島の周囲にはサンゴ礁が広がっている

日本最南端、そして最西端の温泉はどこにあるのか? それは東京から2,100km離れた西表島にある。最南端と最西端が一度に制覇できる、温泉好きならずとも、ぜひともおさえておきたいものだ。

しかもその温泉、なんとジャングルの中にあるという。絶滅危惧種のイリオモテヤマネコもたまに姿を見せるらしい。魅力的というにもほどがあるじゃないか。これはもう、いても立ってもいられない。西表島に行ってみた。

沖縄・那覇から石垣島、そして西表島へと、飛行機と船を乗り継ぎ約2時間。西表島は面積284平方km、周囲約130kmと沖縄県で2番目の大きな島だ。亜熱帯地域にあるため、年間平均気温は23度。島面積の90%が亜熱帯の原生林で覆われている。大小合わせ約40もの川が流れており、滝も多い。

多くの河口付近にはマングローブの林が広がっており、日本全体のマングローブ面積の4分の1を占める仲間川などがある。また、15もの国指定天然記念物が生息している。こうした理由から、島全体が国立公園に指定されている。

「最南端かつ最西端の温泉」は自然にやさしいホテルにあった

亜熱帯性ジャングルに囲まれているパイヌマヤリゾート

さて、本題の「最南端かつ最西端の温泉」だ。その名もずばり西表島温泉。大原港から路線バスで30分、ジャングルの入り口に位置するホテルパイヌヤマリゾートにある。「日本で唯一のジャングルリゾート&スパ」だそうだ。コンクリート2階建てのホテルは自然との共存をテーマにしており、大自然を体験できるアクティビティーを豊富にそろえている。

しかし、何時間もかけてはるばるやってきたこの温泉、一刻も早く満喫せねば気が済まぬ。いざ、湯船に突撃!

恐竜映画の景色のよう

まずは内風呂。大きくとられたガラス窓からは、ライトアップされた巨大なシダがたくさん見える。その正体は「ヒカゲヘゴ」といい、若い芽は食べられるとのこと。ヤシのような幹はうろこのような模様で、芽はニンジンの太さぐらいはありそうだ。

レストランで扱う食材。茶色い毛のはえている物がヒカゲヘゴの芽

お湯はほんの少し黄色がかっている。ちょっとぬるめなのがいい。いつまでも浸かっていられそうだ。環境にやさしいシャンプー類を置いている点も好感が持てる。いそいそと体を洗い終え、水着に着替えたら露天風呂へ。

川沿いにある浴槽は開放感たっぷり

ジャングルを眺められる混浴露天風呂は、水着を着て入らなくてはならないのが少し面倒。だが、風呂場に一歩足を踏み入れれば、その手間などすぐさま忘れさせてくれる美しい景色を楽しめるのだ。

目の前には、生い茂った亜熱帯性植物が明かりに浮かび上がりまるで別世界。ヒカゲヘゴの群生や、木々にギリギリと巻き付いているようなツタ植物、バナナの葉のようなものも目に飛び込んでくる。

川沿いにある浴槽で肩まで湯に浸かる。小川のせせらぎに癒やされ、「コーホーコーホー」と怪しげな鳥たちの鳴き声に耳を澄ます。カエルや虫たちの大合唱は都会では聞き慣れないユニークな響きだ。

それらが亜熱帯の濃い空気と相まってムードを盛り上げて、大自然の息吹を感じるとともに日常生活から心が解き放たれてゆく。あいにくの曇り空で星は眺められなかったが、ジャングルに抱かれている気分は満喫できた。

旅の疲れを癒やす温泉

広いプールは子どもも大喜び

男女別の内風呂と露天風呂、水着着用のファミリープールがある温泉は地下800mから32度の源泉をくみ上げて温度を調節。ナトリウム・カルシウム―硫酸塩泉で、筋肉痛、疲労回復、きりきず、やけど、慢性皮膚病などに効くそうだ。

ジャングルトレッキングやカヌー遊び、シュノーケリングなど、南国の海で遊び疲れた体を癒やすのに最適で、日帰り入浴も受け付けている。というわけで結論。日本最南端・最西端の温泉は本物のジャングル風呂であった。