社会的弱者のための支援活動を行っているNPO法人「Ubdobe(ウブドベ)」は11月15日、がん医療をテーマにしたトークイベント「Ubdobe Monday Talk Session」を、東京都渋谷区で開催した。イベントでは、ミュージシャンで乳がんサバイバー(※)のSaori.K氏らが、「がんとお金」をテーマに語り合った。
※ サバイバーとは、直訳すると「生還者」の意。「がんサバイバー」は、がんと闘病している人、がんで亡くなった人をさし、広義には、がん闘病者の家族をさす事もある
Ubdobeは、2010年11月1日にNPO法人化。今回の「Ubdobe Monday Talk Session」は、NPO法人になって初めてのイベントとなる。冒頭では、Ubdobe代表の岡勇樹氏が、「仕事帰りに表参道のバーで飲みつつがんについて語っていこうじゃないかというイベントです」と説明。その上で、岡氏が、Ubdobeの活動を行うに至った経緯を話した。
岡氏、母親の死について「がんについて知らないから何もできなかった」
岡氏は、21歳の時に母親を胃がんで亡くした。その当時大学生だった岡氏は、大学にはあまり行かずにDJバーの仕事をして夜の生活にはまっていたという。ある日の朝帰宅した岡氏は、食卓の上に一枚の手紙が置いてあるのを発見。その手紙には、「体調が悪いので入院します」と書いてあった。それを読んですぐに病院に飛んでいったが、母親はものすごくやせていて、岡氏は、「何でこんなにやせているのに今まで気づかなかったんだろう」と思ったという。それから半年後、岡氏の母親は亡くなった。
母親が亡くなった後の岡氏は、毎日毎日母親が頭の中に出てくる日々を送りながら、なぜ母親ががんになっても何もできなかったのだろうと自問し続け、その結果、「がんについて知らないから、何もできなかったんだ」と気づいたという。岡氏は、「僕みたいながんについて何も考えていない若い人たちは多分ものすごくいっぱいいて、そういう人たちが自分の肉親をがんで亡くした時、必ず僕が持っているような悔しさや悲しさを味わってしまうんじゃないか」という思いから、「SOCiAl Funk!」という、がんを知るためのクラブイベントを今年4月以降開催するようになったと話した。
岡氏は、今回のようなイベントを今後も隔月のペースで開いていきたいと話し、イベントでは、参加者がただ聞くだけというより、質疑応答の時間を多くとった参加型のものにしたいとの抱負を述べた。また、岡氏は参加者に、「統計上、日本人の何人に一人ががんに罹ると思いますか?」と質問。正解は「二人に一人」。岡氏は、「がんはものすごく身近な病気です」と述べた上で、「飲んで騒いでがんを知るっていう変わったイベントですけど、楽しくがんを知っていきたい」と呼びかけた。
Saori.K氏、がん治療の初期段階でも「相当額のお金がかかる」
岡氏の話の後、「がんとお金」をテーマに、トークセッションの第1部が行われた。第1部では、岡氏を司会に、ミュージシャンで乳がんサバイバーのSaori.K氏と、ネクスティア生命 商品企画部長の野口俊哉氏が登壇。Saori氏は、2008年2月に乳がんが見つかり、同年4月に左胸の全摘出手術を受けた。その後、抗がん剤治療、ホルモン治療を行ってきた。
Saori氏は、「がんとお金」について、「一番最初に行った病院の検査の時点で、いっぱいお金がかかります。私の場合は、悪性のしこりが分かる前は、看護師さんに『あなたの年齢じゃ乳がんなんてなるわけないんだから、安いほうでいいよ。先生の健診と超音波(エコー)だけのコースのほうが安いからそっちの方がいいじゃない』と言われた」と説明。だが、実際エコーをとってみたところ、「すぐ見つかったんです。そしたら、先生がぞろぞろ来て、(がん)保険がきくのでマンモグラフィーをやってくださいと言われました。その後、MRIやったり、ペットやったり、入院のベッド代、全てですよね、何十万とかかります」と、初期段階でも、がん保険に入っていない場合、相当額のお金がかかると話した。