国産時計の新作発表会に展示されていた注目モデルを紹介する本レポート。第2回目は、シチズンの新モデルに迫る!

シチズンの夢を形にした未来の腕時計

電池交換不要な光発電機構「エコ・ドライブ」を主軸にした独自の展開を見せる、シチズン。2009年からは、スイスのバーゼルフェアで「エコ・ドライブ」をテーマにしたコンセプトウオッチを発表。今回の秋冬モデルの目玉のひとつとなったのは、2010年のコンセプトウオッチを商品化した「エコ・ドライブ ドーム」のエクステンション仕様だ。ケースの側面を覆った外胴プロテクターが、圧倒的なインパクトを与えるとともに、フューチャリスティックな印象も加えている。

この外胴プロテクターの素材は、実はカーボンファイバーだ。F1マシンのボディなどに使われる軽量かつ強靭なハイテクマテリアルで、その独特な縞模様や質感から、近年ではさまざまなプロダクトに使われている。もはや目新しい素材とはいえないカーボンファイバーなのだが、シチズンではこの素材をあえてカットして、高温で溶かし、そして再び成型するという焼成工程を経ることで、カーボン繊維がランダムに組み込まれた、非常に複雑な面持ちに仕上げている。当然、個体ごとに微妙に模様が異なるために、ひとつとして同じデザインは存在しない。唯一無二の個性派ウオッチなのだ。

クリーンエネルギーを身につける

もちろんカーボンファイバーが主素材なのだから、軽量で着け心地はバツグン。ケースは"大地"を思わすようなブラックにコーティングされたチタンケースで、そこにクリーンなイメージのホワイトウレタンバンドを採用。さらに、"空気や水・海"を表現したというダイヤルにあしらわれたブルーの色味が、さわやかな印象を与えてくれる。3枚の透明な板を重ねて立体感を出した文字板と、それを覆うドーム状の風防ガラス。それらを外胴プロテクターが外側からカバーすることで、さしずめ光を包み込むような3Dデザインが展開されているのだ。

カーボンケース採用の「エコ・ドライブ ドーム」

まさしく光発電「エコ・ドライブ」の"クリーンエネルギーを身に着ける"というイメージが全身で表現されたドリームウオッチ。リューズを操作して4時位置の都市ディスクを切り替えるだけで、各都市の時刻・カレンダーがすばやく変更される「ダイレクトフライト機能」も備わり、デザインだけでなくユーザビリティも高めている。

機能はますます多機能に、でも操作はシンプルに

ワールドタイム機能を搭載した光発電エコ・ドライブ電波時計「ATTESA」(ATD53-3091)

一方で、「アテッサ」からはシンプルな3針式の新作が発表された。現在、電波時計市場においては、世界多局受信のワールドタイム時計が大きなトレンドとなっている。しかし、多機能ゆえに操作が複雑になっているのも実情で、近年のシチズンはこれを打破しようと、シンプルな操作性をテーマに掲げた開発に意欲を示す。前述のエコ・ドライブ ドームに搭載されたダイレクトフライト機能もその一端ではあるが、今回のアテッサの新作には、さらに洗練された機能が備えられた。

すなわち、リューズで秒針を操作してベゼル上の都市名を指し示すだけで、各都市の時刻とカレンダーの切り替えが可能。腕時計の基本をおさえた操作方法のために、ユーザーは直感的にワールドタイムを使いこなすことができるというのだ。シンプルな3針時計のために時間も読み取りやすいし、厚さを9.27mmにおさえているためスーツの袖元に似合うクールなスタイリングも獲得している。ビジネス時計として重宝すること間違いなしの1本なのだ。

秋冬のトレンドをおさえた展開

インディペンデントの新作。コクピットの計器を分解し組立てたようなデザインとなっているデュアルタイムモデル「ITJ21-5234」

今季注目のファッションといえば、「ミリタリー」がひとつのテーマだが、国産時計メーカーのなかでも、ひときわファッション感度の高いシチズンが、このトレンドを見逃すはずがない。すでに今春からモード感あふれるファッションウオッチの「インディペンデント」に、ミリタリーライクな新作が登場しているが、秋冬モデルでもこの路線を強化。今回は「フライト用ゴーグル」「コクピットの計器」などをモチーフにした新作を揃える。フライトゴーグルモデルでは、エッジを利かせたケースの造形や、ステップ付きの風防のデザインなど、力強く無骨なスタイリングが魅力。ヴィンテージ風に仕立てた革バンドも特徴のひとつで、フライトジャケットを羽織るようなワイルドなコーディネイトにも似合いそう。まさしく秋冬のカジュアルな装いに最適なモデルだ。

ファッショントレンドを反映させた「クロスシー」の新作「XCB38-9201」

また、レディスモデルにもシチズンらしい「技術と美の融合」をもとにしたファッションウオッチが「クロスシー」から登場している。"凛とした華やかさを持つ女性"をイメージしたデザインで、クラシックな香り漂うスクエアケースに、レッドやネイビーといったトレンドカラーを配置。ケースは小振りでも、搭載されるムーブメントはエコ・ドライブや電波受信機能を装備した本格派で、ファッションと機能の両方を楽しみたい女性にぴったりといえる。

さらに、会場ではシチズン独自の「両面無反射コーティング技術」についての説明もあった。時計の表面をカバーする風防ガラスは、光があたるとギラついて文字盤が読みにくいことがある。この光の反射を防ぐためのコーティングの技術において、シチズンは他を抜きん出ている。通常、無反射コーティングはガラスの表面にコーティングした場合、被膜にキズがつきやすいという欠点があるため、ガラスの裏面に施されるものだ。

両面無反射コーティング技術の説明コーナー

右半分に両面無反射コーティング処理をほどこしている

しかし、シチズンでは耐傷性を高めたコーティングを表面にも施すことで、両面から光の反射をカット。しかも、通常よりも透過率の高いマルチコーティングを採用することで、光の反射をわずか3%ほどにおさえているという。そのため、あたかもそこにガラスがないような透明感が得られるというのだ。もちろん、すべてのシチズン製品に両面無反射コーティングが施されているわけではないが、同社の技術力の高さを物語るエピソードとして記憶にとどめておきたい。