アジア時間概況

欧州債務問題が再び為替市場を直撃。

ユーロが対ドルで1.32を割り込んだ影響がクロス円へも波及し、円相場では再び円高懸念が台頭している。ドル円も米30年債入札が堅調だったことから米金利に低下圧力が強まっていることを受け売り優勢の展開となった。83.80レベルで上値が抑えられる状況からリスク回避の円買いも交錯している可能性もあり、上値の重い状況が続いたまま欧州タイムを迎えようとしている。

そして円高トレンドは、日本225種の上値を圧迫する展開を誘発。また、高値警戒感の中SQ算出に関連した買いの利益確定売り、中国の金融引締め観測も意識され先物で利益確定売り優勢の展開となった。これを受け10250をレジスタンスに上値の重い状況が続いている。

本日の主要経済指標

・18:30 イギリス : 11月生産者物価指数

・22:30 アメリカ : 11月輸出入物

・22:30 アメリカ : 10月貿易収支

・23:55 アメリカ : 12月ミシガン大消費者信頼感指数 速報値

・04:00 アメリカ : 11月財政収支

要人講演等

・01:15 トリシェECB総裁  セミナーに出席(マドリード)

・N/A 独仏首脳会談

欧州タイムの見通し

中国当局が発表した11月の貿易統計は、輸入、輸出とも予想を大幅に上回る伸びを示した。この結果を受け、市場では中国当局が出口戦略を本格化させるとの思惑が更に強まっている。11日に発表される中国消費者物価指数(CPI)等一連の経済指標への警戒感もあり、様子見を決め込む投資家が多く出そうだ。

また、一時下火になりつつあった欧州債務問題に再び火が付き始めたことも、投資家のリスク選好姿勢を後退させる可能性がある。

格付け会社フィッチ・レーティングスが、アイルランドの信用格付けを一気に3段階引き下げたことに加え、欧州中央銀行(ECB)が9日発表した金融安定報告書では、ユーロ圏の一部の銀行で資金調達が困難と指摘。ユーロ圏で資金の需給ひっ迫懸念が台頭すれば、ECBへの信用問題に発展し、その結果アイランドやポルトガルの背後にいるスペインへ波及するのでは、と懸念する声も市場で聞かれる。市場がスペインへの伝染リスクに神経質になっているのは、域内4番目の経済規模を誇るスペイン債務危機は、ギリシャ、アイルランド、ポルトガル全部を合わせた規模よりもはるかに大きなインパクトがあると考えられているからだ。本日の欧州債券市場でこの問題を嫌気しドイツ債との債券利回りが拡大すれば、リスク回避の動きから金融セクターやユーロでの売り圧力が強まる可能性が高くなるだろう。

米国でも金利動向が引き続き市場の関心を集めそうだ。

オバマ大統領が2年間の減税延長措置を表明したことで、財政赤字懸念から米金利への上昇圧力が強まり易い状況が生まれている。これは米債へのリスクプレミアムを意識した悪い金利の上昇と言える。しかしその一方で、上述した中国の貿易統計で輸入が市場予想の24.2%を大きく上回る37.7%(前年比)を記録しことから、米景気回復にもポジティブに影響し、結果米金利を上昇させるシナリオがにわかに浮上している点にも注目。今日のアジア時間では米30年債の入札を受け金利低下圧力が強まりドルは軟調な地合いとなっているとは言え、今晩の米経済指標の結果が市場予想を上回る内容となれば、将来の米景気回復を見込んだ金利への上昇圧力が強まり易い環境になっている。そのため、金利低下圧力が後退すれば再びドル買いの地合いを強めることになろう。

ただ、週末にイベントを控えており、過度な値動きとなる可能性は低いか。ひとまずユーロドルは1.3200がサポートラインとして、ドル円では84.00がレジスタンスラインとして意識された展開となるのではないか。

一方、米株でも米SPX500種では2年ぶりの高値水準まで上昇する等高値警戒感もあることから、仮に米経済指標の結果が良くても新たなリスクポジションを構築するタイミングではない。欧州債務問題が波及すれば銀行株で利益確定売りが出ることも想定され、こちらも過度のリスクテイクは限られる可能性がある。

ユーロドル 日足

ウォール街株価指数 日足