ノートは「ゴミ箱」

──情報を一元化するのはなぜですか?

あとで参照するときに一番楽なんです。ノートが分冊になっていると情報を探すのに時間がかかりますが、最初からノート一冊しか使っていなければそんなこともありません。 ノートは入れ物であり、極論すれば「ゴミ箱」に過ぎない。「とりあえず放り込んでおく」という感覚を持ってもらえればと思います。

──「ノートはゴミ箱にすぎない」というのは、非常に大胆なフレーズにも聞こえますが、真意はどのようなものでしょうか

ノートを「ゴミ箱」と考えれば整理も不要ですし、メモをとることに対して気楽になれます。自分の考えたことをそのまま残しておき、あとで見返して必要なところに○をつけたり消したりすればいいと私は考えます。また、余計な加工をすることなく、自動的に自分のライフログを作ることもできます。

例えば打ち合わせのあとに会食をして写真を撮った日があったとします。そこで、ノートに日付を書き、もらった名刺、その場で書いたメモ、ショップカード、写真などすべて貼っておく。すると、たちまちそのページは連絡先から打ち合わせ内容までが参照可能なライフログになるので、あらためて日記を書く必要がないんです。

──メモのライフログ化にはどんな意味があるのでしょうか

ライフログをとると、自分が無意識にしていることや、時間をどう使っているかがわかります。意外なようですが、自分が普段何を考えているのかを自覚している人は少ないものです。

人は常に何かを考えていますが、それは言語化しなければわかりません。メモは頭の中を言語化するトレーニングになります。

それに、メモを積み重ねていくと、「昨年の7月にセミナーに出てこれを書いたんだな」「9月にはこんな練習をしていたな」と振り返ることができるので、自分は漫然と生きていたわけではないと自信が持てます。使い終わったノートを捨てないでおくことも大事だと思います。

──基本的に「なんでも放り込んでおく」スタイルとのことですが、特に大事だと考える情報はありますか?

自分が実際に見聞きした「一次情報」です。他人は決して体験できないことですから。どんな人の人生も貴重なものですし、そこから生まれる視点が大事だと思っています。

アナログの強みとは

──情報を整理する際、デジタルツールは活用されていますか?

100%アナログで通すことは不可能ですし、そうするつもりもありません。私自身、ノートに通し番号をつけ、ページと書いた内容をパソコンに入力して索引を作っています。ただ、デジタルに対してある程度距離を保つようにしているのも事実です。

例えばフリーメールは便利なものですが、一企業の意向次第で廃止されたり有料化されたりする可能性もありますし、メールの内容をのぞかれて利用されないとも限りません。アメリカでは実際にそうした事件がありました。デジタル情報は知らない間に盗まれるおそれがありますが、ノートを盗まれることはまずありません(笑)仮に盗まれたとしてもすぐにわかります。

それに、ノートは電気もいりません。とてもいいツールだと思います。手書きでものを書くときは集中力が必要ですし、なによりも自分と向き合う時間が持てる。これが一番のメリットではないでしょうか。


次回は、「情報を取捨するポイント」についてうかがいます(毎週木曜日更新)。

INTERVIEWER PROFILE : 早川洋平 / KIQTAS(キクタス)
中国新聞社記者、全国紙系編集プロダクションのライターを経て入社した企画会社で2008年、良書の著者へのインタビュー音声を無料で配信するポッドキャスト番組「人生を変える 一冊」をスタート。配信後2カ月でiTunes store podcastビジネスランキングで21日間連続1位を獲得、月間20万DLの人気番組に成長する。独立起業した現在は、インタビューやライティングに加え、ポッドキャストを軸にしたコンサルティング、コンテンツプロデュースなどを行っている。 KIQTAS(キクタス)ウェブサイトはこちら早川洋平ブログはこちら