この半導体ニュースのまとめ
・TIがMCU、MPU、ワイヤレス接続デバイスを含む幅広い製品でZephyr RTOSに対応
・既存のZephyrコードベースやツールチェーンを維持したままTI製品へ移行可能
・定期的なSDK更新やアップストリーム優先の開発により長期保守と規制対応を支援
Texas Instruments(TI:テキサス・インスツルメンツ)は、同社のマイコン(MCU)、マイクロプロセッサ(MPU)、ワイヤレス接続デバイスを含む幅広い組み込み製品ポートフォリオを、オープンソースのリアルタイムOS(RTOS)である「Zephyr RTOS」に対応させたことを発表した。
製品分野をまたいで統一された量産対応の開発環境を提供し、組み込み製品の開発期間短縮に加え、欧州連合(EU)のサイバーレジリエンス法(CRA)に準拠したシステムの開発を支援する。
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Zephyr RTOSに対応するTIの組み込み製品向け開発ボード各種。MCUやMPU、ワイヤレス接続デバイスを含む幅広い製品ポートフォリオで共通の開発環境を利用できる (出所:Texas Instruments)
既存のZephyrコードを維持したままTI製品へ移行
組み込みシステムの開発では、半導体ベンダや使用するデバイスを変更する際、異なるソフトウェア環境に合わせてコードを書き換えなければならない場合がある。製品ごとに開発環境が分断されていると、コードの移植や動作検証などが開発者の負担となる。
これに対し、TIのZephyrベースのプラットフォームは、MCU、MPU、ワイヤレス接続デバイスにまたがる単一かつ一貫した開発環境を提供する。開発者は、既存のZephyrコードベースやツールチェーン、オープンソースのワークフローを維持したまま、TIのデバイスへ移行できるという。
試作段階で使用するデバイスから量産製品に搭載するデバイスまで、同じZephyr RTOS環境を利用して設計を進められるため、ハードウェアの変更に伴うソフトウェア開発の負担軽減が期待できる。
アップストリーム優先でコードの安定性を向上
TIは、Zephyrコミュニティへコードやリファレンスデザインを提供し、アップストリーム優先の開発を進める。
TIのコードは、ソフトウェア開発キット(SDK)としてリリースされる前に、Zephyrコミュニティによる検証を受ける。このため、量産立ち上げの途中で大きな変更が生じるリスクを抑え、安定したコードベースを利用できるとしている。
また、公開GitHubページにおける継続的インテグレーションおよび継続的デリバリー(CI/CD)を通じて、最終版SDKの公開前から新機能や開発リソースへアクセスできる環境も提供する。
TIは、Zephyrを単なるRTOSとしてではなく、組み込み開発の専門知識を共有し、ロードマップの策定や技術の普及を進めるベンダニュートラルなオープンソースコミュニティとして活用する方針を示している。
定期的なSDK更新でセキュリティ脆弱性に対応
ZephyrプロジェクトはLinux Foundationの支援を受けており、TIはセキュリティ脆弱性への対応に向け、ZephyrベースのSDKを定期的に更新する。
検証済みのソフトウェアリリースに加え、移行ガイドや後方互換性に関する注記なども提供することで、TIのシリコンを採用した製品の長期的なメンテナンス負担を軽減するとしている。
TIのシリコンは10年以上の製品ライフサイクルをサポートしており、ハードウェアの長期供給とソフトウェアの継続的な更新を組み合わせることで、産業機器など長期間にわたって利用される組み込み製品の開発と保守を支援する。
EUのサイバーレジリエンス法への対応を支援
今回のZephyr RTOS対応は、EU市場向け製品で求められるCRAへの対応支援も目的の1つとなる。
ネットワークへ接続するデジタル製品では、製品の設計・開発段階におけるセキュリティ対策だけでなく、市場投入後の脆弱性対応やソフトウェア更新を含む継続的な管理が求められる。
TIは、Zephyrコミュニティによるコードレビュー、定期的に更新するSDK、検証済みリリース、移行ガイドなどを組み合わせ、開発者がセキュリティと長期保守を考慮した製品を開発できるようにする。
また、Zephyr RTOS環境を変更することなく、TIの組み込み製品やアナログ製品を組み合わせたシステム全体を設計できる点も利点として挙げている。TIは今後もZephyrコミュニティへのコードやリファレンスデザインの提供を進め、既存コードの再利用とハードウェア選択肢の拡大、長期的なセキュリティリスクの低減を支援していくとしている。