意外!? 蓋は受け皿代わりに使ってもOK

手で持てない大きな器の場合、蓋付きならばその蓋を受け皿に使ってもよい。これは、意外に思われるかもしれないが、マナー違反ではない。また、締めの食事の際はご飯と汁椀を持ちかえるたびに箸を置かなくてもよい。箸を持ったままご飯と汁椀を入れ替えて食べてよい。

蓋は受け皿として使ってもマナー違反ではない

食べ終わった後、蓋はどうするの?

蓋をひっくり返してお椀に重ねたり、少しずらして蓋をするのはNG

蓋付きのお椀が出てきた場合、まずは左手をお椀に添えてしっかりと持ち、右手で蓋を「の」の字を書くようにして開ける。そして蓋を両手で持ち、置く。お椀を持つ際は両手で持ち上げ、その後左手をお椀の下に。ひと口吸い地を吸い、次に箸を手に取って実を食べる。お椀を置く場合はまず箸を箸置きに置き、お椀を両手で持って置く。

読者の方の中には、食べ終わった時に蓋をひっくり返してお椀に重ねたり、少しずらして蓋をする方もいるのではないだろうか。しかし実は両方ともマナー違反である。正しくは、「蓋を両手で持ち、出てきた状態と同じように蓋をする」である。「食べ終わった後の器は、人が見た時にきれいに見えるかどうかを意識して片付けましょう」と野口さん。

"淡白なもの→脂ののったもの"がお約束

食べ方の順番としては、"淡白なものから脂ののったもの"がお約束。そうすると、お造りの際に使う醤油も脂で汚れず、それぞれの味が楽しめるのだ。また、山葵は香りが命なので醤油にいれず、魚に直接つけて食べたほうがよい。お造りの皿に入っているものはすべて食べられるので、ツマまで味わおう。お造りには生海苔も盛られている場合があるが、醤油に溶くと広がってしまって食べにくいので、まず箸先に醤油を付け、その箸で生海苔をつまむときれいに醤油をつけることができる。

お造りの後には焼き物で鮎が。キレイに骨抜きできるコツも伝授

約2時間の講座で印象的だったのが野口さんの教える姿勢。会場には20名程度の参加者が集まっていたが、一カ所に留まることなく会場内を歩いて各参加者に箸の持ち方、お椀の持ち方を手元を見せながら丁寧に教えていた。今後、同講座は夏・秋・冬と続いていくが、「全コース受講して日本料理を極めたい! 」と思えてきた。だって私たち、日本人ですから。日本料理のマナーは必要最低限のマナーとして習得しておきたいじゃないですか。

デザート用の皿には、人間国宝井上萬二先生の作品が使われていた。器を楽しむのも懐石の楽しみ

プロフィール
野口美智子さん
懐石<蒼樹庵>女将。1974年京王プラザホテル入社。以後中国料理、洋食レストランなどを経て1978年に日本料理店舗へ配属。2005年、懐石料理<蒼樹庵>オープンと同時に女将に就任。現代日本料理食卓作法講師の資格を持つ。

園部政視さん
懐石<蒼樹庵>料理長。1979年京王プラザホテル入社。以後日本料理調理一筋で、2005年現職に。