2011年10月26日、秋晴れの空の下、NH7871便(787型機の第1便の意)は定刻の12時20分にドアをクローズし、成田空港を出発した。前編ではスムーズな離陸やすばらしい加速力について説明した。後編では気圧についてのお話や着陸の様子をお届けしよう。
気圧高く、アルコールの回り遅い!?
787が窓を拡大できたのも複合材料を使うことで機体の強度が増したからだが、複合材料は機内の気圧を高くする効果ももたらした。巡航高度1万m前後の高度を飛ぶ旅客機の客室気圧は、地上でいえば約2,400m。富士山だと5合目あたりに相当するが、787では3合目、つまり1,800mまで低下させた。説明すると長くなるが、簡単にいえば機体に圧力をかけて気圧を上げるしくみで、複合材を使っているため、それが可能になったのだ。
気圧が高くなったのなら、ワインを風味や機内食の味が従来機より分かるのではないか、と考えた。気圧が低いとそれだけ味覚が鈍るからなのだが、結果はというと、正直にいうとよくわからなかった。何度か試さないと実感できないのかもしれない。
ただ、アルコールの回りは少しだが遅かった気がする。CAによると、今回のフライトにはアルコール飲料を普段の1.5倍も積んだそうだが、すべてなくなった。理由は、乗客240人のうち取材陣が約80人乗っており、彼らが酒飲みだとも考えられるが(笑)、実感として回りがいつもより緩やかだったように思う。気圧が低い(高度が高い)とアルコールの回りが早く、従来機のように高度1万m前後だと地上の3倍も早いと言われる。787は機内の気圧が高くなった分、アルコールの回りが遅い(余分に飲める? )のではないか、というわけだ。
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787初便の機内食。いたって普通だが、人気のデザート「とろけるカスタードプリン」もあった。トレーには食器が滑らない工夫もされていて、サービスの細やかさを感じる |
特製のクッキーも用意されていた。下に敷いてあるのはこのチャーター便用のメニュー |
耳詰まりなく、揺れも静かで快適着陸
目的地の香港国際空港が近づくと、機体は着陸の準備を始め、高度を下げていった。実はここで、酒の回りなどではなく機内の気圧を高く保つ787の真のメリットを実感した。
耳詰まりがなく、いつもは3回ほどする耳抜きを着陸まで一度もせずに済んだのだ。もっとも、帰国便では一度だけ耳抜きをしたし、飛行高度や降下速度も関係するはずだが、いずれにせよ、今までにない快適な降下の時を過ごしたのは事実だ。
ただ、「機内の湿度や気圧を高めた効果を強く実感できるのは長距離路線」だとあるCAが言っていた。来年1月に就航予定の長距離線、羽田 - フランクフルト線に早く乗ってそれを実感してみたいものである。
最後に、着陸前に雲の中を飛行して機体が揺れたが、この時も今までとはまったく違った経験をした。一言でいえば、揺れがソフトだったのだ。787は高度に電子化された揺れを抑える機能が備わっているが、それを間違いなく実感できたのだ。
ほどなく、NH7871便は香港国際空港に到着し、約4時間半の初営業フライトは無事に終了した。
取材協力: ANA