映画『かぞくのくに』がこのほど、第17回釜山国際映画祭でプレミア上映され、キャストの井浦新、安藤サクラ、ヤン・イクチュンとヤン・ヨンヒ監督が舞台あいさつをおこなった。

左からヤン・イクチュン、ヤン・ヨンヒ監督、安藤サクラ、井浦新

同作は病気療養のために25年ぶりに北朝鮮から一時帰国した兄ソンホ(井浦新)と、彼を迎える妹リエ(安藤サクラ)ら家族の姿を通し、価値観の違いと変わらぬ家族の絆をつづっていく人間ドラマ。『ディア・ピョンヤン』(2006年)、『愛しきソナ』(2009年)のヤン・ヨンヒ監督の実体験をもとに描いたノンフィクション作となっている。

登壇したヤン監督は声を詰まらせながら「なぜ私がこの映画を作ったのかは、この映画を見ればわかるはず。できれば父、母、兄たちと一緒に見ることができたら…」と作品に込めた思いを語りながら、「いつか兄たちと一緒にスクリーンでこの映画を見られる日が来ることを心から望みます」と言うと客席からは拍手が起こった。

今回の作品で韓国語の演技に挑戦した井浦は「現場の心が整ってさえいれば、言葉の問題やそれによる芝居の壁は重要ではないということを実感できました」と振り返り、「この作品の裏には、国と国との問題、一つの家族が国に翻弄されているという事実などいろいろなテーマがあるけれども、僕はあくまでひとつの家族の話として演じました」と思いを語った。

一方、ソンホ(井浦新)の妹・リエを演じた安藤サクラは「この作品が韓国で上映されたっていう事実に、正直混乱しています」としながらも、「共演者やスタッフと話しながら、予定調和でなく作っていけた作品で、自分が受けたショックもすごかった。忘れられない現場になりました」と興奮と緊張の入り交じった表情で語った。

来年度のアカデミー賞外国語映画賞日本代表にも選出されている本作。第17回釜山国際映画祭では「アジアの風」部門で出品され、アジア・プレミアのオンライン・チケットは発売後1分で完売し、当日券も即完売するほど、韓国の観客やメディアからも注目を集めている。