日本劇場未公開の憂き目に合ったゾンビ・パロディ映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』で、映画ファンに一目置かれる存在となったクリエイター・コンビ、エドガー・ライト&サイモン・ペッグ。彼らが再びタッグを組み、イギリスで3週連続No.1のメガ・ヒットとなったのが、ポリス・アクション『ホット・ファズ-俺たちスーパーポリスメン-』だ。ファンの熱い署名運動により日本公開が実現した本作のPRのため、エドガー・ライトとサイモン・ペッグが来日。見どころや影響を受けた映画についてたっぷりと語ってくれた。

早朝の取材にも関わらずかなりハイテンションだったエドガー・ライト監督

落ち着いた様子で丁寧に応対するサイモン・ペッグ

古今あらゆる刑事モノを大研究、その成果が『ホット・ファズ』!

―――ミステリー、コメディ、アクションなど本作にはいろんな要素が含まれていますね

エドガー・ライト「ここ30年ほど、ポリスものというジャンルは、イギリスになかったと思う。だから僕は典型的なポリスもの、バディもの、アクションもの、連続殺人が出てくるスリラーもの……できる限り、ひとつの映画の中にいろんな要素を詰め込んでみたかったんだ」

海外のコメディ映画は日本でウケないというジンクスもあって、劇場公開が危ぶまれていた本作。その危機を救ったのは、公開を求める映画ファンの署名運動だった

―――リサーチのために約200本の映画をご覧になったそうですが、その中で参考にしたポリスものは?

エドガー・ライト「参考になったのは、『ダーティ・ハリー』(1971年)、『フレンチ・コネクション』(1971年)、『ハートブルー』(1991年)、『バッドボーイズ2バッド』(2003年)、『L.A.コンフィデンシャル』(1997年)、『ヒート』(1995年)、『リーサル・ウェポン』(1987年)、『ダイ・ハード』(1988年)などのポリスもののクラシックと言われている映画だ。質的にはイマイチでも参考になると思って、スティーヴン・セガールやチャック・ノリスの作品も観て、製作に生かしたよ」

―――サイモンさんは、今回熱血エリート警官というシャープな役を演じてらっしゃいますが、何かトレーニングを行ったのでしょうか?

サイモン・ペッグ「かなり節制して撮影に望んだ。ジムにも熱心に通ったし、約3カ月はこの映画に集中して生活したよ」

―――役作りの参考になった映画やキャラクターは?

サイモン・ペッグ「映画では、『ダーティ・ハリー』、『ターミネーター2』かな。T2のT-1000役ロバート・パトリックが手を振り上げて走るランニング・スタイル、『L.A.コンフィデンシャル』のエド・エクスリー刑事のキャラクターなどを参考にした。こうして、何事にもぶれないで邁進する男ニコラス・エンジェルを作り上げたんだ」

ヒットすることで変化したある部分

―――『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ-俺たちスーパーポリスメン-』の成功によって、生活は変わりましたか?

エドガー・ライト「世界が小さくなったように感じたよ。こういう機会がなければ、行くことはなかっただろうと思うような国も訪れることが出来た。日本にも来れたしね。そして、長年、僕が憧れ影響を受けてきた人たち……主に監督なんだけど、クエンティン・タランティーノ、本作にカメオ出演してくれたピーター・ジャクソン、サム・ライミ、ウイリアム・フリードキン、リチャード・ドナーなどに会うことができて、彼らが僕の映画を観たよと言ってくれたことは最高だった。そして、ここに座っていること自体が、成功の証みたいなものさ」

サイモン・ペッグ「それ以外は、特に変わってないよ。エドガーは今ロサンゼルスに住んでいるけど、僕はずっと妻と北ロンドンに住んでいるしね」

―――『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ-俺たちスーパーポリスメン-』には、過去の映画のパロディやオマージュが含まれていますが、こういったパロディものを作るのも観るのもお好きなのですか?

サイモン・ペッグ「もちろん、ゾンビや警官ものが好きだから、こういった映画を作ったんだよ」

エドガー・ライト「パロディの中でもいろいろと違いがあるよね。僕は、好きな映画に対するラブレターを送るような愛情溢れるものがパロディだと思っている。メル・ブルックスが出てくるような古きよき時代のものは素晴らしい。最近のパロディものはシニカル過ぎる、っていうか愛情がなく嫌味なものが多いように感じるね」