面白いブログの特徴とは
――第2回でお聞きした「四部構成」のように、ブログを書く際に使える「型」はありますか?
「起承転結」をブログ用にアレンジした型があります。
ブログは決まった形式がなく、自由に書けることが魅力です。しかしあまりに乱雑だと読者の理解を妨げてしまうので、この型を参考に書いてみてはどうでしょうか。
【ブログの型】
(1)予告
これから書こうとすることの「きっかけ」や「予告」をして読者を注目させる。ただしあまり長く書きすぎないこと。全体の5分の1ぐらいがよい。
(2)エピソード
自分が体験したできごとを語る部分。具体的で動きがある描写をすること。全体の3分の1程度の分量。
(3)テーマ
(2)のエピソードから得た印象や鋭い考察を書く。これも全体の3分の1が目安。
(4)まとめ
全体をまとめる。可能であれば余韻を持たせる締めの言葉を書く。
――自分のブログをより多くの人に読んでもらうためにはどうすればいいでしょうか?
面白いブログとは「思いがけない発想や視点」があり、読者の「感情移入」を誘うものです。この二つを心がければより多くの読者を獲得できると思います。
そこで重要になってくるのが(2)のエピソードです。
「具体的で動きがある描写」というとあまりピンと来ないかもしれませんが、これは「読者のイメージを喚起するような描写」のことです。そこで効果的なのが「色が付いた小さなもの」を書くという方法です。
単純に「散歩の途中で花を見た」と書くのではなく、「赤い小さな花が歩道の片隅に咲いていた」「自分の足元に赤い花が落ちていることに気付いた」など、読者が情景を思い浮かべやすいように書くのがコツです。
――具体的な描写は文章を映像化してくれますね
「色が付いた小さなもの」を描写すると、文章全体にリアリティが感じられるのです。ただしあまり欲張るとうるさくなってしまうので、一つに絞って書きましょう。
「色が付いた小さなもの」の描写は広告にも効果があるようです。以前ショッピングサイトを運営している人と話をしたのですが、商品やサービスも色がついた具体的な描写を交えて紹介すると反応があると聞きました。商品を購入したときの具体的なイメージがつかめると、消費者の購買意欲がわくのだと思います。
物事は必ず「対立」する
――(3)テーマの部分で「(2)のエピソードから得た印象や鋭い考察を書く」とありますが、読者をうならせるような鋭い文章を書く方法はありますか?
「人と反対のことを書く」というテクニックがあります。例えばみんながつまらないと評した映画を「よかった」と言ってみたり、世間でよしとされていることに異を唱えたりするなどして、新たな視点を提供するのです。これは「対立軸」で考えるという手法です。 「きれい」の反対は「汚い」、「明るい」の反対は「暗い」のように、物事には必ず対立する要素があります。そのため普段から「これに対立するものはないか?」と考えるくせをつければ、鋭い文章が書けるようになります。「対立軸思考」は世間や自分の固定観念から解き放ってくれるのです。
――樋口さんもブログを開設していらっしゃいますが、記事を書くときに意識していることはありますか?
私はブログにクラシックコンサート評を書くことが多いのですが、そのときも自分の印象に残ったことを一つ、具体的に書くようにしています。素晴らしい演奏に感動したという感想はもちろん、「演奏中に思いがけないアクシデントがあった」「心ない観客のふるまいで台無しになった」など、同じ会場に居合わせた人たちと共有したできごとを書くと閲覧・コメント数が増えるようです。
――ある程度「自分のブログを読む人」のイメージを固めておいたほうがいいのでしょうか?
私自身は主にクラシック音楽に興味を持っている人たちに向けて記事を書いています。実際コンサートについて書くとアクセス数が伸びますし、演奏家の名前を検索しているうちに私のブログにたどりついた人も多いです。ある程度読者像を想定したほうが書き手もサービスしやすいのではないでしょうか。私もブログを始めたばかりのころは手探りでいろいろなことを書いていましたが、今は音楽中心に落ち着きました。
ブログは不特定多数に向けて発信するもののようですが、私は「読者との対話」こそがブログの特質だと思います。
そのためにはどんな人が自分のブログを読み、何をよろこぶのかを知っておかなければなりません。そういう意味では、ブログも受験小論文も同じだと言えるでしょう。そもそもすべての人に好かれるブログなど存在しません。あたりさわりのないことを書くよりは、ターゲットを絞って読者と密度の濃い関係をつくったほうが、アクセス数が増えるのではないでしょうか。
――ほかにブログを書くときに気をつけていることはありますか?
ブログを書く時間は30分と決め、必ず時間内に切り上げるようにしています。ブログに大それた結論は必要ありませんし、書くこと自体が楽しめないと継続できないので、あまり考えすぎないことも大事だと思います。
自分の意見を発表する場を持つと、「今日はどんなことを書こうか」と考えるようになり、思考力もついてきます。仮に炎上しても記事を消去すればいいのですから(笑)みなさんも楽しみながら続けてほしいと思います。
INTERVIEWER PROFILE : 早川洋平 / KIQTAS(キクタス)
元中国新聞記者。2008年に始めたネットラジオ番組「人生を変える 一冊」をきっかけに起業。 現在は、企業や教育機関、公共機関などに音声(ポッドキャスト)を活用したサービスを提供している。インタビュアーとしても精力的に活動、渡邉美樹さん、茂木健一郎さんらこれまでにインタビューした人物は1,000人を超える