「東武野田線は醤油を運ぶために作られた」「東武野田線の地下には醤油が流れている」。なにやら本誌連載企画「鉄道トリビア」のような見出しだが、こちらの情報はすべて事実。こんなトリビア情報から、製造方法といった真面目知識まで、身近だけれど意外と知らない醤油について無料で学べるのが千葉県野田市にある「キッコーマン もの知りしょうゆ館」だ。

キッコーマン工場の敷地内にある「キッコーマン もの知りしょうゆ館」

江戸時代から工場見学をしていた!?

東武野田線の野田市駅を降りると、醤油の香りが。そして前方には工場らしき建物がそびえ立つ。この敷地内に今回紹介の「キッコーマン もの知りしょうゆ館」がある。ガイド付きの見学は予約が必要で、所要時間は約1時間。1時間おきに実施され、1日6回行なわれている。もちろん、ガイドなしの見学も可能。いまの形になったのは19年ほど前のことだが、江戸時代より工場見学を受け付けていたといわれ、江戸の人たちに好評だったとのこと。

東武野田線野田市駅を降りるとキッコーマンの工場が見える

工場内の様子

まずは、15分のビデオ映像で学習し、その後見学コースへ。醤油づくりには約10カ月の時間を要するが、その工程を順に追うことができる。工程は大きく4つに分かれており、最初が原材料を混ぜ合わせた麹づくり、次が仕込み、熟成、仕上げである。

醤油の主な原材料は、大豆と小麦、食塩。大豆は、駅からも見えた大きな「サイロ」に入っている。1本に計300tが入っていて、大豆の量は粒の数でいうと中国の人口と同じぐらいになるとか。なんとそのサイロ、1本ではなく12本もあるというのだから驚きだ。

醤油づくりでは、まず、蒸した大豆と炒って砕いた小麦、麹菌を混ぜ合わせて、3日間かけけて醤油麹をつくる。この工場で使う麹菌は、長年育ててきた「キッコーマン菌」。醤油麹に食塩水を加えてもろみをつくり、約6カ月間寝かせていく。この間にもろみが発酵、熟成して、醤油のベースが完成するのだ。「もの知りしょうゆ館」では、このもろみが熟成していく様子を実際に見て香りをかぐことができる

発酵初期のもろみは、見た目も香りもこの段階で既に味噌のよう。色みはやや淡い色。発酵後期(2~3カ月経ったもの)は、色が濃く、より香りが強い