ネルソンを拠点に活動を展開し、国内で有名な現代アートアーティストのアナ・リアリー氏はWOWとネルソンのアートについてこう語る。「WOWは発祥の地・ネルソンにとって誇り。ネルソンの"Creative Talent"が詰まっています。主催者のスージーもいまだにネルソンのコミュニティと関係しているように、WOWは"市民性"の高いイベントだと思います」。リアリー氏の生み出す作品は、ネルソンの海沿いの風景や時間の流れを表現したものが多い。それらは幼い頃から住んでいるネルソンでの体験を反映している。生活に密着してアートが誕生する。健全な生活にアートが宿る。ニュージーランドのアートはこのように言えるのではないだろうか。
リアリーはさらに「私は2Dのアートしか手がけていなく、今後は3Dのアートに挑戦したいと思っているので、WOWにも応募してみたいです」と笑顔で話す。WOWに自らの作品を応募する―それはアーティストとして、ネルソン市民として、目標の1つなのかもしれない。
|
|
|
リアリー氏の作品。「都会は上下(縦)のイメージですが、ネルソンは海が多いので"横"のイメージがある」(同)と、横長のキャンバスで描かれた絵画が多い。右は彼女の作品に多く見られる"海"や"水"の流れを示した彫刻 |
|
このように、ニュージーランドはアートへの意識が高い国だ。WOW発祥地のネルソンには約350人のアーティストが集まっていると言われており、ウェリントンには映画監督ピーター・ジャクソン氏が運営するスタジオ「WETA Studio」がある。WETA Studioでは、『キングコング』『ロード・オブ・ザ・リング』などハリウッド映画の特殊メイクなどが手がけられており、2008年6月にオープンしたアンテナ・ショップ「WETA CAVE」では、非公開となっているWETA Studioの製作現場を垣間見ることができる映像も上映されている(閲覧無料)。
そんなアート色の強いニュージーランドでも、WOWは異色を放つようだ。ニュージーランド人にWOWのことを尋ねても、「WOWは一言でなんと言えばいいのか……。とても説明しにくい」と皆、口を揃える。また、WOWを「ジョン・ガリアーノとシルク・ド・ソレイユを足したような印象」と形容する人もいたという。どちらのコメントもWOWに色んな要素が詰まっていることを表現しているのだろう。というのも、WOWで見られるのは、パリコレのような流行最先端のファッションの衣装ではない。"メッセージ性"の強いオブジェのようなコスチュームと音・光(イルミネーション)が合わさった、複合エンタテインメントショーなのだ。さらにWOWでは、部門ごとに一貫したテーマを持ち、それに添うかたちでコスチュームや映像を紹介していくのも特色だと言えるだろう。
例えば今回の「南太平洋」部門では、ニュージーランドの先住民マオリの文化を象徴していたり、野生動物をモチーフにして環境問題を説いている。一方「子ども」部門では、"白鳥の湖"など古典のクラシック音楽が流れる中、「バレエの衣装"チュチュ"の新しい可能性」をコンセプトに、ユニークなチュチュを着た子どもモデル達がステージ上を闊歩していた。ユニークだが、シリアスなテーマをも持つショー、WOW。だが、WOWが「ニュージーランドのシルク・ド・ソレイユみたい」とも称されることや、プロではなく一般人のモデルを起用する点からも、"崇高なアート"ではなく、あくまで"皆で楽しむアートイベントショー"を目指していることは確かだ。一言で言い表せられないから面白い、それがWOWの醍醐味なのかもしれない。