──加齢黄斑変性症という病名も最近よく目にします。

若倉「『黄斑』は、網膜のど真ん中にあたるところです。フィルムで言えば一番感度のいい場所ですね。その黄斑部が腫れたり、孔が開いたり、シワが寄ったり、色々な病気になるのが『黄斑変性』です。最近は「加齢黄斑変性」がマスコミによく取り上げれるので、黄斑の病気は全て加齢黄斑変性だと誤解している人もいるかもしれません」

「加齢黄斑変性には、滲出型と萎縮型の2種があり、よく話題になっているのは、新生血管ができる滲出型です。この新生血管をやっつける治療法が、昔はレーザーのみでしたが、レーザーと薬を組み合わせたり、あるいは新生血管を阻害するような薬を晶子体の中に注射するなど、新しい治療法がどんどん出て来ています。ただ、どれも黄斑の出血や病巣の増殖を抑えるのが主たる目的で、予防でもなければ視力をもとに戻す治療でもありません」

「萎縮型は少数ですが、今のところいい治療法はありません。いろいろなサプリメントを利用するという方法しか今のところないんです。積極的なエビデンスのある治療法はまだ開発されていません。自分でできる予防策は紫外線、過食、喫煙、大酒を極力さけることでしょう」

──目の中を虫が飛ぶように見えるのは、網膜剥離の前兆だといわれました。

若倉「網膜剥離も、孔が開いて網膜剥離になる『裂孔原性網膜剥離』と、孔は開かず病気によって網膜が剥離する『非裂孔原性網膜剥離』の2種類があります。よく言われる網膜剥離は、網膜に孔が開いて剥離していくタイプのものです。そのとき出血したり、色素が飛んだりするので、虫が飛ぶ、黒いものがちらつくといった『飛蚊症』という症状が出るわけです」

「しかし、黒いものが飛んだから網膜剥離ですとか、飛蚊症イコール網膜剥離というものではありません。光視症といって光が見えることもあります。黒いものが見えたり、虫が飛んだり、ピカピカするものが見えたり、そうしたことは、網膜剥離や網膜裂孔のときに出るひとつの症状ですが、そのほかの時にも出るのです」

「飛蚊症や光視症は生理的な原因が多いのですが、中には網膜の裂孔や、炎症、眼底出血が起こる病気でもなるので、飛蚊症を感じたら一度、眼底をチェックすることはとてもいいことだと思います。ただし、ある程度年齢が来たら、原則的には飛ぶと思っていいでしょう。なお、近視の人は、若くても飛蚊症の症状がでます」

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