トヨタ「86」の発売(4月6日)まであと1週間。発表から1カ月で受注台数7,000台を突破し、本格量産も始まるなど、発売に向けて期待は高まるばかりだ。そんな「86」をドライバーがもっと楽しめるように、トヨタは「86スポーツカーカルチャー構想」を打ち出している。この構想については、「86 Opening Gala Party」でも詳しく紹介されていた。
「86 Opening Gala Party」で披露されたトヨタ「86」 |
「86スポーツカーカルチャー構想」とは、「スポーツカーの文化を『86』のメーカーとドライバーがともに育てる」という取り組み。従来のスポーツカー文化は、クルマの作り手と使い手の間に溝がある。メーカーはクルマを作り、売った後は点検や修理など最低限のアフターケアのみ実施した。クルマの楽しみ方はオーナーが独自に開拓していくものだ。「クルマをどこで走らせようか?」「どんなパーツをつけてドレスアップしようか?」、さらに「同じクルマを持つ仲間と語ろう」といった楽しみ方に対して、メーカーは、良く言えば「ご自由にどうぞ」という放任主義、一方で「無関心」と言えなくもなかった。
しかし、トヨタは「86」デビューにあたり、こうした「買った後の楽しみ方」にも積極的に関わっていくと宣言した。ただし、「ああしろ、こうしろ」ではなく、オーナーの楽しみ方を「サポート」して盛り上げようというスタンスを保とうとしている。オーナーの自由な楽しみと、メーカーだからできることを対話させていこうという取り組みだ。
トヨタが提案する「86スポーツカーカルチャー」は7つのカテゴリーで構成され、それぞれ「峠カルチャー」「フォトカルチャー」「サーキットカルチャー」「ネットカルチャー」「カスタマイズカルチャー」「コラボレーションカルチャー」「ショップカルチャー」と名付けられている。
「ネットカルチャー」 : 「86ソサエティ」展開中
すでにほとんどのクルマのオーナーが、ウェブサイトやブログ、掲示板、SNSコミュニティで情報を交換している。「ネットカルチャー」カテゴリーは、こうしたネット文化を活用して作られる。
「86」のオフィシャルサイトは、単なるカタログページではなく、Facebookページと連動したコミュニティ機能を持ち、日本中、いや、世界中の「86」ファンが集う場所として構築された。オーナー同士がつながる「核」となって、カスタマイズテクニックやドライブポイントの情報交換など、「大人のクルマ遊び」を支援するという。
今後の展開として、「CAN-ECU」を開発中だ。「86」の走行データを採取する装置で、バーチャル空間とリアルな走行データを融合させる。たとえば走行データをプレイステーション3のゲームソフト「グランツーリスモ5」に取り込み、CGで走行を再現するというアイデアの実現を目指しているとのこと。早ければ今年夏頃からスタートするという。
「86ソサエティ」は、次の6つのカテゴリーの情報も発信する情報センターとしても機能する。
「峠カルチャー」 : 気持ちよく走れる峠を共有、ラウンジも開設
ドライブの楽しさといえば峠のワインディングロード。「峠カルチャー」カテゴリーでは、「『86』で走りたい峠」をオーナーやスポーツカーファンから募集し、国内で86カ所の峠やドライビングスポットを選ぶ。次の段階として、86の峠を制覇する「リッジクエスト(仮称)」を展開予定。Facebookのチェックイン機能を使ったスタンプラリーのような遊び心のあるイベントになるようだ。
さらに、オーナーが集うリアルな場所として、峠のラウンジ「86 PIT HOUSE」を展開する。詳細は明らかにされていないが、海の家のようなドライブシーズンを満喫できる場所に、くつろいで語り合える場ができるらしい。「86峠セレクション」の募集は春からスタート。夏に86の峠を発表し、「86ソサエティ」などで紹介していく。続いて「86 PIT HOUSE」「リッジクエスト」が順次スタートする予定だ。
「ショップカルチャー」 : 全国283店舗を「86専門ショップ」認定
「クルマを買うところ」「点検・修理するところ」という自動車販売店を「スポーツカー好きの溜まり場・アジト」に。こうしたコンセプトで、全国に「AREA 86」を設置。買う前からも、買ってからも、クルマ好きから満足される対応・サービスを提供するという。
「AREA 86」には、「走り」や「楽しみ方」について、特別な訓練を積んだ「マスタースタッフ」が常駐し、従来はカタログだけだったパーツやグッズを展示して販売する。サーキットやイベントの情報も収集するとのこと。「86」が発売開始する4月6日にオープンする予定だ。
「カスタマイズ カルチャー」 : トヨタ販売店でカスタムパーツを販売
「カローラレビン / スプリンタートレノ」……、伝説の名車・AE86が創り上げた文化のひとつに「カスタマイズ」がある。手頃な価格のFR車だったAE86は、カスタマイズベース車としても人気で、多くのサードパーティからチューン&ドレスアップパーツが発売された。その「カスタムする喜び」を手軽に楽しめるようにサポートする。
トヨタは「86」の開発段階から、パーツショップに情報公開しており、4月6日の発売日には販売店でトヨタ純正カスタムパーツが並ぶほか、TRD、モデリスタのパーツも販売される予定という。
トヨタ「86」の最大の特徴は、カスタマイズを前提としたグレード「RC」の存在だ。パーツの後付け、交換を前提としたグレードで、MTのみ、ホイールは「ド鉄」、バンパーはボディカラーにかかわらずブラックのみ、ヘッドランプ、ステアリングホイール、シートなど、あらゆる部分をできる限り低価格な仕様とした。エアコンすらなく、ヒーターのみ。メーカー希望小売価格は199万円と、他のグレードより50~100万円も安い。
「RC」はまるで、「売るための法的基準だけクリアしました」というグレードだ。「レーシングチーム向けのクルマを市販しますよ」という解釈もできる。「RC」なら、若い人でも、「まずはクルマを手に入れて、あとからコツコツとパーツを買い足していく」という楽しみ方ができるだろう。
「コラボレーションカルチャー」 : 世界に誇るブランドも「86」に結集
服、時計、靴、工具、ミニカーなど、日本が世界に誇るブランド商品と「86」がコラボレートし、さまざまな商品を展開する。「86 Opening Gala Party」では、早くもサンプル商品がショーケースに並べられていた。現在までに参加が発表されているブランドは、「ASICS」(シューズ)、「HARVEST LABEL」(バッグ)、「SPINGLE MOVE」(シューズ)、「ARAYA」(自転車)、「SOMES」(革製品)、「999.9」(メガネフレーム)、「PORTER」(バッグ)、「KTC」(メカニックツール)、「トミカ」(ミニカー)、「EDWIN」(デニム・ジーンズ)、「KYOSHO」(ダイキャストカー・ラジオコントロールカー)、「CITIZEN」(時計)。
これらのコラボレーショングッズが、「86」と同時に販売開始。順次アイテムを増やすという。
「フォトカルチャー」 : 自分では見えない自分の姿を撮影・提供
「86 Opening Gala Party」のトークセッションにて、「86」チーフエンジニアの多田哲哉氏とMCとの間でこんなやり取りがあった。「初めて『86』を見たとき、フェイスの良さはもちろん、ヒップのウイングがかっこいいと思いました。あれ、サイドミラーからかっこ良く見えるように設計したそうですね」とMCが言うと、多田氏は微笑み、「リアフェンダーからリアウイングって、自分が運転しているときは見えないじゃないですか。だからせめてミラー越しにきれいに見えるようにしようと思ったんです」と話した。
スポーツカーファンの最大の不満は、「乗っている間はクルマを見られない」だ。
自分好みに創り上げた「86」で、あこがれの道を走り抜ける。ドライバーにとって至福の時間だ。しかし、その最も幸福な瞬間をドライバー自身は見ることができない……。「フォトカルチャー」はその希望をかなえようというプロジェクトであり、「走り映え」するポイントに撮影システムを設置し、ドライバーが「86」で駆け抜ける様子を美しく撮影し、提供するというサービスだ。
このプロジェクトは「86 SHOOTING CURVE」と名付けられ、機材やサービス内容を開発中とのこと。夏には利用できるようになるという。
「サーキットカルチャー」 : スポーツカーライフの本丸へ攻め込む
スポーツカーを手にしたら、いつかはサーキットを走ってみたい。ドライビングテクニックを学びたい。そんな「86」オーナーの夢をかなえるプロジェクトも用意される。
2013年からスクールプログラムがスタート。サーキット体験を通じて走る楽しさを深めつつ、安全走行、運転マナーを広めていくという。2013年夏には「86ワンメイクレース」を開催。ナンバー付き車両で気軽に楽しめるレース体験を用意する。
以上が、トヨタが「86」オーナーに用意する「スポーツカーカルチャー」のロードマップだ。
デモンストレーション走行で86の実力を垣間見る
ところで、「86 Opening Gala Party」にはWEBサイトで応募したファン86名も招待されていた。同イベントでは、招待者たちにさらなるプレゼントも。それは、レーシングドライバーのデモ走行に同乗体験できる機会だった。会場となった千葉・幕張メッセの駐車場にデモ走行エリアを設置。加速、減速、S字ドリフト、回転などが行われ、ファンを喜ばせた。
関連サイト
toyota.jp 86
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