毎日パソコンに向かって、長時間のデスク作業。目は疲れるけど休むわけにもいかない。目薬を差して作業続行。そういえば以前より肩こり、頭痛がひどくなった気が……。そんな日常を送っている方に質問したい。同じPC作業でも目の疲れを軽減できる作業の仕方があるのをご存知だろうか、と。今回はVDTインストラクターも率いたナナオのプレス向けセミナー「眼精疲労セミナー」で、"目に優しい"PC作業について伝授していただいた。

VDT(Visual Display Terminal)症候群

眼精疲労の主な症状は眼疲労(目が乾く、目の奥が痛い、ショボショボする等)の症状に加えて、ドライアイや目まい、頭痛、肩こり、吐き気などが挙げられる。その中で今回扱うのはドライアイの一因とも言われる"VDT症候群"対策だ。

VDT(Visual Display Terminal)症候群とは、コンピュータモニターなどの表示機器(VDT)を使用した作業(これをVDT作業という)を連続した場合に、目や心身に感じる疲労・ストレスといった諸症状のことをいう。近年、PCの普及やDVDなどモニターを直視する生活環境により問題視がなされており、厚生労働省では、2002年に「VDT作業における労働安全衛生管理のためのガイドライン」を発表、対策を企業に促している。同省では作業環境の改善(照明とディスプレイの明るさなど)、小休憩を挟むといった作業時間の管理などVDT症候群予防策をいくつか掲げているが、各企業が実際に積極的に取り組んでいるという話はあまり耳にしない。

"目に優しい"PC作業とは

映像モニターの専門企業であるナナオのセミナーでは、同社マーケティング部販売促進課の塚西里紗氏が近年の健康管理事情やVDT症候群に関する調査や同社製品の取り組みを披露。その後、VDT作業労働衛生教育インストラクター(以下、VDTインストラクター)の資格を取得している同社商品技術課の上田陽一氏による実践的なPC作業時の適切な姿勢と疲れ目予防対策が紹介された(ちなみに、ここでいう「PC作業」とはノートパソコンではなく、デスクトップパソコン利用時に言及する)。以下、適切なPC作業の姿勢、モニターの位置等について詳しく紹介しよう。

商品技術課の上田陽一氏

--モニターの設置場所は?

「窓に背にせず、照明が映り込まないように心がけてください」

過剰な光は目に良くない。窓を背にして直射日光が入ったり照明の映り込みは目疲労の原因。「窓が背になる職場環境なら必ずブラインドをつけたり、照明が映り込む場合は映り込みを防ぐルーバーの設置を」と上田氏。

--モニターの高さは?

「モニターの上端が目線のやや下になる位置にしてください」

目が何かを"見上げる"場合、眼球の露出部分が増すため、目の乾きを招くという。その結果、ドライアイなどの症状がでるので、目線をやや下げ(下げすぎると首に負担が生じるので"やや"がいいらしい)、ディスプレイは光が入り込み過ぎない程度に角度をつけたほうがいいとのこと。また、モニターが高すぎるても、画面を見上げることで首に負担がかかるので、適切な位置で作業するのがいいそうだ。

--モニターからの距離は?

「VDT作業では最低でも40cm以上を確保してください」

VDTインストラクターの上田氏によると「頻繁な視線移動は目を酷使させます」とのこと。「最低でも40cm以上は確保してほしいところですが、ワイドモニターの場合は50cm以上が望ましいです」(同)。

--モニターの輝度は?

「基本は100~150cd/m2。室内の明るさと合わせましょう」

マーケティング部販売促進課の塚西里紗氏

塚西氏によると、同社の新製品で比較すると、液晶モニターの新製品の標準設定の輝度は、2000年に200cd/m2だったのに対し、2007年では350cd/m2近くと1.7倍も上昇しているという。これは各社による液晶モニターの高輝度のスペック競争の結果だが、室内とディスプレイの明るさに差があると、目の開く面積が広がり、目の負担になるので、手動で明るさを合わせるのが良いそうだ。オフィスの照明は大体500~1000lx(ルクス)なので、100~150cd/m2の設定がベスト。オフィスが500lx以下なら照明の見直しを。ナナオの液晶モニターには、「BrightRegulator」機能が用意されているので、周囲の明るさに合わせてモニターの明るさを自動調整できるとしている。

右のモニターが「BrightRegulator」機能利用時で、左が初期設定のモニター。モニターの明るさがかなり異なるのがわかる

--作業中の姿勢は?

「猫背、足組みはNG! 肩や首の負担も目の疲労につながります」

正しい操作姿勢は、椅子に深く腰かけ背もたれにかけ、履物の足裏全体が床に接した状態が基本。必要以上に前のめりな姿勢や、背もたれに寄りかかりすぎて倒れるような姿勢は腰や首に負担がかかり、筋肉の緊張により疲労のもとに。「ただ、無理のない状態でも長時間同じ姿勢だとやはり負担がかかります」(同)とのことで、足の位置を変えたり座りなおすことも大事だと述べていた。

悪い姿勢の例。椅子によりかかりすぎているうえに、デスクトップの位置が高い

良い姿勢の例。なお、血行不良にならないように、ひざから椅子まで間は少しだけ空間を作るのがよい

--操作時間は?

「1時間に1回、10分程度のVDT作業の休止を。リセットタイムを必ず取り入れてください」

厚生労働省のガイドラインの規定によると、連続するVDT作業の場合、1時間に1回10分程度の休止を促している。同社のVDT作業調査でも休憩を入れるかどうかで効率に差が出てくることが判明したとしており、パソコンなどVDT作業とそれ以外の作業をうまく組み合わせるといった工夫が求められる。同社のモニターでは、「EyeCare Remider」と「EyeCare Recorder」を搭載。長時間のモニター操作を続けると「そろそろ休憩して目を休めたらいかがでしょうか?」という表示や一日のPC作業の使用時間を表示し、休憩の提案や過度な長時間使用を避ける"きっかけ"を与えるとしている。

同社製品モニターでは「EyeCare Remider」(左)と「EyeCare Recorder」(右)機能により、長時間のPC利用に警告を促し、休憩時間を提案

診療科別の医療費の割合(同社資料)

眼科医へPC作業時の眼疲労について同様な質問を投げかけたとしても、具体的な照明・ディスプレイの明るさ、作業時のモニターとの距離などを回答してくれることは少ない。そういう意味で、同セミナーとても興味深いものだった。塚西氏は「眼疲労はドライアイなどの直接的な目の病気のほか、近視・乱視の進行も関係があり、深刻化している状況。また、医療費の内訳の眼科にかかる費用は内科、整形外科に続く割合を占めています(同社調べ)。同社のVDT作業調査では、適切な作業姿勢・時間を守ることで、目の疲労を軽減でき、作業効率が上がるという結果になりました」と述べている。医療費節約(?)のためにも、作業効率UPのためにも"目に優しい"PC作業を習得しようではないか。