Hi-STANDARD、ソロ活動を経てKEN BANDを結成、現在はKen Yokoyama名義で日本のロック・シーンを先導し続けているギタリストの横山健。自身を「ギターオタク」と公言する彼が初のギター教則DVDを刊行し、その発売を記念したイベントが都内で行われた。名付けて「対話集会(演奏もあると思います)」。

横山は登場するなり、ズボンを下げて美尻を披露。最初こそステージ上の椅子に着席したものの、「ここじゃねーよな。ここだよな」と自らフロアに降りて観客に囲まれる形に。この日のコンセプトは読んで字の如くの「対話」。ファンから質問を募り、横山がそれに答えるという形式でイベントは進められた。音楽に関することは当然ながら、今後の身の振り方、子どもの育て方、果てはずっしりヘヴィーな人生相談まで、多岐に渡る質問が飛び出したが、横山は一つ一つ丁寧に答えていた。ここではそのうちのいくつかを紹介したい。

多数の応募の中から当選したファンで会場は埋め尽くされた

自分のやり方で

ギターを始めたい女子「こないだギターを買いに行ったんですけど、よくわからなくて。初心者にオススメのギターはありますか?」

横山「ないですね(笑)。人それぞれの好みだし。値段でいうならあんまり高いのは買わないほうがいいと思うのね。肩に力入っちゃうから。気に入ったの買えばいいと思うよ」

DVDでも「自分のやりたいように、楽しんで」ということを繰り返し強調する横山。理想と現実の狭間で悩むことは? という質問に対しても次のように答えている。

横山「俺はもうこの年だし、理想とか考えてないのね。ヘタだったらしょうがないし。好きなことやってて、まわりには幸せだって思われるけど、好きじゃないことやってるのと同じくらい辛い時ってあるじゃない。俺よりギター上手い奴なんかゴロゴロいるし、俺がうなるような曲作る若手とかだっているわけよ。でもそんなの追ってもしょうがないじゃん。自分の世界はこうなんだ。それをひっくるめた上で好きでいられるのが才能なんじゃないかな」

生き方指南

新米社会人「今度社会人になるんですけど、どうやったら健さんみたいなカッコおもしろい大人になれますか」

横山「俺カッコおもしろいかなー。カッコいいと思ってんだけど(笑)。例えば、理想の人がいて、そのひとのマネしたんじゃダメだと思うのね。自分自身を貫けばいずれカッコいいものにたどりつくと思うよ。最初はマネでもいいけど、だんだん自分自身と向き合う時が来る。自分を持ってる人がカッコいいでしょ。自分らしさ、そのひとしか出せない味を出せるようになれたらいいね」

ここで「ハイハイハーイ!」と元気よく挙手する人物が。

?「健さんて、よく『エニウェイやるしかねーぜ!』って言うと思うんですけど、それって矢沢永吉さんのパクリじゃないですか」

横山「…そうです(笑)」

?「今回のDVDすごくいいと思ったんですけど、副音声がやっぱおもしろかったっすねー」

横山「俺、副音声いらなかったなーと思ってるんだけど(笑)。副音声に出てるCHUN2です」

COMEBACK MY DAUGHTERSのCHUN2が観客に紛れて参加していた模様。

イベント中に、来場者がキスをするハプニングも。

来月結婚する男子「実はお嫁さんになる人も当選しましてここに来てるんです。あつかましいお願いなんですが『おめでとう』って言ってほしいなと」

横山「おおー、地獄へようこそ(笑)! わかってるよね君らね。おまかせでしょこれ」

会場全員「おーまかせ! おーまかせ!」→キス

横山「ご結婚おめでとうございます! おたがい理解が大切ですからね。きみだけの家じゃないんだよ」

自身も一児の父である横山だけに、家庭の悩みやうまく結婚生活を送るコツは? といった質問も多数受けていたが、そのたびに「そんなの俺が聞きてーよ」と笑い、ここでもやはり「自分たちらしさを大切に」というアドバイスを授けていた。

ファン垂涎のアコースティックライブ

1時間を超える質疑応答の後は、休憩を挟んで待ちに待った演奏タイムへ。

「何人くらいと話したかな。何割くらい? 3割くらい? もうちょっと今度は時間取れるところでやりたいね。対話集会。一通りしゃべったところでこれからはお喋りなしでやろうと思います」と宣言し、立て続けに「Tiny Soul」「So Sorry」など4曲を披露。 。

「今日はこんな風に会えたことが嬉しいわ。ありがとね。じゃあ、カバー一曲やろうかな。SIONさんって知ってる? ……知らないの!?」

質問時間の頃とは打って変わって大人しい観客。

「ねえ、君たち固まってる? いきなりギターのアラが目立って『うわこいつへったくそだなー』って固まっちゃった? でも俺らもうそんな関係じゃないよね。もっとフランクだよね。君たちが壁作ってちゃ、俺だってベルリンになっちゃう(爆笑)」と場を盛り上げる。

「がんばれって言葉、家族とかに言われるのはいいんだけど、知らない人に言われるのって好きじゃないのね。本来持ってる"がんばれ"って言葉の力とか美しさが失われて単なる挨拶になってしまってる気がするの。なのでこの言葉に関しては一種アレルギーみたいな気持ちがあって。でもこのSIONさんの曲には俺の好きな方の"がんばれ"がいっぱい詰まってるから大好きなのね。じゃあやります」

とSIONの「がんばれがんばれ」を熱唱した。

この時点でADからは「巻きで」との指示が入っていたようだが、「もう一曲、もう一曲だけ」と演奏を続ける横山。スタッフサイドは気が気ではなかっただろうが、観客にとっては嬉しい誤算だっただろう。

そして、最後。

ギターが奏で始めたメロディはHi-STANDARDの「STAY GOLD」だった。

「今日はありがとう。気をつけて帰ってね」とだけ言い、横山はステージを後にした。客電が点き、イベント終了のアナウンスが流れても、多くの観客はその場から動かずに余韻を楽しんでいたようだった。

記念撮影。この他にも写りこんでいない人多数。イベント終了後、横山は「楽しかった! でももっと時間があればよかったなぁ」と漏らしていたとか。「対話集会」、またあるかも!

「横山健 BClass Guitar Lesson」はリットーミュージックより発売中

撮影:堀田芳香

会場:タワーレコード渋谷店B1F「STAGE ONE」