――そういう意味でもかなり思い入れのある作品だと思いますが、リメイクをするにあたって、どのあたりまで原作を踏襲するかについての事前の線引きなどはありましたか?

出渕監督「基本的なフォーマット、ストーリーの中で起こる各種のイベントについてはあまり変える気はなかったです。ただ、昔の作品の場合、どうしてもテンポがゆったりとしているので、今の人にはちょっと間延びしてみえるんですよ。だったら逆に、取捨選択してテンポアップすればストーリーを圧縮できるんじゃないかと。たとえばオリジナルだと、3話かけて飛び立ってますけど、1回飛んで、戻ってきて人を乗せて、また飛んでいく感じじゃないですか。だったら最初の1回でそのまま飛んでいけば、2話で飛び立たせられる。また、4話と5話でワープテストをやって波動砲を撃っていたところも、ムチャかもしれないけど、Aパートでワープして、Bパートで波動砲を撃てば、1話で終わらせることができるわけですよ」

――かなりテンコ盛りな感じになりますね

出渕監督「テンコ盛りですね(笑)。でも、そうやってイベントを重ねて圧縮していけば、間延びせず、テンポも良くなるだろうと。もちろん、ただ削っていくだけではなく、ユキカゼの話や冥王星の話などはしっかりと描きます。そのほかで言うと、太陽系を出て、宇宙機雷とアルファ星の話があるのですが、僕自身はどちらも好きな話なんだけど、けっこう似ているじゃないですか、やろうとしていることが。だったらどちらかの話に集約すればいいかなとか」

――宇宙機雷も捨てがたいですよね

出渕監督「もちろんそうなんですけど、宇宙機雷の話とかだと、お話自体は面白いんだけど、ツッコミどころも満載なわけですよ。広大な宇宙空間にどれだけ機雷を敷設しておくんだって感じですし、傾けろ! とか言ってますけど、宇宙空間で傾けるというのもね(笑)。そうやって矛盾やおかしなところを修正したり、イベントによってはアプローチを変えたりもしています」

――新たにオリジナルで付け加えた要素もありますか?

出渕監督「最初のところで話数を稼いだおかげで、もともとは1本だった話を2本に分けたところもありますし、少しオリジナルの話を挟んだところもあります。なので、第1作を観たことがある人にとっては、要所要所のイベントは、『あ、あの話だ』って思われると思いますし、ストーリーの大きな流れ自体は変わっていません。ただ、キャラクターも違っていますし、ドラマの部分や仕掛け自体も変わっていく感じです。基本的にはそういう作り方をしています」

――ストーリーを構成するにあたって、第1作に遠慮するようなところはありましたか?

出渕監督「僕自身、第1作目を愛しているので、遠慮ではなく、敬意を表するという気持ちで、今回のお話は作っています。実は最初の全体構成の段階で、原作者の西﨑(義展)さんにお見せしたところ、その中で3カ所だけダメだと言われた。なので、遠慮とは違いますが、その3カ所についてのみ修正しています」

――第1話を観させていただいて思ったのですが、第1作で印象的だった沖田艦長のセリフがそのまま使用されているところなどは、やはり意識して残した感じでしょうか?

出渕監督「シナリオも僕が書いているんですけど、実は最初の段階では、あのセリフは書いていなかったんですよ。でも、やはり第1話において、あのセリフは絶対に必要だと思ったので、コンテの段階で自分で足しました。だったら最初からシナリオに反映しとけ、って話ですが、あの頃はまだ取捨選択に迷いがあったのかもしれませんね。もう3~4年前だからよく憶えてないけど(笑)。あと、第1作のヤマトにはけっこう第2次大戦のパロディ的な要素が入っていたりするんですけど、そのあたりは踏襲してもいいかなと思って残していたりします。それとは逆に、成功していない話、理屈に通っていないところや今やっても面白いと思えないところは、思い切って外していった感じです」

――第1作目の『ヤマト』は、エッチなシーンやギャグテイストの強い部分もありましたが、そのあたりはいかがですか?

出渕監督「ワープシーンはお約束なのでやっていますが、アナライザーのスカートめくりは外しています。これは放送上の都合で、テレビで放送することを考えると、けっこう難しいんですよね。アナライザーに関して言えば、ちょっとアプローチを変えているところもありますし。オリジナルだと、たしか第2話で古代たちについて勝手にヤマトに乗り込むじゃないですか。それで沖田に『何だお前は?』って言われて、『この人のトモダチです』って。さっき会ったばかりなのに。それで、『この船に乗せてください』って言うと、沖田も『うん、よかろう』って……。おかしいでしょ(笑)。佐渡(酒造)にしても、もともと獣医なのに、なぜか普通の医者としてヤマトに乗っている。よくよく観てみると、けっこうおかしいところが多い」

――オリジナルだと、なぜ佐渡がヤマトに乗ったのかがわかりにくいですよね

出渕監督「なので今回は、最初から沖田の主治医で、土方から頼まれて乗っているといったニュアンスにしています。あと、(森)雪にしても、地球では看護士だったのに、ヤマトに乗ったらレーダー手になってますし、それだけではなく、看護士とか生活班長とかいろいろやってたりしている。艦内は3交代制ぐらいにしないと回らない上にその仕事量はあり得ませんよね(笑)。なので雪の役割を分担する、別のキャラクターを作ったりもしています」

――時代に合わせている部分もあるし、矛盾を潰しているところもあるわけですね

出渕監督「ただ、矛盾がすべて悪というわけではないんですよ。矛盾を潰すことでつまらなくなったら意味がない。矛盾を潰すことで、逆にドラマに広がりが出たり、プラスαが生まれてアプローチの仕方が面白くなるんだったら、積極的に潰していこう。そんなスタンスです」

(次ページへ続く)