格安料金で豪華なフライトを……数多の航空会社が入り乱れる激戦区アメリカで、そんなコンセプトで新規参入を狙う航空会社の初フライトが間もなく行われる。英国の大富豪Richard Branson氏が率いる英Virgin Groupの航空子会社Virgin Americaが8月8日(米国時間)に、米カリフォルニア州サンフランシスコとニューヨークを結ぶ初フライトを行う予定だ。同区間の往復料金が300ドル前後と、格安航空会社として人気の高い米JetBlueや米SouthWestなどのライバルを意識した価格設定が特徴。また、すべての座席に"RED"と呼ばれる機内エンタテイメントシステムが装備されており、安価ながらも快適なフライトを楽しめるのをセールスポイントとしている。

チャリティーとしてeBayに出品されたJFK-SFOの初フライトのチケットオークション。2席分のファーストクラスのシートが用意されており、ここにはVirgin Group総裁のRichard Branson氏が同席する予定だ

Virgin Americaは2004年に米カリフォルニア州バーリンゲイムを本社に設立された航空会社で、サンフランシスコ国際空港(SFO)をハブにサービス展開を行う。Virginの航空会社としては英Virgin Atlanticなどがすでにあるが、Americaは米国内線を主力とすることで棲み分けを行っている。「米国内を拠点にする航空会社は米国民が所有する形態を採らなければならない」という規定の下、サービスインまでには紆余曲折あったものの、最終的に2007年5月に米運輸省より営業許可が下りた。同年7月にはチケット販売許可が下りており、チャリティー目的でオークションのeBayに出品した8月8日のJFK(ニューヨーク)-SFOの初フライトチケットが5400ドルの値をつけたことも話題となった。

激戦区での格安航空参入ということで話題のVirgin Americaだが、大きく注目を集めるもう1つの理由が機内エンターテイメントシステムの充実だ。REDと呼ばれるLinuxをベースとした機内エンターテイメントシステムでは、各座席に9インチのタッチスクリーンLCDと専用コントローラが備え付けられており、DISHなどとの契約による衛星TVや音楽プログラムを楽しめる。音楽ライブラリは3000曲を収録し、個人が自由にプレイリストを作って再生できるほか、SMSによるテキストメッセージングも可能。各座席はUSBポート、イーサネットポート、電源ポートを備え、携帯の充電や小型キーボードの接続、(将来的な)PCのインターネット接続も可能だ。片道1時間程度のフライトでは、サービスを満喫する前に目的地へと到達してしまうかもしれない。

サービスインにあたってVirgin Americaは仏エアバスのA319とA320の機材を導入しており、前述のようにSFOをハブにニューヨーク(JFK)とロサンゼルス(LAX)への2航路でスタートする。料金はSFO-LAXが片道44ドルから、SFO-JFKが片道139ドルからとなっている(税別)。続けて9~10月にはSFO-LAS(ラスベガス マッカラン国際空港)、SFO-IAD(ワシントンD.C. ダレス国際空港)の2航路が順次オープンする予定で、サンディエゴ便も年内の開設を予定しているという。同社によれば、サービスインから1年以内に10都市、5年以内に30都市の航路を開拓する計画だという。現在Virgin Americaの航空会社アライアンスへの参加予定は確認されていないが、ハブ空港が西海岸のサンフランシスコということもあり、日本からの旅行者やビジネスマンにも注目される航空会社となりそうだ。