この半導体ニュースのまとめ
・村田製作所が100GHz超のD-bandに対応した6G向けアンテナモジュールを開発
・135GHz帯での無線通信と最大8GHz幅の信号伝送、送受信双方の2次元ビーム制御を実証
・独自のLTCC基板技術とimecのビームフォーミングICを組み合わせ、2030年以降の市場投入を目指す
村田製作所は10月5日、6Gでの活用が期待される100GHz超の高周波帯「D-band(110~170GHz)」に対応したアンテナモジュールを開発したことを発表した。
通信評価では、135GHz帯での無線通信動作と最大8GHzの帯域幅での信号伝送に加え、送信側と受信側の双方で、電波のビームを上下左右へ向ける2次元ビーム制御を実証したという。
同社調べによると、低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)を活用したアンテナモジュールとして、D-bandへの対応と送受信双方の2次元ビーム制御を両立した世界初の成果としている。
6Gで100GHz超の周波数帯を活用
フィジカルAIやデジタルツインの普及に向けては、現実世界から得られる膨大なデータをリアルタイムに収集し、解析・活用するための高速・大容量通信が求められている。
通信容量を拡大するには、一度に送受信できる情報量を増やすため、広い帯域幅を確保する必要がある。一方、現在の4Gや5Gなどの移動体通信で主に利用される数GHz帯から28GHz帯までの周波数は、放送や衛星通信を含むさまざまな無線システムで利用されており、新たに広い帯域幅を確保することが難しくなっている。
こうした背景から、6Gでは移動体通信での利用が限定的だった100GHz超の周波数帯を活用し、数GHz規模の帯域幅を確保することが期待されている。
ただし、周波数が高くなるほど電波の波長が短くなるため、アンテナや高周波回路を微細に設計・実装する必要がある。わずかな配線長の違いや実装のばらつきも通信性能に影響することから、高い通信性能と小型化、実装性を両立するアンテナモジュールの開発が課題となっていた。
独自のLTCC技術とimec開発のビームフォーミングICを融合
今回のアンテナモジュールは、村田製作所とベルギーの研究開発機関であるimecとの共同研究によって開発が進められた。
村田製作所が材料から開発するLTCC基板技術を中核に、imecが開発したD-band対応ビームフォーミングICを組み合わせた構成となっている。
LTCCは、配線などを形成した複数のセラミックシートを積層し、同時に焼成する基板技術で、高周波信号を低損失で伝送できるほか、電子回路の小型化や高密度化に適している。
村田製作所は、今回の用途に向けてLTCC基板の材料を最適化し、低誘電率と低誘電正接の特性を実現した。これにより、100GHzを超える高周波帯でも損失を抑えた信号伝送を可能にしたとする。
送受信双方で2次元ビーム制御を実証
アンテナモジュールには、imecが開発したD-band対応ビームフォーミングICをLTCC基板へ組み込んだ形をしており、村田製作所の高周波設計技術やパッケージ技術を活用し、アンテナやRF配線などを微細かつ高密度に一体設計・実装することで、通信性能と小型化・実装性を両立したという。
100GHz超の高周波帯は、周波数が高くなるほど伝搬損失が増大する。そのため、複数のアンテナから送受信する電波を制御し、通信相手の方向へ集中させるビームフォーミング技術が重要となる。
今回の通信評価では、送信側と受信側の双方で、電波のビームを上下と左右の組み合わせによって制御する2次元ビーム制御を確認した。135GHz帯での無線通信動作に加え、最大8GHzの帯域幅での信号伝送にも成功したとしている。
フィジカルAI向けセンシングへの応用も想定
村田製作所は、今回の成果により、6Gの高速・大容量通信に必要となる主要技術の実現可能性を実証できたとしている。
また、D-band対応アンテナモジュールの用途は通信にとどまらず、フィジカルAI時代に向けたサブテラヘルツ帯のレーダーやセンシング、通信とセンシングを同じ無線システムで実現する「ISAC(Integrated Sensing and Communication)」への応用も期待できるという。
ISACでは、無線通信に用いる信号や設備を活用しながら、周囲の物体の位置や動きなどを検知する。通信とセンシングの機能を一体化することで、ロボットやモビリティ、産業設備などが周囲の状況を把握しながら、大容量のデータを送受信するシステムへの適用が想定される。
村田製作所は、量産実績のあるLTCC製造プロセスを基盤として実用化と量産を見据えた技術開発を進め、2030年以降の市場投入を目指すとしている。
