JR東日本はこのほど、「蓄電池駆動電車システム」を搭載した試験車両「NE Train スマート電池くん」が完成したと発表した。600V、163kWhのリチウムイオン蓄電池9ユニットを室内に搭載し、架線の電力を蓄電池用の電力に変換する装置を屋根上に搭載したという。最高速度は時速100kmで、航続距離は平坦路で約50kmとのこと。

(左)蓄電池駆動電車「NE Train スマート電池くん」(右)床下に設置された電力変換装置(JR東日本提供)

JR東日本では先にディーゼルハイブリッド車両「キハE200系」を開発し、2007 年から小海線で運行している。「NE Train スマート電池くん」はそのエコ性能をさらに進めるため、完全な電力/蓄電池駆動を可能とした。パンタグラフを装備して電化区間は通常の電車として走行するほか、電力変換装置を経由して蓄電池にも充電可能という。電化区間は蓄電池に貯めた電力によって走行するほか、一部の駅や車庫に架線などの充電設備を用意し、非電化区間の長距離運行を継続できるとのこと。回生ブレーキを搭載して余剰となった電力を架線や蓄電池に還元できるという。

(左)車内に設置された蓄電池ユニット(上)蓄電池本体はジーエス・ユアサ パワーサプライ製の「LIM30-8A」(JR東日本提供)

蓄電池は強制空冷式鉄道用リチウムイオン電池モジュール「LIM30-8A」を採用した。製造したジーエス・ユアサ パワーサプライ社によると、「最大許容電流600A、連続通電電流100Aで安定した充放電性能を持ち、モジュール外装には樹脂材料を使用して高電圧に耐える絶縁性と小型軽量化を実現した。モジュール本体に冷却風を通せる構造を採用したほか、すべてのセルの電圧と温度を監視して外部へデータ出力できる」とのこと。

JR東日本ではこの「蓄電池駆動電車システム」を推進し、非電化路線からディーゼルカーの排気をなくすなどの環境負荷の低減や、電化区間、非電化区間で車両を共通運用して 使用効率や保守効率の向上を目指すとのこと。今後は充電時間や電力消費量などから、最適な蓄電池搭載量を見極める。また、これに合わせて地上充電設備の開発も進めるという。

なお「NE Train スマート電池くん」は今月から大宮総合車両センター内で試験走行を開始するとのこと。来年からは営業路線上での走行試験も計画しており、2010年度以降に地上設備も含めた総合的な試験を実施する予定。

電化区間と非電化区間の運行の仕組み(JR東日本提供)