各界の講師9人が説く建築と健康の関係

斜め天井の部屋で寝ると、不眠症になって発ガン率が高まる。一般家庭の室内は、公害まみれの工場地帯の96倍も空気が汚れている。コンクリート住宅に住む人は、木造住宅に住む人より9年早死にする。そんな驚くべきデータが次々と紹介されたのは、東京・神田で開催された「日本建築医学協会2008年春の大会」。「予防医学としての住環境~室内環境学と建築医学~」をテーマとし、各界の講師9名による講演が行なわれた。

日本建築医学協会は、2006年11月に設立。建築学、住居学、医学および環境工学などの融合により、環境と心身の繋がりを解明し、住環境や職場環境によって病気を予防するだけでなく、積極的に脳を整え、心を活性化させる技術体系としての「建築医学」を提唱している。会長は、ホリスティック医学で知られる帯津良一氏(帯津三敬病院名誉院長)、名誉顧問には統合医療で知られるアンドルー・ワイル博士がいる。

今回の講演会では、医師、環境学者、建材メーカー経営者などさまざまな立場の講師が登壇して、それぞれの経験や立場から住環境と健康について講演が行われた。会場では、建築家や医師を含む約400名の参加者が熱心にメモを取りながら聞き入っていた。本レポートでは、9つ講演の中から、とくに建築と医学の関係が深い話をまとめてみたい。

会場には、約400名の参加者が集まり、長時間の講演を熱心に聞き入った

医師である亀井眞樹氏は、自らの診療所で統合医療を実践している

医師で日本建築医学協会理事でもある亀井眞樹氏は、人間にとってどれが欠けても立ち行かぬはずの「衣食住」だが、「住」の影響は明らかに認識不足だと語る。医学的に適切な治療を行なっても明らかに効果に限界がある場合、住環境に問題があるといったケースにしばしば遭遇することがあるそうだ。氏が発表した研究データによると、実際、斜め天井の部屋で寝ると不眠症になりやすく、体温が低くなって発ガン率が高まる、あるいは梁のあるオフィスでは欠勤率が高まり生産性が落ちるそうだ。

さらに亀井氏は、今後数年内により多くのデータが集積、共有され、住環境と健康の関係が明らかになっていくと続ける。「医師や研究者が発信するそうした研究成果を、一般の人々が享受できるようにするには、経済的にも合理性のある家作りの仕組みが不可欠。そのためには、建築界から優秀なディレクター、敏腕なプロデュサーが現れることを期待する」と述べ、場内の建築関係者に訴えた。