テレビ市場 - パネル価格の下落でセット価格も下落

テレビ市場の動向について、IHS Markit コンシューマ―エレクトロニクス部門エグゼティブ・ディレクターの鳥居寿一氏が述べたことは以下のようなことであった。

  • 2018年のテレビ市場は、大型(55型)・4K・Smart TVが浸透しコモディティとなってきているが、8Kなど新しい目玉は不在である。パネル価格の下落がセット価格の値下げを引き起こす中で、価格下落に歯止めをかける材料に乏しい。
  • 2018年前半はサッカーW杯の季節変動により中南米・欧州などで出荷増となったが、この時期の出荷が多過ぎた地域(中南米)は後半で調整が入る可能性がある。
  • 有機ELテレビは、新技術開発と普及への課題が依然として残る。Samsung DisplayのQD-OLEDの事業がいつ実現するのかに注目。
  • 2018年後半に投入される予定の8Kテレビは遅れ気味で、立ち上がりは緩やかとなる。Samsungやシャープが新製品を投入し、販売店や消費者の反応を見る必要がある。
  • 8K対応のコンテンツが日本以外でまったく用意できていない中で、8K液晶テレビの価格が4K有機ELテレビよりも高いという価格設定となると先進国でも普及は困難だろう。中国などで55・65型4K液晶テレビの価格が急激に下がったことから、8Kテレビ普及に向けたハードルが逆に上がってしまった。

中国勢の参入で激戦区となるパブリックディスプレイ/モニター市場

IHS Markitコンシューマーエレクトロニクス部門ディレクターの氷室英利氏は、パブリックディスプレイ市場について、「年間400万台規模とテレビなどと比べて比較的若い市場であるが、中国メーカーが大挙参入してきており、大競争時代に突入した」と説明。そのため、コスト競争力に加え、各用途に適した品ぞろえや柔軟なソリューション、サービス提案力など、総合力の強化が、セットブランドの事業継続、生き残りの鍵になると指摘した。

また、モニター市場については、以下のようなことを述べていた。

  • モニターには依然としてノートPCやタブレットが実現できない「大画面、高解像度、高画質」に対する需要が根強く、市場規模としては漸減傾向が続くものの、ゲーミングモニターや特定業務用モニターに代表される付加価値モデルの増加が今後も当面続き、モニター需要の下支えとなっていく。
  • ゲーミングモニターは、eスポーツの浸透に伴い認知度も上がり、バンドルされるPCとの筐体のデザイン親和性に加え、HDR対応、240Hz対応など、機能面でも進化が進んでいるため、当面は堅調な動きが期待できる。
  • 一方、コストに対してマージンの少ない低価格モニター(20インチ以下)は一部の業務用モデルを除き減少が加速するだろう。
  • 直近の関連イベントは、2020年1月のWindows 7のサポート終了である。これに伴う2018年後半から2019年いっぱいまでの企業のOSアップグレードに合わせたPCの駆け込み需要動向が鍵となる。モニターの接続先が多様化されているとはいえ、PCの入れ替えの傾向がデスクトップPCからノートブックPC(またはその他のモバイルデバイス)へ移行が加速していく場合、IHSが予測しているモニター市場のシュリンクの度合いも加速される懸念がある。
  • 今後、Windows 10のサポートが永続的に続くとなると、明確な買い替え需要が起きにくくなる。そのため、低価格モデルを多くラインアップしているモニターブランドは事業の方向性を考える上で、正念場を迎えることになるだろう。

ノートPCもタブレットも販売台数の減少が続くPC市場

また、PC市場については、以下のようなことも述べていた。

  • 2018年のノートPC市場(台数ベース)は前年比0.2%減、タブレットは同6%減になると予測。ノートPCの減少の原因はドライバICとCPU不足による。ドライバICに関しては、台湾UMCがドライバICよりもパワーマネジメントICに注力することにしたため生じた。CPUに関しては、Intelの新型CPUの歩留まりが上がらず不足が発生しているほか、Googleの補助金打ち切りでChromebookが値上げされたことも影響している。タブレットに関しては、5Gインフラが整うまで通信事業者が積極的な販促活動を行わない見込みである。
  • 長期的に見ると、ノートPCは、Windows 7およびWindows Server 2008のサポート終了が買い替え需要を促進するため、2019年以降は緩やかに出荷が増えるとみている。タブレットは減少傾向が続くが、2020年の5G導入やストリーミングビデオ視聴機会の増加が需要を下支えするだろう。
  • 今後、注目されるPCとしてはゲーミングノートPCとAlways Connected PCがあげられる。eスポーツが2022年のアジア大会で正式種目に採択され、ゲームがメダルを争う「競技」になる。NVIDIAとAMDが7nmプロセスを採用したGPUを2018年中に発売することもPCアップグレードの機会創出につながるだろう。いつでもどこでもネットワークに常時接続可能なPCは搭載されるディスプレイには省電力が求められる。すでに数社が商品化しているものの、市場はまだ極めて小さい。まずは産業用や軍事用といった特定の市場で需要が立ち上がり、5Gインフラの普及に伴って一般消費者にも拡大していくことを期待している。

(次回は8月22日に掲載します)