヌーヴォーより色調は薄め

ハロウィンが終わり、クリスマスがやってくる前の大きなお祭りといえば、そう、ボージョレ・ヌーヴォー解禁、である。今年もこの日がやってきた。

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このテイスティングを前に、今年は気がかりなことがあった。「50年に一度」「ボージョレらしいボージョレ」「3年連続で偉大な品質となったボージョレ」と、ここ数年は品質の安定したボージョレ・ヌーヴォーが産出できていた。ところが、今年は春先ぐらいからどうもあまり芳しくない気象情報がフランスのワイン産地から入っていた。

霜を伴った寒い春、6月は雨がしとしと、夏は不安定で雹害や嵐……。畑やぶどうにとっては悪条件な表現が並んでいる。実際、ぶどうの収穫量は例年より著しく減少し、ひどいところはほぼ半減、なんて話も聞く。

果たしてボージョレ地区はどうなのか。

「自然の女神は収穫量を半分にした」

ボージョレ委員会会長、ブリュノ・マレ氏の開口一番の発言である。しかし、収穫直前から収穫終了までの期間は天候が回復し、品質は安定したものになったという。ということで今年のキャッチフレーズは、「心地よく、偉大なフィネスがあり、アロマの複雑さが見事なワイン」。つまり、「とてもエレガンスで、潜在する香りがすばらしいワイン」ということだ。

ボージョレ・ヌーヴォー解禁日、フランス大使館で開催された記者発表会にて。写真右がボージョレー委員会会長、ブリュノ・マレ氏

今回71種類のボージョレ・ヌーヴォーをテイスティングしたのだが、実際、過去3年間のヌーヴォーより全般的に色調は薄め、アルコール度数も12%ほどと例年よりは若干低めである。味わいは総じてヌーヴォーらしいライトでフルーティー。しかし今回は特出すべきことが一1つ! 香りに個性が凝縮されているのである。

イチゴやラズベリーといった定番の香りはもちろんだが、鼻を抜けるようなコショウの香り、華やかなバラの香り、赤ワインなはずなのに、樽熟成した白ワインに使われる表現のマンゴーの香りまで、まるでデパートの香水売場のような賑やかしい匂いが炸裂!!

これだけでも楽しいので、店頭でヌーヴォーが試飲できるうちにいろいろ試してみて、好みを探すのがオススメだ。

そしてあいかわらず日本は、ボージョレ・ヌーヴォーにおいて最優先市場であるという。2位のアメリカ、3位のドイツに大差をつけてのトップであるからだ。毎年毎年、年に1度の解禁日にボージョレ委員会の会長が来日していることだけでも、その手厚さ加減を知ることができるというものだ(もちろん、ボージョレの帝王、ジョルジュ・デュブッフ氏もいらっしゃいましたよ)。

そのブリューノ・マレ会長はこう分析する。

  1. 日本人はお祭りが好き

  2. 日本人は伝統を重んじながらも現代性をも持ち合わせている

  3. フルーティーでタンニンも少ないボージョレは和食に合う

この3つが世界で最もボージョレ・ヌーヴォが飲まれる要因ではないかと。

同感である。特に1には激しく同意する。もちろん味わい云々もあるが、1年の収穫を祝い、できたばかりの新酒を片手にみんなで喜び合うことに意義があるのである。「今年も天の恵みに感謝! カンパーイ!!

安売り合戦&ペットボトルには反対

なお、昨年や一昨年も論議を巻き起こしていた価格競争やペットボトルの問題。大手スーパーやディスカウントショップでの値下げ競争は、昨年よりも数十円ほど値下がったにとどまり、大きな話題にはならなかった。ペットボトル販売に関しても、ボージョレ委員会がしかるべき機関に、熟成度や賞味期限などの調査を依頼し、結果が出たとして現在は容認(黙認? )しているのが現状。しかし、同委員会としては安売りに関してもペットボトルに関しても是正を促し続けている。