前作から7年、待望の新作が登場!
ハムナプトラ。ハムナプトラ。ハムナプトラ。
思い切り早口で3回繰り返すと舌を噛んでしまいそうになるタイトルですが、世界中で大ヒットした映画シリーズですのでご存じの方も多いことでしょう。
一作目『ハムナプトラ 失われた砂漠の都の公開が1999年。当時10代だった僕にとっての思い出の映画でもあります。どんな思い出があるかというとそれはそれは甘酸っぱい……っと、そんな個人的な話はどうでもよくて、「ハムナプトラ」シリーズって何だよという方のために簡単に概要をご紹介すると、一作目の舞台は1924年。主人公リック・オコーネル(ブレンダン・フレイザー)とヒロインのエヴリン(レイチェル・ワイズ ※3からはマリア・ベロ)が、現代に蘇った3,000年前のミイラ・大神官イムホテップ(アーノルド・ヴォスルー)と戦う物語でした。
このイムホテップがまた、長身でスキンヘッドで目がギラギラしているという、子供が見たらちょっとしたトラウマになってしまいそうなインパクトある容貌の持ち主で、個人的にはただイケメンなだけの主人公よりもはるかに印象に残っています。
そして、2001年に公開されたシリーズ二作目『ハムナプトラ2 黄金のピラミッド』でも、やっぱりラスボスはイムホテップ。お前は何度復活すれば気が済むんだ、とツッコみたくなるほどのしつこさで、僕たちを爆笑の渦に……いや違った、恐怖の渦に叩き込んでくれたものでした。
おっと、今回は『ハムナプトラ3』の話なのに、前作までの敵の話を長々としてしまいました。つまりは、それほどまでにイムホテップはインパクトのあるキャラクターだったということです。
今回、『ハムナプトラ3』が公開されると聞いたとき、僕の最大の懸念はそこにありました。はたして、あのイムホテップを超える敵を登場させることはできるのか――。
ちなみに『ハムナプトラ3』でも、主人公は一作目から変わらずオコーネルですし、二作目で登場したアレックス(主人公とヒロインの息子)が成長して今回も登場するなど、いろいろと見どころは他にもあるのですが、そんなことは僕にとっては些細なことで、とにかくラスボス! ラスボスがどんな男なのか、ということだけが気になっていたのです。
生半可な相手じゃ、あのイムホテップのインパクトを超えることはできないぜ……?
ということで、今回の敵となる"とある男"の画像を入手しましたので、さっそく見てみましょう。
ジェット・リーかよ!
……超えたわ。
もうね、人選の段階でイムホテップ超えたわ。
てなわけで、今回イムホテップに変わって敵となる男は、ジェット・リー演じる「皇帝」。なんか結局最後まで名前が出てこなかったので、今回のレビューでは便宜上皇帝のことをジェット・リーと呼ばせてもらいます。
今度の舞台は……なんと中国! アジアの地でミイラバトルが始まる!
さて、ネタバレにならない程度に物語をご紹介させていただきますと、本作の舞台となるのは前作からさらに13年後となる1946年の中国。
2,000年前、この広大な国に君臨し権力を欲しいままにした皇帝ジェット・リーは、多くの権力者がそうであるように、永遠の命を求めて呪術師の娘ツイ・ユアン(ミシェル・ヨー)と自らの部下ミン・グオ将軍(ラッセル・ウォン)をシルクロードへと旅立たせます。
実はこのツイ・ユアンにちょびっと惚れていた皇帝ジェット・リー。しかし、若い男女を二人きりにしておくと何があるか、それはもちろん皆さんのご想像通りのことが起こるわけで、無事秘術を見つけて旅から戻ってきたユアンとミン将軍は、hitomiで言うところのLOVE2000状態になっていました。
結果的にふられた形になった皇帝ジェット・リーは、大人げなく怒り狂ってミン将軍を処刑しまいますが、そんな残虐な仕打ちに今度はユアンがぶちギレ。
もともと呪術師である彼女の呪いにより、皇帝とその兵士たちは陶器に姿を変えられ、2,000年もの間眠り続けることになったのでした――。って、陶器になって2,000年てどんだけだよ! ドラクエ5もびっくりだよ! ……いやー、女って怖いわー。
……そして、それから2,000年後。
前作で冒険者から足を洗い、すっかり落ち着いた生活をしていたオコーネルと妻のエヴリン。しかし、ただ時間が流れていくばかりの退屈な日々に二人は飽き飽きしていました。
そんな折、外務省から伝説のダイヤ「シャングリラの眼」を上海の博物館に戻しに行ってほしいという依頼が入り、二人は久しぶりの旅にワクワクしながら中国へと飛び立ちます。一方、彼らの息子で前作ではまだほんの幼児だったアレックスは、本作ではもうすっかり大人。
アメリカのハーバード大学に留学していたはずのアレックスでしたが、両親に内緒で大学を退学し、中国の遺跡で考古学の現地調査に参加していました。シリーズ物を見てきた人ならわかると思いますが、血は争えないってこのことですよね。
で、ひょんなことからアレックスが2000年間眠っていた皇帝ジェット・リーを発掘したことから、事態はとんでもない方向へと展開していくことになります。
あとはもう映画をご覧いただくのが一番なのですが、せっかくなので本作の見所を簡単にまとめてみたいと思います。
見所1:ジェット・リーの華麗なアクション!
先ほどもしつこいぐらい書きましたが、"ラスボスがジェット・リー"というキャスティングが最高です。本作は前作までと異なりロブ・コーエンが監督なのですが、彼がこの仕事を引き受けたときの条件が、ジェット・リーを起用することだったのだとか。ナイスです監督!
そのジェット・リー、本作では炎やら氷やらを自在に操る能力を持って暴れまわっており、確かにその力も恐ろしいのですが、でもそんなのはイムホテップもやってました。
ジェット・リーの恐ろしいところは、たとえそういう超能力がなくなったとしても素の状態で人類最強という点にあります。というかぶっちゃけ炎の魔法とかよりジェット・リーの蹴りの方が怖いっス!
で、そんなファンのために、映画の冒頭ではジェット・リーが暗殺者に襲われるシーンがありまして、3分ほどの間、ものすごく華麗なアクションを披露してくれます。
最初はもしかして暗殺者にジェット・リーがやられてしまうのかと思いながら見ていたのですが、そんなことはなくて、普通にジェット・リーが暗殺者をボコボコにした上に、別に何の伏線でもありませんでした。
要するに、難しい話はどうでもいいからとにかくジェット・リーのアクションシーンを早く見せて! ……というファンのために用意された、単なるサービスカットだったみたいです。
ということで、ジェット・リーが出るのはいいけど、肝心のアクションは映画の後半にならないと見られないの? という心配はご無用ですので、ファンの皆様におかれましてはどうぞ心おきなく映画館に足を運んでいただければと思います。
見所2:本作でハリウッドデビュー! ニューヒロイン・リンを演じるイザベラ・リョンに注目!
シリーズを通してのヒロインはエヴリンなのですが、もう彼女は人妻。それよりも僕は本作でハリウッドデビューを果たした若きニューヒロイン、イザベラ・リョンに注目したいと思います。
あらすじでは彼女の登場まで触れませんでしたが、イザベラは謎の美少女リンとして、物語のかなり重要な役どころで登場します。
1988年生まれの彼女は、香港ではすでにトップ女優&シンガーなのだとか。しかもこの映画に出るために英語を勉強し、スクリーンテストから撮影までのわずかな期間でマスターしたというのですから恐るべし。僕も将来インタビューするときに備えてちょっと『えいご漬け』買ってくるわ。
……今回、「ハムナプトラ」という有名なタイトルで堂々たるハリウッドデビューとなったイザベラ・リョン。今後はさらに活躍の場を広げていくだろうと思いますので、今から注目ですね!
見所3:シリーズの名物キャラ、ジョナサン健在なり!
ハムナプトラの登場人物で、イムホテップの次に誰が好きかと聞かれればやはりこの男を挙げないわけにはいきません。
エヴリンの兄であり根っからのお調子者のジョナサンは、過去のシリーズでも余計なことばっかりしては事態を悪い方向へ進めてしまう"うっかり八兵衛"的なポジションでおなじみ。
設定では前作からだいぶ時が経っているので、いったい何をしているのかと思いきや、上海で「イムホテップ」という名前のナイトクラブを経営していました。そのクラブで踊るダンサーたちは全員古代エジプトをイメージした服を着たセクシーな女性たちばかり。
……ほんと、たくましいというか、転んでもただでは起きないというか……。
そんなジョナサン、中国が舞台ということで、今回もばっちりオコーネルパーティーに加わり、いつものようにお笑い部分を担当しています。
前作以上にツッコミがいのあるキャラクターとなっていますので、思う存分笑い転げてやってください。
ツッコミながら見るもよし。手に汗握りながら映像を堪能するもよし。
いろいろと書きましたが、前作が正当進化した続編なら、本作はちょっと斜め上に進んだ亜種というイメージでしょうか。とはいえ物語の根底にある「冒険」「探究心」といったテーマは変わることなく受け継がれており、シリーズのファンにも、そして今回初めて「ハムナプトラ」を見るという人にも、すんなり受け入れられる最高の娯楽ムービーに仕上がっています。
相変わらず物語にツッコミどころや都合のいい展開が多いのはご愛敬。それを超えるアクションシーンの迫力や、CGの美麗さに酔いしれながらご覧いただければと思います。
特にCGは前作もすごかったのですが、今回はさらにすごいことになっており、特に中盤の雪山のシーンと後半の大規模な戦闘シーンは、同じ冒険映画の大ヒット作「インディ・ジョーンズ」シリーズを上回るかもと思うほどのクオリティで、片時も目が離せません。
……んで、まさかそんな人はいないと思うけど、考古学という単語に"学術的なもの"を期待していくとがっかりするので注意してね。
あと蛇足なんですけど、最後につっこませていただくと、そもそも「ハムナプトラ」の由来ってエジプトにある死者の都の名前だったはずなんだけど……もう全然関係ないじゃん!
山田井ユウキ
レビューサイト「カフェオレ・ライター」主宰。サイトでのP.N.は「マルコ」。映画はもちろんマンガ、ゲーム、さらにはBL作品に至るまで幅広くレビュー記事を執筆、その独特な視点とテンポのよい文章で人気を博し、連日30.000以上のPVを誇る
『ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝』は全国ロードショー中!