ガイアが俺にもっと輝けと囁いている──ストリートスナップに付随する強烈なキャッチコピーが各所で話題を呼んでいる男性ファッション誌「メンズナックル」(通称メンナク)が、「ニコニコ動画(9)」ユーザーを対象に読者モデルを募集する企画を展開中だ。モデルなんてリア充生活とはあきらかに縁がないであろう、ニコ動のおれら&おまいらに対してメンナクは一体なにを期待しているのか。単なる勘違いか、騙されているのか。真相を確かめるべく、そのオーディション会場に潜入。メンナクの篠塚雅也編集長にも話をうかがった。
"伊達ワル"こと黒を基調としたアウトロー風のファッションを提唱し、お兄系ファッション雑誌としては頭抜けた人気を誇る「メンズナックル」。同誌の特徴のひとつが先に紹介した強烈なキャッチコピーだ。一方、2ちゃんねるやニコニコ動画などにおいては、そのコピーがまるで違う世界の話であるかのごとく"ある種のリア充スタイル"として認識されている。改変コピペまで多数出回るほどだ。
それだけにネットコミュニティとは決して交わることがないだろうと思われていたメンナク。だが、あろうことかニコニコ動画で読者モデルを募集するという。先月からニコニコ生放送でそのオーディションを行っている。おいおい大丈夫なの、この企画!? 気になる……ということで今回、2回目となるオーディションに潜入してみた。
オーディションは書類審査を通過した10人のニコ動ユーザーが、メンナク編集長と実際に誌面で活躍中の人気モデルを前に、1人ずつ面接するという展開で進行。そこで読者モデルになりたい意気込みをアピールし、実際にモデルになれるかどうかは、生放送に参加しているユーザーの投票によって決定するという仕組みだ。
そんなわけで今度はおまいらが笑われる番か。編集長を含め、イケメンたちが気弱なおれらへ圧迫面接を始めるのでは……と思っていたのだが、フタを開けてみたらどうやらあちら側にしこりは全く以てなかったらしい。
いかつい見た目とは裏腹にやたらと優しく接してくれる面接官のモデルたち。緊張を解きほぐすかのように話を振り、暴走したらフォローもし、アニメネタにまで付き合う。なんとも人懐っこい彼らなのだ。チキショー、性格のいいイケメンが憎いぜ。
そしてさらに驚いたのが、おまいらのことだ。確かに色は白いよ。日にあたってはなさそう。だが、顔立ちは決して悪くない。むしろイケてる。黒い服に身を包んで「世界一の読モに俺はなる!」と叫ぶおまいらの瞳は、邪気眼よろしく実に輝いているじゃあないか。
意外にもレベルの高いオーディションになったからか、篠塚編集長の目も鋭く光る。結果、今回は残念ながら合格者は出なかったが、編集長の言葉によれば「なんらかの形で掲載はしたい」とのことなので、今後のメンズナックル誌面に注目だ。
なお、オーディションはまだ続く。遠いようで割と近くにあったモデルへの道。続いて篠塚編集長にも話をうかがったので"リア充"を目指すなら、ぜひその言葉にも耳を傾けて頂きたい。
脱オタを目指す? なら"黒の世界へ"来い!
──ニコニコ動画でモデル募集というのは、なんというか、大胆な企画ですね。
篠塚雅也メンズナックル編集長(以下:篠塚) 正反対のイメージがありますよね。でも、アンケートを取ると、うちの読者も多少はニコニコ動画を観ている人がいるんです。やっぱり若い子なので、たとえばYouTubeとかも含めて、ちょっと面白いものというイメージを持っている。そこで「メンズナックルがなにかやっているよ」という部分を見せるのは意義のあることじゃないですか。出会ったことで化学反応が起こったら絶対に面白い誌面になるな、ということもあって企画を受けさせていただきました。
──ネットカルチャーを取り込もうということでしょうか?
篠塚 どういう評価、反響が来るかは正直わからなかったので、そこまで大きくは捉えていなかったんです。ただ、雑誌媒体というものは(読者)ターゲットが限定されています。当然ですが読者モデルにはメンナクを読んでいる子しか応募してこない。その点、ニコニコ動画さんはマスに向けられています。メンナクのことを知らなかった子にも「こういうものもあるんだよ」って知ってもらい、軽いきっかけでもいいので応募してもらって、モデルになれたりとか、広がるという意味では面白い。
──まだ2回目ですがニコニコ動画ユーザーならでは応募者の傾向ってあります?
篠塚 生主さん(ニコニコ動画のユーザー生放送の配信者)たちはユニークだなって(笑)
──実はもっとワルっぽい応募者を期待していたり?
篠塚 いや、うちのモデルにしても読者にしても、あまり不良不良している人はいないんです。純粋にファッションに興味がある子が中心。普通の人から見れば髪の毛を盛っていて、不良でイメージが悪いのかもしれないですけど、モテたいからそうしているだけであって、接してみるとマインド的には普通の子です。今回で2回目ですが結構カッコイイ子もいましたし、前回の話でいえば実際に選ばれた子もいます。ニコニコ発のモデルがどんどんウチから育っていって欲しいですね。
──ネット関連の企画は今後も続けたい?
篠塚 基本的には雑誌が主体になりますけど、ネット媒体というのは若者文化として浸透しています。今回の企画をきっかけとして、こうしたコラボレーションは今後もしていきたいとは考えています。面白い話があれば絡みたい。僕らも探しているというか、なにかあったらお話には乗りますよ。
──ところでメンナクといえば、突き抜けたキャッチコピーがネットの各所で話題になっていますが、それはご存じでしたか?
篠塚 知ってました。ニコニコ動画に上がったころから。その時は、何でいまさらキャッチフレーズに注目しているんだろう? って感じでした。僕らにとっては創刊当事から続けていることだったので。でも、ニコニコで少しでも多くの方に雑誌を知ってもらえればいいかなと。実際、メンナクはコアな雑誌です。渋谷のファッションを扱ってはいますが、スタイルは"黒"ということに特化している。"伊達ワル"じゃないですけど、アンダーグラウンドなイメージが強いと思います。それは、あの頃のニコニコ動画と同じ感じじゃないですか(笑)
──たとえばネットの中にはオシャレはしたいが「服を買いに行く服がない」なんて声も多いんですが、そうした方たちにプロの目からのアドバイスはありますか?
篠塚 冗談なのかもしれませんけど、その話ってよく聞きますよね。アドバイスというなら僕たちが押し出している黒って意外とファッション初心者でも入りやすい格好なんですよ。色々なカラーを使うコーデっていうのはとても難しいことなんです。ちょっと間違えたら子どもっぽくなっちゃうし、だけど、メンナクは黒という軸があるのでコーデもしやすい。だからメンナクこそ、そうした方たちの"脱オタ"的なガイドとしても使えるんじゃないかな。だって黒が嫌いな男はいないでしょ! ニコニコ動画のユーザーさんたちも絶対に好きなはずです。オタクっぽいっていうのはサイズ感とか、ちょっとした着こなしがわかってないからであって、そこは雑誌を読んでもらって今風の黒の取り入れ方を理解してもらえれば、一気に変わるはずですよ。
──オタクこそメンナクを読んで?
篠塚 ようこそ黒の世界へ、と。僕らは根本的に男の子の好きなことを誌面にしています。それはニコ厨でも誰でも関係ない。格好良くなりたいという願望は誰にでもあることです。一歩踏み出せるかどうかなので、「早くコチラにおいで」と呼びかけたいですね。