ガソリン代や食料品などの高騰が家計を直撃している今日この頃、ばかにならないのが、体調を崩してしまったときの医療費だ。やむを得ない支出ではあるが、知っていることで省ける無駄もある。今回は、そんな医療費を上手に節約するポイントを紹介しよう。

その1 - 時間外受診を控える

まず、診療所や病院にかかる際に知っておくとよいのが、医療機関が定める診療時間外の受診は、通常の診療費に規定の割増料金が加算されるということだ。たとえば、ベッド数が19床以下の診療所の場合、時間外受診は、通常の診療費に加え、初診で850円、再診で650円、休日だと初診2,500円、再診1,900円、深夜(22時~6時)だと初診4,800円、再診4,200円が追加される。さらに、2008年4月1日から施行されている診療報酬改正では、救急患者の診療を開業医にも分担してもらうという目的から、夜間、早朝、休日に診療所が診療時間と表示して診療した場合、前述の割増料金に加え、500円が加算されるよう定められている。また、小児科医が6歳未満の乳児を時間外、休日、深夜に診療した場合の初・再診料は、前述の料金より高く設定されている。もちろん、緊急時には時間外でも「割増料金がかかるから」なんてことは言っていられないが、やむを得ない場合以外、こうしたことも考慮して受診すると医療費の節約につながるだろう。

その2 - 大病院にはいきなり行かず、紹介状持参で

「小さな診療所ではなんとなく不安……」といった曖昧な理由から、いきなり大病院にかかるのも実は考えもの。ベッド数200床以上の大病院では、医師の紹介状(診療情報提供書)がない場合、初診時に診療費とは別に特別料金として保険外併用療養費(選定療養)が請求される(ただし救急車での搬送による緊急時など、この対象外のケースもある)。"高度で専門的な治療が必要な人のための施設"と位置付けられている大病院は、初診料を高くすることで、診療所や小規模病院でも対応できる軽い病気などを含めた患者の集中を避けうようというわけだ。上手な医者のかかり方のひとつには、日頃から地元に信頼できる「かかりつけ医」を持つことが挙げられる。気になる症状があれば、まずはかかりつけ医に診てもらおう。それでも納得がいかない、不安を感じる場合は、大きな病院で診察を受けたいという意向を医師に伝え、紹介状をもらったうえで大病院を受診しよう。紹介状があれば、初診時の上乗せ金額が差し引かれるだけでなく、いきなり初診でかかるよりも優先的に受診できるというメリットもある。最近では、公立の総合病院などで連携している地域のかかりつけ医を紹介しているケースもあるようだ。

その3 - 高額療養費制度

次に、一度支払った医療費の払い戻しが受けられる制度「高額療養費制度」を紹介しよう。高額療養費制度は、長期の治療や入院などで医療費の自己負担額が高額となる場合、ひと月ごとの自己負担限度額を超えた部分が保険から払い戻される。この制度が適用される自己負担限度額(表参照)は、所得に応じて算出され、70歳未満の人と70~74歳の人では算出方法が異なる。医療機関は医療費の内、保険負担分の支払いを公的機関へ請求する診療報酬請求明細書(レセプト)を計算し、同一の医療機関での診療が限度額を超えることや、入院時と通院時に支払った費用が別々に限度額を超える場合などを還付の条件としている。ただし、1人の負担が自己負担限度額に達しない場合でも、同じ月に同一世帯で医療費の自己負担額が2万1,000円を超えるケースが2件以上生じたときは、それらを合算して自己負担限度額を超えた金額が支給される。なお、差額のベッド代や入院時の食事療養費、生活療養費といった自己負担額は対象外となる。

高額療養費の自己負担限度額(1カ月あたり)(参考:社会保険庁)

70歳未満の場合

ランク 外来・入院 外来・入院の限度額(*)
上位所得者
(標準報酬月額53万円以上)
15万円+(総医療費-50万円)×1% 8万3,400円
一般 8万100円+(総医療費-26万7,000円)×1% 4万4,400円
低所得者(住民税非課税世帯) 3万5,400円 2万4,600円
*これらの金額は、同一世帯で1年間に3回以上、高額療養費の支給を受けている場合の限度額

70~74歳の場合

ランク 外来(個人ごと) 外来・入院(世帯ごと) 外来+入院(世帯ごと)の限度額(*1)
現役並み所得者
(標準報酬月額が28万円以上、かつ年収が夫婦世帯で520万円以上、単身世帯で383万円以上)
4万4,400円 8万100円+(総医療費-26万7,000円)×1% 4万4,400円
一般 2万4,600円 6万2,100円 4万4,400円(*2)
低所得者II(住民税非課税) 8,000円 2万4,600円 -
低所得者I(年金収入80万円以下等) 8,000円 1万5,000円 -
※1これらの金額は、同一世帯で1年間に3回以上、高額療養費の支給を受けている場合の限度額
※2「一般」区分の自己負担限度額は、2008年4月から1年間は、外来(個人ごと)は1万2,000円、外来+入院(世帯ごと)は4万4,400円に据え置き

その4 - 税金の医療費控除

医療費そのものが払い戻されるわけではないが、1年間に支払った医療費が一定額を超える場合、税務署で確定申告すれば所得税の医療費控除が受けられる。これは、"所得"とみなされて課税されていた医療費の自己負担分が課税対象から外されるため、過払いとなっていた所得税が還付されるというもの。医療費控除の対象となるのは、確定申告を行う本人と扶養家族の医療費で、対象金額は、「(実際に支払った医療費の合計額)-(保険金などで補てんされる金額)-10万円(その年の総所得額が200万円未満の人は、総所得金額の5%の金額)」という計算式で算出される。医療機関での診療費や薬剤費のほか、病気やけがの治療のために薬局で購入した市販薬の代金も控除の対象として認められる。医療費控除の手続きには、医療費の領収書が必要になるので、10万円を超えるかどうかは別にして、病院でもらった領収書は1年間、捨てずに保管しておくのが鉄則だ。

その5- 乳幼児の医療費助成

また、乳幼児のいる家庭やこれから出産を考えている家庭では、乳幼児の医療費を一部、公費で助成する「乳幼児医療費助成制度」を覚えておきたい。この制度は、市区町村による子育て支援策のひとつで、自治体ごとに、助成内容やその方法、対象年齢等が異なる。たとえば、大阪の豊中市では、小学校就学前が対象で、通院、入院、入院中の食事代について助成されるが、給付には所得制限がある。一方、東京の町田市では、同じく小学校未就学児が対象となるが、小中学生の子供には別途、義務教育就学児医療費助成制度がある。乳幼児医療費助成制度で助成されるのは、保険診療の自己負担分で、入院中の食事代などは対象外。これまでも4歳未満の乳幼児には所得制限はなかったが、2008年10月以降は、全面的に撤廃されるといった具合だ。まずは、自分が在住する市区町村の制度の内容を確認しよう。

その6 - ジェネリック医薬品を選択する

医療費の中で、大きな割合を占めるのが薬剤費だが、これを節約する方法のひとつに「ジェネリック医薬品」を選択するという手がある。ジェネリック医薬品とは、"新薬"として最初に開発された薬の特許期限が切れた後に、他のメーカーが製造した同じ成分・効果の薬だ。莫大な費用と時間を費やして開発された先発医薬品に比べ、特許期限が切れることにより研究・開発費分の負担が軽減され、国が新薬の2~8割の価格に設定している。高血圧症や糖尿病といった慢性疾患で長期に薬を服用する場合は、ジェネリック医薬品を選択することで、薬剤費の負担がだいぶ変わってくる。国も使用を推奨していることから普及が進んでいて、全国の病院や診療所、保険薬局で処方・調剤されている。さらに2008年4月より、ジェネリック医薬品の利用を促進するため、従来、ジェネリック医薬品への変更が可能なものにだけ「変更可」と記されていた処方箋の様式だが、今後は変更不可能な場合にのみ医師が「変更不可」とサインする形式に改定され、薬剤師にはジェネリック医薬品に変更できるかどうかの説明義務が課せられている。自分の薬はジェネリック医薬品に代えられるかどうか、まずは医師や薬剤師に相談してみよう。

また、風邪などでちょっと体調を崩したというような軽い症状の場合、薬局やドラッグストアなどで購入できるOTC医薬品(大衆薬)を上手に活用するのも、医療費節約につながるだろう。2009年4月には大衆薬販売の規制が緩和され、コンビニ各社が大衆薬販売事業の本格参入を表明している。こうなると、大衆薬はますます手に入りやすい状況になるだろう。ただし、安易な自己診断にはくれぐれも注意したい。