FXオンラインジャパン アナリストチームが最新のデイリーレポートをお届けする。今、金を取り巻く環境は複雑になりつつある。背景には、もちろんギリシャ財政問題に端を発したソブリンリスクが挙げられる。
債券市場ではギリシャ売りが続いており、ギリシャ国債は7営業日続落となっている。昨日の欧州中央銀行(ECB)理事会では、ギリシャ支援を継続する方針が確認されたが、為替市場ではユーロショートカバーの勢いが強まる場面も見られた。しかし、市場の不安心理を完全に払拭するまでには至っていない。
本日もギリシャ売りの動きからユーロ売りに直結する展開となれば、「ユーロ安・ドル高→金相場下落」の流れが優勢となろう。先日のFOMC議事録の内容から、米金利先高観の後退がドルの上昇幅を限定させているが、現状では、ユーロが年初来安値を試す方向には変りがないと思われる。
しかし、一方では安全資産としての金の避難需要が下値をサポートするかたちになっている。昨日も欧米市場では、上場投資信託(ETF)経由の現物投資需要の拡大が確認されており、短期需給の引き締まりにより下落余地が限られている。最大の金ETFである「SPDRGOLD SHARES」の投資残高は、6日の1129.82トン、7日は1130.74トン、8日には1140.43トンと、今週に入ってからでも10トン以上の増加が確認できた。
このように考えると、本日はソブリンリスクに対する安全資産としての避難需要」と「ドル高ユーロ安によるドル建て商品相場の下落」の強弱材料で打ち消しあうかたちになり、どちらに明確な方向性を打ち出すかが焦点となろう。
インフレ圧力の高まりや米低金利環境の長期化観測、株高・原油高に伴う投機マネーの流動性拡大などから、今まで下値を1050ドルから1100ドル水準まで切り上げてきた金先相場だが、果たして、ユーロ安圧力高まる今の環境で、更に1175ドル、1200ドルと次のレンジに押し上げられるか。仮にそのような展開となれば、安全資産としての妙味から上記の上値ポイントも視野に入ろう。
しかし、ユーロドルは、フィボナッチ61.80%レベルを完全に下方ブレイクしており、1.30トライの心理的ラインをトライする可能性が高まっている。本日24:30にトリシェECB総裁がソブリンリスクに関し何らかのコメントを発すると思われるが、ユーロにとってネガティブな内容だった場合は、リスク回避が一気に強まろう。その場合、金先相場は、一目均衡表の転換線(1121.60ドル)と基準線(1119.80ドル)の水準まで下落する可能性も出てくる。