原油価格の高騰が止まらない。沖縄県の一部ではレギュラーガソリン価格が1L当たり200円を超え、家計に大きなダメージを与えている。また原油だけでなく小麦や砂糖といった食料の価格も値を上げつづけ、世はまさに「物価高騰時代」と言えよう。物価高騰時代を生き抜くにはどうしたらいいか? そんな誰もが知りたがっている問題に、テレビでもおなじみの経済アナリスト、森永卓郎氏がずばり切り込んだ。

原油価格の高騰の原因はずばり「投機」

獨協大学教授・経済アナリスト 森永卓郎氏
著書『年収300万円を生き抜く経済学』、『年収崩壊 格差時代に生き残るための「お金サバイバル術」』

1バレル3ドルの原価しかない原油が7月上旬現在、145ドルで取引されるのはなぜか。その謎について森永氏はこう語る。「石油の埋蔵量は今から29年前、あと30年で枯渇するといわれていた。しかし今はあと150年分あるともいわれており、原油枯渇の心配は少ない。値上がりの原因は中国やインドなどの需要が逼迫しているというが、ほとんどその影響もないといえる。さらに現実に石油不足が起きているわけでもない。つまり、高騰の主因は投機によるものだ」。ニューヨークのNYMEX(ナイメックス)の取引は全世界の0.5%にも満たない先物取引の価格であるが、世界中の石油価格を決めているという。ではなぜ以前のように価格は下がらないのか。それは中東でイラク戦争やイランとの緊張のため、石油廉売の抜け駆けをする生産国がなく、価格が下がらなくなっているからだ、と氏は予測する。

上がり続ける物価、消費者物価指数は2%へ

また物価指数が低く感じるのは統計のマジックにすぎない、と森本氏。デジタル家電、PCの急激な値下がりによって指数の平均が押し下げられているという。

国内の消費者物価指数は5月は1.5%増、年内に2%台に入るのは経済アナリスト間では確実視されているようだ。なかでも小麦粉や砂糖などの食料素材、ガソリンなどの上昇に伴い、お菓子の上昇は急激だ。「アイスクリームが100円だったものが120円、カップヌードルは150円が170円に値上げ。ミルキーは値段据え置きだが個数を減らしているし、うまい棒は10円のままだが8gを6gに減量した。このように加工食品の値上げ率はとても高くなっている」(同氏)。

日本の物価はあと一年近くは高止まり?

この物価高騰はいつまで続くのだろうか。森永氏はアメリカの年金基金の動きに注目している。米年金基金が商品投機にまで資金をつぎ込んでいるという。年金をギャンブルと同等の投機につぎ込んでいる姿をおかしいと指摘する。このひずんだ状態をおかしいと思わない人が増えていることに、アメリカのバブルは終末に近づいているのではと森永氏は予測する。ひるがえって、日本の政治を見ると、日本政府は財政出動ができない、金融緩和ができないと手詰まり状態だという。こうした無策が続くようでは残念ながら、日本の物価はあと一年近くは高止まりするのではないかと森永氏は見ている。

長続きする節約は郊外に住むこと

最後に、講演会の後半はタイトルにもなっている諸物価高騰を生き抜くさまざまな知恵を披露していただいた。森永氏によると、あと一年は辛抱して過ごす方法を考える必要があるようだ。「まず皆さんに言っておきますが、お金を増やしたい人は見栄を捨てることです。見栄を張るとお金がかかりますよ。なまじっか地位のある役職になると、いくら給料が良くても体面を気にするあまり、無駄なお金を使ってしまうんですね。よその家と張り合って、家や車、子供の教育などで意味のない消耗戦に入ってしまいます。それが一番無駄ですよ。見栄を捨てて節約を長続きしないとお金は貯まりませんよ」と語る森永氏。

では長続きする節約とは何か。それは、家賃などの固定費を徹底して下げておくことだと森永氏は断言する。住宅ローンは借り換えや金利の引き下げ交渉で下げるのがベストだという。続けて氏が言うには「郊外に住みなさい。間違っても都心は避けましょう。郊外に住むと物価は半分以下になります。」と自身も埼玉県の郊外に住む森永氏は説明した。

自動車も固定費を下げられるもののひとつだという。「大衆車にしなさい。それも大衆車のマニュアルシフトがいい。こまめにシフトチェンジして走るだけで燃費はずいぶん良くなります。ハイブリッド車を買うよりもはるかに安く付きますよ。」氏のクルマは当然大衆車。交通事故でドアが壊れたことがあったが、廃車から取り外したドアをつけるだけで済んだため、費用はたったの1万2000円。「大衆車はたくさん売れていますから、いくらでも安くパーツが手に入ります。カー用品ショップのセールでも目玉商品は大衆車のパーツです」

小さな節約も集めることで大きな効果となる

森永流毎日の料理代を節約する極意も披露していただいた。

  • 料理は一週間分まとめ買い、まとめ作りする。
  • メニューは決めずに買物に行くこと。
  • セール品、特売品など安いものだけを購入する。
  • 買ってきた食料品を並べてようやく献立のメニューを考える。
  • 1週間分のメニューが浮かんだらその献立を一気に作り、あとは冷凍して一週間かけてゆっくり食べる

このほか、細かい無駄を省くことで大きな節約になると森永氏。たとえば、携帯電話はショップに出向いて、一番安いプランになるよう契約を変えてもらう。固定電話なら、屋内配線を買い取るだけで毎月60円安くなる。さらに、IP電話に交換するだけで基本料と通信費が下がる。

そして、究極の節約術は「ものをもらう事。一番のコツはもらう時に偉そうにしないことかな。いらないものを渡されても嬉しそうな顔をしておきなさい。そうすれば次はいいものをもらえる」こともあるという。

世界経済から日本の政治状況、そして食費を切り詰める知恵まで、さながら辻説法の様な硬軟入り混じった森永氏の講演会は、経済アナリストならでは鋭い分析も感じさせるものだった。