2月から満を持してアメリカで始まった『LOST』ファイナル・シーズン(日本ではAXNにて5月第1話をプレミア放送)。現在ロサンゼルスに拠点を置く真田広之は日本人初のキャスト、しかも謎解きのカギを握る重要な役どころとして出演している。起用から撮影までの裏話、彼が日本人俳優として感じている使命、そして『LOST』ファイナル・シーズンの行方とは――? どの作品よりもネタバレが厳禁されているなか、真田が可能な限り赤裸々に語ってくれた。

真田広之

――まずは『LOST』のオファーを受けた瞬間の率直な感想をお聞かせ下さい。

真田広之(以下、真田) : 「『えっ!?』という感じでしたね。僕は映画のみを視野に入れて活動していたので、ドラマ出演はまったく考えてなかったんです。そういう意味では、『LOST』でなければ、その場で「NO」と答えたかもしれませんね」

――『LOST』は以前からチェックされていたんですか?

真田 : 「何度かはチェックしていました。僕は共演者に関してはできるだけ予習をしていくようにしているのですが、ジャック役のマシュー・フォックスと、映画『スピード・レーサー』(2008年)で共演することが決まって、じっくり観ていた時期もありました。『LOST』は展開とキャラクターの掘り下げ方など脚本がすごくしっかりしているし、映像も、チェックしているテレビ番組の中ではいちばんクオリティーが高いと思っていました」

――真田さんは道厳という役を演じられていますよね。オファーを受けた時点で、役柄についての説明はあったんですか?

真田 : 「ええ。『台本はギリギリまで渡せない』と言われましたけど(笑)、『僕は内容次第で決めたい』という話をしたら、エグゼクティブ・プロデューサーのカールトン・キューズとデイモン・リンデロフに会うことになったんです。しかも、『話を聞いて、やるかやらないかをその場で決めてくれ』と言われて(笑)。だから、まずは道厳の経歴や物語における役割を聞いて、心配ごとをすべてぶつけたんです。道厳がテンプルマスター(寺院の主)ということは聞いていたので、宗教や政治的なことが扱われるのか、扱われないのか。日本人が観て『ありえない』と思ったり、屈辱的な描写になるようなことはないか……。彼らは全て真摯に答えて下さって、『宗教も政治も絡まない。日本人が見てイヤな思いをするものを作るつもりはないから、台本を読んで気になる部分があればどんどん言ってくれて構わない』と。そこで"この人たちは信じられるな"と思いました。単にビジネスとしてヒットを飛ばして、ハリウッド風を吹かしてる人たちとは違って、クリエイターの匂いがしたんです。それで出演を即決しました。今振り返っても、1時間の濃い密室劇でしたね(笑)」

――実際、期待に沿う脚本になっていましたか?

真田 : 「そうですね。ゲスト扱いだと聞いていたので、さらっと抽象的に出てきて終わるのかと思っていたら、"わりと核心に触れた役じゃん"と(笑)。そういう嬉しい驚きもありました」……続きを読む