奇想天外な機械を次々と展開している明和電機が、27日より、東京・渋谷の西武渋谷店 美術画廊にて"機械は人間のように歌を歌うか?"をテーマに開発した作品を展示した『「明和電機ボイス計画宣言」展』を開催。笑う機械『WAHHA GO GO(ワッハゴーゴー)』などの機械および開発スケッチ等を公開している。

明和電機 代表取締役社長・土佐信道氏と笑う機械『ワッハゴーゴー』。土佐社長が手に持っているのは、2009年に発売された電子楽器オモチャ『オタマトーン』

明和電機(以降、同社)は、土佐信道が"代表取締役社長"を務める、中小電機メーカーを模したスタイルで活動している芸術ユニット。これまでに、魚骨をモチーフとした電気コード『魚コード』等、"ナンセンス"な機械を数多く制作しており、最近では、音符型の電子楽器オモチャ『オタマトーン』が製品化・販売されている。

同展では、胎児をモチーフとした腹話術人形『サバオ』や、人工声帯によって歌うロボット『セーモンズ』、笑う機械『ワッハゴーゴー』等、同社歴代の"声"に関わる作品や、その開発過程で生まれたオモチャ等を、開発スケッチ等とともに展示。また、「"歌うロボット"を開発し、歌手として世界デビューさせる」という計画も表明しており、2012年の完成を目指す「歌うロボット"セーモンズII"」プロジェクトの全貌を公開。5月11日~5月25日に、同店オルタナティブスペースにて実施されたイベント「明和電機ボイス計画・社長設計室」で土佐社長が公開ドローイングを行った図面も展示されている。

明和電機歴代の"ボイス計画"作品がズラリ

"声"をモチーフとした作品の原点は、実はユニット結成よりも前、「大学4年生の時に制作した喋る魚『ギョ・ルイ16世』が最初です」と、展示作品を眺めつつ振り返った土佐社長。同展では『魚に声を盗られた漁師の悪夢』と題されたスケッチも展示されており、「漁師が魚に声帯を盗られる夢を見て、魚が喋ると面白いんじゃないかと思って作りました」と、"声"を発する機械に魅力を感じるきっかけとなったエピソードを語ってくれた。同展では、同作品からはじまり、最新プロジェクトの『セーモンズII』に至るまでの変遷や、土佐社長の奇想天外な"頭の中"が垣間見れる展示となっている。

土佐社長が「(展示するのは)恥ずかしい代物なんですが」と照れつつ紹介してくれた『ギョ・ルイ16世』。魚のキャラクターにスピーカーを内蔵しており、マイクを通じて、遠隔操作で自分の声を魚に喋らせるというもの

腹話術人形『サバオ』や、顔に装着して使う『デカサバオ』マスクも展示。この時代(1995年)は、「"声を発すること"自体に興味を感じていました」という。当時、土佐社長自ら『サバオ』を演じ、裏声で歌ったCDも発売(右画像)

同社が、機械自らが"声"を発する機械の開発を本格的に始めたのは2003年で、ゴムによる人工声帯を、ふいごによる送風で振わせて発声する『セーモンズ』を制作。コンピュータ制御したモータで声帯を引っ張ってテンションを変えることで音程を調整し、「ア~~」と歌う。さらにその後、発音のための簡易な"口"を付けた、犬をモチーフとしたロボット『ディンゴ』や笑う機械『ワッハゴーゴー』が誕生し、2010年、遂に"歌詞のある歌が歌える"ロボット『セーモンズII』の開発プロジェクトが発足した。セーモンズIIでは、人間のように発音できる口と舌を新たに開発するといい、土佐社長は「今は、とにかく既成概念に捉われたくないので、(口内の)音を伝える媒体を空気ではなく液体にするとか、色々な面からアイデアを考えています」と話した。

歌うロボット第1弾『セーモンズ』。『サバオ』で自分の喉を楽器ととらえてパフォーマンスを行ううちに、"歌う機械"が作りたくなり、2003年から本格的に開発を始めたという

「ワン! 」と吠える機械『ディンゴ』とディンゴの仕組みを簡単な工作で再現した"チワワ笛"(右)。チワワ笛は100円ショップで購入したストローやゴム風船(声帯に利用)、ボール等でできている

チワワ笛がヒントとなって誕生した電子楽器オモチャ『オタマトーン』(2,940円)も展示されており、触って遊べる。シッポ部分のリボンコントローラに触れると音が出て、触れた位置によって音程が変わる。顔の頬部分を押して口を開閉させると「プワワワワ」とビブラートも

歯むき出しで「ワーッハッハッハッ」と笑う、『ワッハゴーゴー』。ふいごによる送風で声帯を振わせるのはセーモンズと同じだが、モータは使用しておらず、はずみ車を手動で回転させて、その回転エネルギーで歯車を動かす仕組みになっている

「紅白出場と世界デビュー。もちろんCDも出したいですね。2012年にCDがあるかどうか分かりませんけど(笑)」と『セーモンズII』の計画を語った土佐社長。「明和電機ボイス計画・社長設計室」で土佐社長が描いたアイデアの数々が展示されており、現在の構想を知ることができる

なお、同展は6月6日まで開催。5月30日には、土佐社長が「ボイス計画」の全貌を語るトークイベントも開催され、6月上旬に発売予定という『オタマトーン』のワハハゴーゴー・バージョン(3,360円)も、限定48個限定で先行販売されるとのこと。また、同展開期中、同店のオルタナティブスペースで『オタマトーン』に特化した展示も実施。猫耳付オタマトーンやパンク風オタマトーンなど、"コスプレ"がほどこされたオタマトーンも見ることができ、実際に作品に触れて演奏できる展示も用意されている。

『オタマトーン』のワハハゴーゴー・バージョン。また、残念ながら内容は明かせないが、土佐社長は、そのほかにも面白商品の開発が進んでいることもこっそり教えてくれた