酒類総合研究所・日本酒造組合中央会・日本酒造組合中央会はこのほど、東京・池袋にて「日本酒フェア 2008」を開催した。第2回目となる今回は、約3,500人が来場した。

「平成19酒造年度全国新酒鑑評会公開きき酒会」開場前の行列。先頭の人は1時間前から並んでいた

会場は2カ所に分かれている。全国新酒鑑評会の入賞酒約500点が利き酒できる「平成19酒造年度全国新酒鑑評会公開きき酒会」と、各都道府県の酒造組合や任意団体がブースを出している「第2回全国日本酒フェア」だ。全国新酒鑑評会は約100年続く歴史がある。かつては東京・滝野川の醸造試験場で行われ、全国から杜氏の集う風景が得も言われぬ郷愁を漂わせていた。

醸造試験所跡地公園。今は酒類総合研究所の東京事務所がある

山田錦の人気

まずは出品酒の傾向を見てみよう。日本酒好きな方は「YK-35」というキーワードをご存じだろう。全国新酒鑑評会で金賞をとるためのひとつの目安として語られてきた。これは山田錦 = Yと協会9号系酵母(熊本酵母) = Kを使用し、精米歩合を35%以下にすることを意味している。つまり、米の2/3(65%)を除去することになる。

最近はこのレシピの一部が入れ替わり、「YM-35」に人気が集まっている。出品酒の統計では、協会9号系酵母から協会10号系酵母(明利小川酵母) = Mへと人気が移行しているのだ。明利小川酵母は「十四代」の高木酒造発祥という説もあり、吟醸香がはっきりと出る酵母として知られている。

一方、米に関しては山田錦の圧倒的な人気が続いている。全国新酒鑑評会は出品区分が「山田錦の使用量が50%以下(第1部)」と「50%を超える(第2部)」の2つに分かれるが、今年年は第1部の出品数が129点で、第2部が828点だった(なお、全国新酒鑑評会の審査基準等については、酒類総合研究所オフィシャルサイト内にて公開されている)。

全国新酒鑑評会の魅力の1つは、地域ごとに日本酒を比較できることである。灘の男酒(辛口)、広島の女酒(甘口)など、飲み比べてみると地域性が浮かび上がってくる。また、東北は低温長期もろみでの仕込みとなるが、暖かい地域では短期高温もろみが多くなる。ある酒造家は「(東北の酒は)搾ったその瞬間から飲める。暖かい地域だと米が溶けきらないので、搾ってから熟成期間が必要」と語った。会場内は「北海道・北東北」エリアから「四国・九州」エリアまで、地域別に分かれている。500点全てを利き酒するのは大変だが、参加者は真剣な表情で会場内をまわっていた。