2026年5月22日にNTTドコモグループの総合防災訓練が東京都内で実施されました。これまで何度か大規模な防災訓練を実施してきたNTTドコモですが、新しい技術の登場、そして能登半島地震など最近の災害を受け、その訓練にはどのような変化が生じてきているのでしょうか。→「ネットワーク進化論 - モバイルとブロードバンドでビジネス変革」の過去回はこちらを参照。
Starlinkの活用をより積極化
大規模自然災害が多い日本で、現在欠かせなくなっている通信インフラ。通信各社も大規模災害時のインフラ維持復旧に向けたさまざまな取り組みを進めていますが、平常時から災害発生時に備えた取り組みとして、各社が継続的に実施しているのが防災訓練です。
2026年5月22日、その防災訓練を報道陣に披露したのがNTTドコモです。同社は全国で大小さまざまな防災訓練を実施していますが、2~3年に1度、グループ全体での大規模な総合防災訓練を実施しており、2026年も2024年に続いて、東京都内でグループ全体での総合防災訓練が実施されていました。
今回は、首都圏直下型地震の発生を想定した訓練を実施。復旧に欠かせない移動基地局車や移動電源車などを会場に出動させて設置作業が進められたのに加え、避難所の支援に向けた取り組みなども披露されました。
当日はあいにくの雨天だったこともあって、自衛隊のヘリやドローンを活用した訓練は実施が見送られたものの、同社が持つ多くのアセットを活用して復旧に取り組む様子を見て取ることができました。
ただ、自然災害は激甚化に加え、発生した場所や内容によっても被害状況が大きく変わってくるだけに、携帯電話会社の側もそれに対応したさまざまな作業が求められます。それだけに今回の総合防災訓練では、これまでの訓練と比べ大きく変化している点もいくつかあるようです。
その1つは新しい技術の活用、より具体的に言えば衛星通信の活用強化です。地上の影響を受けない衛星通信は、被災した基地局を復旧するためのバックホールなどとしてこれまでも多く活用されてきました。
しかし、最近では従来の静止軌道衛星より地上との距離が近く、通信速度が速い低軌道衛星の「Starlink」を活用した衛星通信サービスが登場したことで、災害対策が大きく変化しています。
Starlinkは静止軌道衛星よりもアンテナのサイズが小さく、機材も1人で持ち運べるサイズです。それゆえ、今回の訓練においても車が入ることができない場所などにStarlinkの機材を持ち運んでバックホールとして活用し、移動電源車から電力供給を受けて基地局を復旧する取り組みがなされていました。
また、NTTドコモは2026年4月27日より、衛星・スマートフォンの直接通信サービス「docomo Starlink Direct」の提供を開始しています。基地局の復旧を待つ必要なく、衛星経由で緊急時もメッセージで最小限のやり取りができるようになったことは、とても大きな変化といえるでしょう。
能登半島地震で携帯4社の協力が大きく進展
今回の訓練により大きな変化を与えているのは、2024年に発生した能登半島地震だといえます。この地震では半島という場所で発生し、陸路が大きな影響を受けて道路の寸断などが多数発生したことで、被害を受けた基地局などにアクセスすること自体が難しく、復旧も困難を極めることとなりました。
それだけに訓練では、能登半島地震の経験を生かした取り組みが多く取り入れられており、その1つが軽自動車をベースにした移動基地局車の導入です。従来の移動基地局車は大型の車両が多かったのですが、陸路が大きな影響を受けた能登半島地震では、そうした大型車両が入ることができない場所が多く生じてしまいました。
そこでNTTドコモでは、小回りが利いてそうした場所にも入り込みやすい、軽自動車をベースとした移動基地局車を新たに用意。
バックホール回線にStarlinkを活用するなどして、従来の移動基地局車よりも軽量・コンパクト化を図りながらも、アンテナを伸ばして携帯電話の電波を射出し、基地局として活用できる仕組みが整えられているとのことです。
そしてもう1つ、能登半島地震の影響を受けた大きな変化が「つなぐ×かえるプロジェクト」の深化です。復旧に困難を極めた能登半島地震では、従来個社で進められてきた復旧作業を、携帯4社が互いのリソースを活用しながら協力して取り組むようになりました。
その成果を受け、NTTドコモを含むNTTグループと、KDDIが共同で取り組んできた社会貢献プロジェクト「つなぐ×かえるプロジェクト」に、ソフトバンクと楽天モバイルが参加。競合の4社グループが大規模災害時に協力する体制が整えられたのですが、今回の訓練ではそのことを意識した施策がいくつか見られました。
その1つは給油拠点の共用です。今回の訓練ではNTTドコモだけでなく、携帯4社が共同で利用できる仮説の給油拠点を構築し、日本BCPが運搬する燃料をその給油施設に供給することで、復旧の効率化を図っている様子が示されていました。
そしてもう1つは避難所の支援です。能登半島地震では各社がバラバラに避難所支援に取り組んだ結果、エリアによって支援の重複や遅れが生じるという問題が起きていたことから、つなぐ×かえるプロジェクトによって4社が情報を共有して支援するエリアを分担する体制を整備。
さらに、2026年5月18日にはモバイルバッテリーメーカー7社と協力し、電源確保が難しい避難所にモバイルバッテリーを届ける取り組みも進めるとしています。
また、つなぐ×かえるプロジェクトと直接関連する訳ではありませんが、携帯4社は大規模災害などの際に特定の携帯電話会社が通信できなくなった時、他の携帯電話会社の回線に自動的に切り替えて通信を確保する「JAPANローミング」を、2026年4月より開始しています。
すでに2026年4月、岩手県大槌町で山林火災が発生した際、NTTドコモの通信ができなくなったことを受けてJAPANローミングが発動しており、4社の協力によって大規模災害時、従来以上に通信を維持しやすい環境が整いつつあることは間違いないでしょう。
自然災害の激甚化は年々加速しているものの、各社が災害対策にかけることのできるリソースとコストには限界があります。それだけに、各社がこれまでの経験を共有し、協力して復旧に当たる取り組みはとても重要だと感じますし、今後は防災訓練の共同開催など、より踏み込んだ取り組みも求められる所かもしれません。






