昨日の欧米市場
欧州中央銀行(ECB)によるポルトガルやアイルランド国債購入の噂からユーロが底堅く推移していたところに、市場の注目を集めた11月の米雇用統計(非農業部門雇用者数数値など)が市場予想を大きく下回り、失業率も9.8%へ悪化したことが伝わった。これを受け為替市場はユーロ買い、ドル売りトレンドが鮮明に。対ユーロでは約7%近く下落した前月から一転し、1.34ミドルレベルまで上昇する展開へ。ドル円も83.00を下抜けるとドル売りが加速し、82円ミドルレベルまで下落し取引を終了した。
バーナンキFRB議長が、11月30日のCBSとのインタビューで6000億ドルを超える国債購入に含みを持たせたことも、ドル売り要因として指摘されていた。
一方、株式市場では米雇用統計の冴えない内容が、連邦準備理事会(FRB)による6000億ドル超の金融緩和策への期待感を市場で台頭させ、結果、相場を下支えした。ただ、週末ということもあり投資家のリスク選好姿勢は若干後退気味。リスクに左右されやすい銀行株やエネルギー株で利益確定売り優勢の展開となったことから、欧米株式共に上昇幅は限られた。
本日の主要経済指標
・09:30 豪 : 11月ANZ求人広告件数
・22:30 カナダ : 10月住宅建設許可
・24:00 カナダ : 11月Ivey購買部協会指数
要人発言
・09:00 米国 : バーナンキFRB議長、CBSの報道番組「60ミニッツ」に出演
・27:00 米国 : ラッカー・リッチモンド連銀総裁、講演
・その他 ユーロ圏財務相会合
アジア時間の見通し
週明けの日本225種は、狭いレンジでの一日となる可能性がある。
米株次第という側面に焦点を当てるなら、目先10100円をサポートに10300をトライする流れは続きそうだ。先週末発表された11月の非農業部門雇用者数変化は市場予想を大きく下回るプラス3.9万人、失業率は9.8%へ上昇と冴えない内容だったことを受け、市場では米連邦準備制度理事会(FRB)が6000億ドルを越える国債購入を実施するとの観測がかえって強まっているためだ。
ただ、それにより今後米金利への低下圧力が強まる可能性も市場では指摘され始めている。実際、先週末の為替市場では敏感にそのことを先取りし、対主要国通貨で軒並みドル売りの展開となった。週明けのドル円は82.50レベルでなんとか下支えされているものの、82.00を割る展開となれば日本225種への影響は避けられないか。
また、中国の金融政策の動向も焦点となりそうだ。中国共産党は3日、国内のインフレを抑制するため2008年秋以降、景気回復のため実施していた市場への資金供給策を終了させ、引締めへと転換を図る『出口戦略』の方針を打ち出した。同国消費者物価指数は10月に約2年ぶりとなる高い伸び率(前年同月比4.4%上昇)を示しただけでなく、11月も前年同月よりも上昇することが確実されており、通年目標の3%を上回る状況が続くとなれば中国当局の行動は理にかなったものだろう。
ただ、アジア新興国では過剰な資金流入を規制するため動きが強まっており、このタイミングで中国が引締め政策へ転換することは、リスクマネーがアジア市場から流出するきっかけとなるだけでなく、人民元の代替通貨として円が買われ易い地合いになる可能性もある。円高圧力にアジア株、特に中国株式が軟調な地合いとなれば、過剰流動性相場と相殺するかたちで上値も限られる可能性は否定できないだろう。
注目の為替市場だが、欧州に目を向ければ、依然ソブリンリスク懸念は燻るものの、欧州中央銀行(ECB)が周辺国への伝染リスクを抑えるため、ポルトガルやアイルランドの国債を買い支えているとの観測が市場で材料視される限りは、域内4番目の経済規模を持つスペイン債務危機が市場で材料視される可能性は今のとこを低い。実際、先週末の欧州債券市場ではポルトガルとドイツ国債の利回り格差は今月に入りつけたユーロ導入後の最高水準480ベーシスポイント(bp)から8月下旬以来の低水準323bpまで縮小し、ひとまずリスクが後退しつつある。
そこにFRBによる国債購入額が6000億ドルを上回る観測が台頭すれば、米短期金利低下圧力につながり、結果ドルは売られ易い地合いとなろう。
まずは、ユーロドルの動きには注視したい。
1.32ミドルレベルに観測されていたストップをヒットし、1.34ミドルレベルまで上昇するもその後は上値が重くなっている。11月下旬よりこのレベルがレジスタンスポイントとして意識されている現状を考えるなら、まずはこの水準を突破するかが今日のポイントになろう。堅調な商品相場を背景に買い圧力が強まり、シカゴIMM市場での買い越し額が減少した豪ドルでも強気の地合いとなりつつあることを考えれば、1.34ミドルレベルを上抜ける可能性は高いか。仮にそのような展開となれば、その影響はドル円にも波及しよう。
現状、82.50レベルが意識されているが、82円前半にはストップも観測されており、ユーロドルの状況次第では11月12日以来の82.00割れの可能性も出てくるだろう。逆にクロス円は底堅い展開になるか注目される。特にユーロ円はラウンドボトム形成後ボックスレンジへ入った可能性もあり、110円台を維持できるようならその影響は他のクロス円にも波及する可能性がある。