今年8月に、FX(外国為替証拠金取引)の規制が大幅に強化される。レバレッジを50倍までに制限することが主眼で、現在100社以上もあるというFX会社は淘汰されて半減してしまうとも言われている。FXが流行したのは、その高いレバレッジ率にあった。少ない証拠金でも大きな取引が行え、こづかい程度の資金でまとまった額を稼ぐ人が現れた。

主婦やサラリーマンといった、今までは投資に縁のなかった人たちまで、投資の世界に引き入れる原動力となっていたのだ。ところが、レバレッジ率が高いということは、負けたときも大きな額になるということ。軽い気持ちで始めたFXで、生活設計を壊してしまう人も出ているということから、レバレッジ率の上限を抑えるべきだという話になったのだ。

藤井浩氏

そんな厳しい冬の時代に、サイバーエージェントFXは、『C-NEX』という新しいFXのサービスを発表した。しかも、従来のシステムを少し変更したなどというものではなく、まったく新しいシステムで、「世界最高水準のFX、ついに日本上陸」をうたう本格的なものだ。なぜ、この時機に本格FXサービスなのだろうか。そして、その魅力はどこにあるのだろうか。C-NEXチーム藤井浩氏にお話をうかがった。

C-NEXの最大の特長は、ドル・円のスプレッドが0.2銭から0.8銭と極めて狭いということだ。FXは海外の通貨を買ったり売ったりして利益を得るのが基本。通貨を扱うのは銀行なのだから、FXで取引をすれば、どこかの銀行から通貨を買う、あるいは銀行に売るということをしなくてはならない。海外旅行に行くと気がつくが、どの銀行でも、通貨の買値と売値は為替レートそのままではない。売値は少し高く設定されていて、この買値と売値の差額がスプレッド。銀行も一般の商売と同じように「安く仕入れて、高く売る」ということをしている。このスプレッドが銀行の収入になるわけだ。

では、FX取引のサービスをしている会社はどうやって利益を得ているのか。このスプレッドから得られる利益を銀行と分けあうことで、FX会社も利益を得ている。つまり、スプレッドというのは銀行とFX会社の手数料のようなものなのだ。しかし、投資家からすれば、スプレッドは少なければ少ないほどいい。だれもがスプレッドの小さなFXサービスを利用したくなるのだ。

ではC-NEXは、なぜスプレッドをこんなに狭くできるのか。「銀行から配信されるレートを集約するCURRENEXプラットフォームにお客様がアクセスできるからです。(DMA:ダイレクト・マーケット・アクセス) 」(藤井)。一般的なFX取引の仕組みは割りと単純だ。銀行が「海外通貨」という商品をFX会社に卸し、それを取引する消費者が購入する。消費者が「海外通貨」を売るときは、FX会社に売り、それを銀行が引き取ってくれる。一般的な、問屋・小売り・消費者という構図になっている。

一方でC-NEXは、本来銀行同士が取引しているシステムがベースになっている。銀行同士が通貨を融通しあうための市場が存在するのだ。もちろん、ここでもスプレッドは存在するが、プロ同士の取引であり、なおかつ1回の取引量が大量なので、スプレッドは非常に狭く抑えられている。ここに、一般の投資家も参加できるようにしたのがC-NEXなのだ。こちらは問屋・小売り・消費者という関係ではなく、消費者が直接、築地卸売り市場の場内市場にマグロを買いにいくようなものだ。

もちろん、そこには消費者だけでなくプロも買いつけにやってくる。「BtoBでの取引環境を、一般のお客様にも提供できるようになった。それがC-NEXです。 取引している銀行の数も11行と多いので、そのときそのときでもっとも有利なスプレッドのものを調達できる。ですから、スプレッドを低く抑えられるのです。わかりやすく言えば、銀行がFX会社に卸している卸売価格で、一般の方が利用できるようになったということです」(藤井)。

「C-NEX(シーネックス)」B2B サービス概念図

「元々がプロ向けのツールでしたから、そのクオリティをそのままお届けしたいと考えています」(藤井)。このC-NEXに建玉制限はない。マーケットにあればあるだけ取引ができるようになっている。

C-NEXは、CURRENEX Classicをベースに開発された。国際市場ではプロ向けとして非常に定評があり、信頼されているプラットフォームで、FXで大きな取引をしようと考える個人投資家の間では、以前から「日本でもCURRENEX Classicが使えたらなあ」と待ち望まれていた。それに応えたのがC-NEXだ。「FXに精通されている方でしたら、日本でもCURRENEX Classicが使えるようになったのかと喜んでいただけると思います」(藤井)。いわば、今までは日本人だけでサッカーリーグを作っていたら、そこに本場ブラジルやイタリアから選手が参入してきたような具合だ。

C-NEXはCURRENEX Classicをプラットフォームに採用

C-NEXは今年4月にスタートして、稼働率は非常にいいという。こういう特殊なツールなので、プロモーションも大がかりなものではなく、口コミをメインに、その他メディア広告を展開していきたいという。「一定のレベルの投資家の方々は、横のつながりが強くて、いつも情報交換をしています。その口コミの中でC-NEXの存在が知られるようになっていただきたいと考えています」(藤井)。また、デモも用意しており、想定以上の反応があったという。

8月のFX規制を前に、「これで日本のFXも終わる」などと無責任なことを言う人がいるが、実態はまったく逆のようだ。C-NEXのような本物のツールが登場して、むしろFX投資環境としては進化していきそうだ。単なる手数料の値下げ競争だけではなく、こういった品質の競争が始まるのかもしれない。