毛針を優雅に飛ばし、狙った魚をゲットする。フライフィッシングは、老若男女問わず人気の高いスポーツフィッシングだ。今回はフライフィッシング初挑戦の女性編集者Aを引き連れ、初心者でも比較的簡単にフライフィッシングを楽しむことができる管理釣り場、FISH! ON鹿留(山梨県都留市)へと向かった。

FISH! ON鹿留 ネイチャーエリア

まずは管理釣り場でキャスティングの練習から

フライフィッシングは、昆虫などを模したフライ(毛針)を使って魚を釣る疑似餌釣りの一種で渓流はもとより、湖、海でも盛んに行われている釣り方の一つ。サケやマスなどのトラウト類をはじめ、ターゲットも幅広い。他の釣りと大きく違う点はキャスティング(しかけをポイントに投げ込むこと)の方法。投げ釣りやルアーフィッシングなどでは、おもりやルアーの重さを利用してキャスティングを行うのに対して、フライフィッシングではラインの重さを利用して軽量のフライを遠くに飛ばして釣る。そのため、他の釣りとは違い、ラインがのびていく長さを調整しながら何回かロッド(竿)を振り、狙ったポイントにフライを落とす技術が必要になる。

このキャスティングができるようになることがフライフィッシングのファーストステップ。そこで、キャスティングを練習しながら、釣りも楽しめる場所として、管理釣り場を実践の場に選んだのだ。今回、お世話になった「FISH! ON鹿留」は、自然の渓流を利用しており、渓流の形状に合わせていくつかのポイントに分かれている。中でも、ある程度魚がいて、魚の動きを見ながら釣ることができる堀で、ニジマスを狙うことにした。堀とはいっても、自然の渓流をせき止めて作られているため、釣り堀のように簡単につれる訳ではない。むしろ、放流されている魚が人間や毛針に慣れていてなかなか喰いついてこないので、よほどうまく魚をだまさないと釣れないのだ。果たして、初心者のAさんはニジマスを釣り上げることができるのだろうか?

自然の渓流をせき止めて作った釣り場。堀になっているとはいえ、魚はフライになれているため、なかなか食いついてはこない。

初心者でも扱いやすいロットを用意

タックルは、8フィート#4(4番)のロッドにダブルテーパー#4のライン、9フィートのリーダーとティペットを基本とした。この組み合わせならば、適度な竿の柔らかさと扱いやすいラインの重さで、初心者でも管理釣り場をはじめ、ちょっとした渓流で充分フライフィッシングを楽しむことができるからだ。現場についてまず最初に行ったのはフライフィッシングの成否を分けるキャスティングの練習。まずAさんには、2~3回の振りで魚がいるポイントにラインを飛ばす方法を練習してもらった。あらかじめリールからラインを出して手元で余らせておき、ロッドを前後にしならせる勢いを利用してフライを飛ばす。基本動作としては、利き手側のひじを支点にしてロッドを持った腕を前後に振り、最後は堀に向かってまっすぐに腕を伸ばした状態で止め、フライを水に落とす。また、腕の振りとともに、反対の手で手元のラインをつまんでのび具合を調整する。

水に浮くものや沈むもの、模した虫の種類が異なるさまざまなフライを用意する

今回用意したタックル。渓流釣りや管理釣り場で初心者にも扱いやすい#4のロッドとラインの組み合わせを用意。ラインはダブルテーパーと呼ばれる形式で、水に浮くフローティングラインだ。

いろいろな種類のフライのなかから、まず最初に選んだのが魚の卵を模したもの。管理釣り場では定番のフライだ

振りかぶったときに背後の木にフライを引っ掛けてしまったり、ロッドのしなりが足りずラインが遠くまで飛ばなかったりと、まだまだ危ういところが残るAさんに一抹の不安を感じたものの、時間にも限りがあったため、実践に移ることにした。最初につけたのは、水中に沈めるウェットタイプと呼ばれるフライで、魚の卵を模したものだ。管理釣り場で多く使われ、釣果も実証済みのフライだったが、なぜかあまり反応が良くない。筆者も横で釣っていたが、軽く食いつきはするものの、勢い良く食いついてくる感じがしなかった。そこで、魚を観察してみると、どうやらそのフライには慣れてしまっているようで、あまり反応していないことがわかった。

状況に応じてフライを変更する

そこで戦法を変え、ドライフライと呼ばれるカゲロウを模した水面に浮くフライに付け替えて再度チャレンジした。この作戦が見事に成功し、ます筆者が立て続けに2匹ほどニジマスをゲットする。このようにフライフィッシングでは、状況に応じてフライを変更できるよう、さまざまなタイプのフライを用意し、こまめに付け替えると釣果につながりやすい。

一方Aさんはというと、キャスティングに慣れていないこともあり、魚がなかなか反応しない。釣りをはじめて1時間くらい経った頃であろうか、だいぶキャスティングにも慣れ始め、たより無さげではあるが、狙ったポイントになんとかフライを投げることができるようになったころ、ようやくアタリが来た。慎重にラインをたぐり、岸へと引き込んで無事20cmクラスの標準的な大きさのニジマスをゲットすることができた。

Aさんが使ったドライフライ。パラシュートと呼ばれる形式のもので、かなり万能に使えるフライだ

フライに食い付いてつり上げられたニジマス。フライをえさの昆虫と勘違いして喰いついてくるところをうまくあわせて釣る

ニジマスを見事につり上げたAさん。フライ初心者ながら1匹でも釣れたのは、まずまずのできといえる

終わりの方にはかなりキャスティングの技術が向上し、狙いも定められるようになった

その後も魚の反応を見つつ、フライをこまめに変更してチャレンジするが、ヒットするものの取り逃がしてしまったり、全く反応しなかったりということで、Aさんが1匹、筆者が5匹の合計6匹となった。

本日の釣果は2人で6匹。さて、この魚がどのように料理されるのか。とても楽しみである

できれば事前にキャスティングの練習を

今回はいきなりの実践で最初は満足のいかないAさんであったが、終わる頃には次のステップに踏み出せる程度までは上達していた。実際、フライのキャスティングはそんなにすぐに習得できるものではない。できるなら事前に講習を受けたり、広い場所で練習をするなどしてから実践に入った方が釣れる確率も向上するだろう。

フライフィッシングはある意味、難しい釣り方でもある。キャスティングはもとより、シューティング後のラインのコントロールや状況に合わせたフライの選択など、経験を積んでいかないと修得できないテクニックが多い。しかし、趣味というものはある程度難しい方が面白いのも事実。フライを自分の思い通りに扱えるようになったときに待っている楽しさは、それまでの苦労を補って余りある。「難しそう」と尻込みせずに、Aさんのように、思い切ってチャレンジしてみてほしい。