「人とくるまのテクノロジー展」は一般向けではなく、あくまでビジネスショー。だから自動車メーカー向けの開発用設備や素材などの展示も非常に多い。レポートの最後は、会場で目を引いたおもしろいものをいくつかまとめてみた。

開発機器は圧倒的なものである

東洋製作所は冷凍、空調、環境設備の会社だが、今回のショーには人工降雪機を展示していた。人工降雪というとスキー場で吹き出しているのを思い出すが、それとはぜんぜん違う。水と圧縮空気を特殊なノズルで霧状に噴射し、空気の断熱膨張効果により氷晶形成させ、それを通気性の膜に付着成長させることで人工の雪を作るのだという。六角形にこそならないが、結晶はきれいな枝状で、手ざわりも本当の雪とまったく同じだった。この装置はクルマの開発で必要な環境テストなどで活躍する。さらにシャーベット(雪と水が混ざった状態)路面装置もあるという。

バイオシステムは、GPS衛星の信号を利用した速度・距離計を展示していた。GPSというと一般的になったカーナビを思い出すが、それとはまるでレベルが違う。速度計測単位は0.1km/h、極低速でも不感帯がなく、距離誤差は500m走行してわずか3cmでしかないという。地上では計測しづらい低μ路や500km/h以上の高速でも確実に計測するという。これも自動車メーカーのテストコースなどで活躍している装置だ。

東洋製作所の人工降雪のデモ。実際に触ることもできる

人工降雪機で作られる雪の結晶。樹枝状結晶と呼ぶらしい

シャーベット飛散再現装置のパネル。クルマには単なる雪よりシャーベットのほうが大変だろう

バイオシステムの超高性能な速度・距離計

他とはちょっと違った雰囲気のブース

レーシングカーでお馴染みの童夢のブースは黒がベースで、他とはまるで雰囲気が違っていた。展示していたのは「インサイト」のアンダーパネル、ホイールカバーの模型だった。レーシングカーの開発技術を応用し、"究極のインサイト"を制作するとのこと。ほかにもバンパー、グリル、サイドステップなどの形状を検討し、さらに外装パーツを軽量なカーボンコンポジットに置き換えることで、軽量化を進めるのだという。いまから完成が楽しみである。

三菱重工のブースには、コミュニケーションロボットの「wakamaru」が出迎えてくれた。人との会話はもちろん、人の顔が判断できる認識能力や、電池が減ると自動で充電したり、人に近づいて働きかけるといった自律行動を得意としている。ロボットが置かれているだけでその場の雰囲気も変わるから不思議だ。

住友電気工業のブースでは、超伝導のデモを行なっていた。超伝導は、特定の金属を超低温に冷やすと急激に電気抵抗がゼロになる現象。有名ではあるが、なかなか目にする機会はないもの。なかなか興味深かった。

真っ黒な童夢のブース

インサイトのアンダーパネル、ホイールカバーーの模型

三菱重工のロボット「wakamaru」。会話もできるコミュニケーションロボット

三菱電気工業の超伝導のデモンストレーション