4月16日~21日、世界最大のインテリアデザイン・エキビジションである「ミラノ・サローネ」こと「ミラノ・デザイン・ウィーク」がイタリアで開催された。世界各国から、インテリア産業関係者や約5,000人のジャーナリストが集まり、2008年度のトレンドの"芽"を探して、熱く厳しい視線を送るこのイベントは、トヨタやキヤノン、松下電工などの企業も日本から出展した。現地より、日本企業の展示模様などをお届けしよう。

国際家具見本市を中心としたFiera会場(下右)の「I Saloni」では、過去最多となる34万8,000人(昨年比29%増)という入場者数を記録。同会場外でも、600カ所を超えるスポットでデザイン・イベントが開催され、ミラノの街自体がショーケースになった

日本企業を先行する日本人デザイナーの活躍

現地ミラノでは、各日本人デザイナーがプロダクト、インテリア、建築などの領域を超えて活躍する姿を見ることができた。例えば、2001年紙の椅子「Honey-pop」以来、世界が注目する吉岡徳仁氏がインテリア誌「INTERNI」の表紙を飾る。また、イタリア版「AD(アーキテクチュラル・ダイジェスト)」誌には、「Tokujin Yoshioka,Naoto Fukasawa,Shigeru Uchida,S/T Azumi,Toyo Ito」と名前を挙げながら「design giapponese (日本デザイン)」に注目するコメントが掲載されていた。そんなデザイナー達の活躍に導かれるように、日本企業が"デザインの聖地"ミラノ・サローネでプロダクト展示や空間アートの展示を行うというのが、近年見られるようになった動きだ。

LEXUS -elastic diamond- bynendo(佐藤オオキ)

nendo佐藤オオキ氏。nendoは、建築、インテリア、イベントの会場構成、家具、プロダクト、グラフィックといった多岐にわたる分野を手がけるデザインオフィスで2002年に佐藤氏を中心に設立。ミラノにもオフィスを持ち、2006年には、Newsweek誌「世界が尊敬する日本人100人」に選出された

ミラノ・サローネはインテリアデザインの展示を主とするイベントだが、LEXUSはアーティストとコラボレーションして自社のデザイン哲学をアートエキジビションとして表現し、ブランドのイメージアップを狙っている。2005年から4回目の出展となる「L-finesse 先鋭-精妙の美」をテーマとした空間アートは、ヨーロッパでも評価の高いnendoの佐藤オオキ氏を今回のコラボレーションアーティストに迎え、ダイナミックに展開した。

[-elastic diamond-]。ダイアモンドの結晶構造に着想を得た「軟らかいけど強い」というコンセプトのインスタレーションは、「diamond bubble」と名付けられた球体のオブジェがブルーの光と共に動く幻想的なものとなっていた。

「diamond bubble」。上部がゆっくりと開閉し、まるで呼吸をしているよう

「diamond chair」
520(W)×520(D)×580(H)mm

共に展示されていた椅子「diamond chair」は、3次元CADデータをもとに、レーザーで粉末状のナイロンを硬化し形をつくるのだという。その工程を写した映像が流され、見学者の目を引いていた。

「diamond chair」の製作工程

奥のスペースに進むと、高い天井へと伸びた柱状のオブジェが「LEXUS LF-Xh」を取り囲んでいた。「LF-Xh」は、’07年東京モーターショー発表のコンセプトモデルで、次世代SUVのフォルムを実現している。心臓の鼓動のような音響とオブジェが上下する動きで、人間の体内に居るような不思議な感覚におそわれる。LEXUSと佐藤オオキ氏による、世界を魅了できるコラボレーションだったと言えるだろう。

広い空間の奥に、上下に動くオブジェに囲まれてひっそりと佇む漆黒のLEXUSは、見るものに静粛な躍動感を与える。コンセプトである「L-finesse 先鋭-精妙の美」を構成する「二律双生(相反する事柄を両立させる)」という考え方に通じている