都内で20日に行なわれた映画『東南角部屋二階の女』の公開初日舞台挨拶に、西島秀俊、加瀬亮、竹花梓、香川京子、池田千尋監督らが顔をそろえた。

左前列より池田千尋監督、香川京子、竹花梓。後列左より大谷英子、加瀬亮、西島秀俊、塩見三省。登壇者が現場での様子を「とても幸せでした」とそれぞれ口にするのが印象的だった

西島秀俊

主演の西島秀俊は時折笑顔を見せながら、「控え室が皆いっしょで楽しく、撮影が終わっても、帰る気がしなくてまだ残りたいぐらいの幸せな現場でした」とあいさつ。「共演の香川さんに、溝口(健二)監督や黒澤(明)監督など偉大な監督の現場の話を聞き、興奮しました」と楽屋でのエピソードも明かした。また舞台となった古いアパートが祖母の家に似ているとも話した。

加瀬亮

西島の後輩役を演じる加瀬亮は、「映画というものに純粋に向かい合って、作り上げたのは久しぶりでした。この作品にはすごく不思議な変な時間が流れていると思います。監督は立ち位置など何も決まっていない状態から始めさせてくれるので、何が起きるか全然わからない。その自由度が楽しくもあり、大変でもありました」と語った。

二人の"だめな男"と共同生活をすることになる竹花梓は、「現場は楽しい雰囲気で、本当に映画が好きな方ばかりでした。映画への愛情があふれていて、それが作品にも表れていると思います」とにこやかに話した。

池田監督は、この作品がデビュー作。黒沢清監督(『回路』『トウキョウソナタ』など)も絶賛する27歳の新人女性監督である。「すばらしいスタッフ、素敵な役者さんに支えられて映画を作り、とても幸せでした。見終わった後、この映画が観客の皆さんの日常に入っていくような作品になっていればうれしい」とコメントした。

穴あきジーンズで登場した池田監督は27歳。ベテラン・香川京子いわく「若いけれど、とてもしっかりした方」だとか。マイクを持って挨拶しているのは、本作がデビュー作となった大谷英子。初めての舞台挨拶に終始緊張気味だったが、共演陣が舞台上であたたかく見守っていた

西島、加瀬の共演は「好きだ、」(2006年)などに続き3度目。映画ファンにとってはたまらない二人のタッグとなったが、相手の印象を西島は「その場に起こっていることに豊かに感情を表現される役者さん。緊張感があって共演していて楽しかった」。加瀬は「向かい合ってこんなにわくわくする役者さんはなかなかいない」とコメントし、うれしい"相思相愛"ぶりを見せていた。

ストーリー: 死んだ父親の莫大な借金を背負い、祖父の土地を売ることを考える元会社員の野上(西島秀俊)。野上の後輩で、彼と共に突発的に会社を辞めた三崎(加瀬亮)。野上の見合い相手で、結婚で人生の安定を手に入れようとするフードコーディネーターの涼子(竹花梓)。この3人が古アパートに住むこととなり、同じ場所と時間を共有して生まれる、"人生の休憩所"の物語だ。20日から渋谷・ユーロスペースほかで公開中